表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第三章:暗中の白、浄化の光
83/283

第十五話:獣思考

「―――ッ!」


 素早く何かが近づいてくる感覚に対して、咄嗟に飛び退り…その進行方向から蹴りを叩きこまれる。やはり甘い。危険を感じ取れるだけで、どんな種類の、何処からの危険かという事がまるでわかっていないのだ。

 蹴りその物と、地面への接触により強い痛みが走るが、声を上げると舌を噛みそうになるので、ぐっと堪える。

 とはいえ、今の所族長は連続して一人を狙うような事は無いらしい。乱れた呼吸を整え、立ち上がる。

 すると、そんな考えとは裏腹に再び何かが近づく感覚を得たので、身体を反らせば、誰かが倒れ込んでいったような音がした。

 接触回数が多いのは、他の参加者だ。族長からの攻撃で投げられたり、立ち上がって歩きまわったりしているうちに、他の参加者とぶつかって、二次災害みたいなものが生まれていく。

 修行その物の効率を考えなければ、危険度を抑えると言う意味ではその場に立ち止まっているのがもっともいい。とはいえ、多少感覚が揺らいでいて、足元がおぼつかないので、少し動いてしまっているのだが。

 こうしている間にも、族長に投げられたり、それぞれでぶつかり合ったりする事によって転倒する人が増える。森の柔らかい土の上だと、そんな振動まで伝わってくるのだ。族長が動いている以上は、端に移動して隠れる、なんていうことにも意味は無い。…気配を感知できるようにならなければいけない。

 そのために必要だったのは、族長曰く『本能』。奇しくも師匠と、目指すものは同じだ。―――というか、俺は昨日、本能というべきものに気がついたんじゃないのか?

 師匠も、『本能』を目覚めさせようとしていたんだろうし、昨日の修行は成功だった筈だから、問題は無い筈で…。いや、そうじゃないな。

 本能にも、種類というものが有るだろう。例えば、俺が昨日目覚めたのはいわゆる生存本能だと思う。槍で死にそうになったから、必死になる事が出来たんだろうし。

 他には何が有る?…母性本能?後は、帰巣本能?いや、あれは鳩だったか?…ダメだ。どうにもうまく考えがまとまらない。

 と、再びこちらへと、今度は素早く何かが近づいてくる感覚が有ったので、右に一歩、身体をずらす。

 すると、その右肩に蹴りか何かが当たり、俺は転倒する。回避する方向は間違っていなかったようだが、何かを感じたと言う訳でも無いので、ただの偶然か。

 となると今は、せいぜい距離くらいしかわからないと言う事になる。よく考えれば、それでもなかなか、少なくとも今までの俺では想像もできない様な事だったと思うんだが、族長が求めている物はそんなものではないのだろう。

 下手に避けたせいで微妙に当たり所が悪くなってしまったのか、いつもよりも痛みが強く奔る右肩を押さえて、それがすぐに消えていくのを確認、再度立ち上がる。

 座っていると動きづらい。立っていないと、避けるという本来の訓練内容すら満足にこなせないのだ。

 もう一度、精神を落ち着かせて、この場の状況を把握できないかどうかを試す。

 …族長含めて十六人もじたばたしていると、誰が誰なのかは全くもって分からないな。いや、一人だけ移動速度が速いし、多分族長だろうけど…。

 …今の俺がこんな風に、ある程度の気配を感じ取れているのは、例の『感知:生命』を修行したからか?魔力を放ってはいない筈だが、皆はもとから感知可能みたいだし、

 皆と暮らしているうちに、少しずつ適応して行った、なんてことが有るんだろうか?

 いや、そんな事を考えている場合じゃないな。集中しないと。

 …また近づいて来ている。はっきりと俺へ来ているのだろう。その圧迫感は、一定の勢いで増している。間違いなく族長のそれだ。

 後三秒で攻撃が来る筈。一、二、立ち止まった。―――跳べ!

 一瞬気配が限界まで近づき、そして離れて行った。俺の体には何も触れていない。だが確かに攻撃はされた筈で…足払いだったのだろう。

 僅かに腰を落として着地した俺の方を、軽くトントンと叩いて、族長が立ち去って行く事が分かった。

 しかし、今の俺は何処から攻撃が来るかが分かったと言う訳ではない。分かったのはタイミングだけ。あとは勘だった。それで本能に目覚めたと思われては意味がない。


「教官、俺はまだまだです!」


 そう伝えたら投げられた。襟が持ち上がった感覚から、自由落下の不安感を長時間得ることになるのでなかなかの体験だ。

 右腕を下敷きにする様な体勢で落ちた俺は、再び立ちあがって族長や他の参加者の動きを感知する事に努める。今の投げは、ちょっと唐突過ぎて対応ができなかった。

 こうしている間にも、倒れた相手を踏んづけたり、足を取られて転んだり、なんて地味に痛い自己は連続している。そのたびに小さな呻き声がするので、こちらの精神にもダメージが入っていく。

 深呼吸。…攻撃を受ける度に、少しずつ感覚が研ぎ澄まされているような気がする。距離だけでなく、方向に関しても少しずつは察知できているように思えるし、気配そのものが、ぼんやりとした塊のような物から、だんだんと人の形として、両腕、両足、首などの部位まで、確認できるような気がしてもいる。

 …証拠は無いが。攻撃され続けたせいで脳に変な症状が出たとかだと笑えない。

 とりあえず、試してみようと思う。

 倒れたばかりの一人の近くにゆっくりと近づく。そこに動くまでの間には誰もおらず、実際に、誰とも接触する事は無かった。

 疲れたのか、少しその体制でゆっくりする気になってしまったのであろう、その人はほとんど動かない。偶に転がり、打ちつけた所を擦っているので、亡くなってしまった訳ではないのは分かる。

 その人に対して、そっと足を伸ばす。

 すると、足先に服特有の柔らかい感触が。ならばこれは、間違いなく人間という事だろう。…大凡、この感覚も正しいようだな。

 しかし違和感はある。昨日の『飛翔』を本能で行った時は、もっと解放感というか…考えるまでも無く、身体が勝手に動いて結果に達する、いわば魔術のようでもある現象が起こっていたように感じるからだ。更に言えば達成感か。自分はやり遂げた、と、何をやり遂げたのかすらわからない時点で感じていたようにも思う。

 しかし今感じているこれには、その両者が存在していない。身体は勝手に動いたりしないし、こうやって悩んでいる時点で、何かをやり遂げたなんて思っている筈はない。

 やはり何かが違うのだ、と思いながら、先程足で触れた人に躓いてしまったらしい人を、一歩後ろに下がることで避ける。…助けようとも思ったが、修行中だし、多分痛覚を感じる事も本能に目覚める事には必要だと思うのだ。昨日師匠も、痛みを感じる前に本能に目覚めたから、という理由で俺を褒めていた。という事は、本能の目覚めに対して痛覚は引き金のような役割を持っているのかもしれない。

 …なら、少し積極的に動くべきか?受け身ではなく、積極的に危険へと向かい、その上で全て避けきるような事が必要なのではないのか?

 昨日だって、簡単に言えば『死にたくない』という単純な思いで目覚めたんだから、先ずはそういう心境に陥らないといけない。

 俺も含めて皆、族長が俺たちの命にかかわるような真似をするわけが無いと考えている。それは、実際にそうかもしれないけれど、緊張感を奪い去ってしまう考えだ。きっと邪魔である。

 呼吸を整えて、族長の進行方向を考えて…よし、行こう。

 目の前に倒れた二人を飛び越えて、族長が投げたり蹴り飛ばしたりする参加者たちの元へと走る。族長も、俺の動きがどう考えても今までのそれでは無いからだろう、対応を変えて、投げつける相手を俺へと変えてきた。尚、今の俺は走ってはいるものの、平均的な小学生程度の速度を出せているかどうか、と言った所である。目隠しと耳栓で感覚をつぶされた中は知るのは、本当に厳しいのだ。これでもずいぶん、必死ではある。

 大きく体を右へと動かし、一人目を避ける。そうした時に、昨日、槍の中へと落ちて行った当初の事を思い出した。今はまだ、関節を無理に動かして無理やり『飛翔』しようとしていた段階だった。ここからどうつなげられるか、それが問題だ。

 昨日イメージしたのは鳥だ。だが、地につけて走りながら対象にするには、いくらなんでも無理がある。

 だが、『本能』を目覚めさせるのであれば、結局それに近い対象が必要となるだろう。

 つまり、人ではないもの。俺が『本能』で動いているだろうと考える物。

 ―――動物、いや、本能を強調するのならば『獣』というべきか。

 獣とは何ぞや?そんな事を考えながら二人目を、そのういた身体の下に身を滑り込ませるようにして避け、僅かに勢いを失った事により狙いが正確になる事を避けて一度族長を中心として右回りに走る。

 その言葉で想起されるのは肉食のそれだろう。草食だって獣かもしれないが、単純なイメージとしてはそうだ。

 だがしかし、いま求めている物は何だ?相手を牙や爪で殺して、その肉を食べて命を繋ぐ事か?違うだろう。むしろその逆、牙や爪から逃れ、逃げ切ることで命を繋ぐ事。

 小動物?なんて発想に蓋をして、投げられた男を受け止めて走りながら体勢を低く、地面へ寝かせる。参加していた女性は二人だが、どちらも長髪だった筈なので今のは男性だ。髪型がわかる程度には、はっきりとした感覚を持てて来たと思う。

 暗闇の中でも自由に身体を動かせるようになってきたと思う。流石に全力疾走と同じとまでは言わないが、高校生と同じくらいの速さは出ているんじゃないか?

 一気に族長との距離を詰める。族長が僅かに腰を落としたのが分かった。更にもう一歩近づく。迎撃態勢は完璧、ということか。不用意に近づくべきではない、なんて普段は思う所だが、今は自分の状況をもっと知りたい。だから当然走っていく。

 族長が手を前に出してきた。拳では無いが頭を狙うそれを、首を傾け、同じ方向へと走る方向をわずかに変えて避ける。更に一歩進み、背後へと回り込むように走る。と、腰を上げた族長は後ろ蹴り。だが、それこそ動く距離には限りがある。跳躍、回避。

 左の裏拳を背を反らすことで避けて右腕も一歩離れて避ける。その体勢からのタックルを横に避けたら更に回転して左後ろ回し蹴りが来たので屈んで動きが止まった所を右のかかと落としが来たから転がって避けて左蹴りを立ち上がりながらに避けたら実は踏み込みで勢いあるパンチでやばい避ける危な何で動きが止まらな左右後ろ跳躍前屈んで転がって飛んで右屈んで走って飛んで―――。


「…コホッ」


 喉の奥から変な音が出た。そう感じた時にはもう地面に寝転がっていた。いつの間にか目隠しが外れている。

 今の音が聞こえたと言う事は…と思って耳を擦ればやはり、耳栓も片方取れていた。今更と思いもう片方も外して、周りを見れば族長は、既にほかの参加者を投げていた。

 ―――これはまさか、昨日と同じ状況か?激しく動いたにしては冷えた体温を感じ、俺はそんな事を思った。

 背中を殴られて落ちたのか、凄く痛い。

 立ちあがってあたりを見渡せば、俺以外に目隠しを外している人物が、族長を除いて二人。俺が族長の出した条件を達成できたのかは分からないが、おそらくあの二人は俺と同じような判断を下されたのだろう。

 カルスを探せば、まだ立ち上がったままで、族長から投げられたり蹴られたりしているのがわかる。

 他の参加者の動きも、終盤の俺の動きのように少しずつ素早くなっているように思う。


「…でも」


 あれで良かったのだろうか?とは思う。考えるより早く体の方が動いていたような感覚はあったけど、それでも、少なくとも昨日のような開放感は皆無。更に言えば、いつの間にか終わったという感じではなく、族長に倒されるまでは何が起こっているのかは分かっていたと思う。

 『本能』というものが何なのかを分かっていない現状、俺に答えを出すことはできないだろうとあっさりあきらめて、カルスの事を観察する。

 …攻撃が見えているんじゃないか、と思える動きをしている。

 記憶の中の俺は、何というかこう…無茶苦茶に動き回って、ぎりぎりで回避して、多分どうしようもなくなって族長に殴られるなりなんなりされたんじゃないだろうか?と思う。

 それすら正確な事を言えないのは何とも情けないが、しかし、俺とカルスのそれが異なっているであろうことは窺える。

 カルスは…静かなのだ。俺の場合、じたばたと見苦しく動き回っていたような記憶が有るし、実際、俺が起き上がった場所の近くは足跡が深く入っているし、俺のズボンも土塗れ。

 しかしカルスは、まるで族長の攻撃を完全に身切っているかのように、静かに、必要最低限の動きで回避を続けている。あんな動きは、今までの修行の中で一度も見た事がない。

 その服は、おそらく最初の頃に転ばされていたからであろう、やはり土に汚れてもいる。だが、『塗れ』とまで表現する様なほどではなく、俺が起き上がってから数分、一度も転ばされてはいない。

 気絶しているのか、動かない参加者は…六人。目隠しをとられたのは俺を含めて三人なので、残りの参加者は六人ということになる。なので、カルスは常に攻撃されていると言う訳ではない。あくまでも受け身、族長の攻撃を一度避けて、そしてそのまま静かにたたずむ。一種の気品すら感じさせてくる姿だ。

 族長は冷静で、一度の攻撃を終えればカルスに対して手出しはしていない。俺に対して攻撃を連続したのは、単純に邪魔だったとか、そんな理由だろう。

 そこでもう一つ気が付く。カルスの本能的読みはもう完成しているように見える。ならばなぜ、俺たちのように修行の終了という形にならないのだろうか?

 …もし、カルスの姿がまさしく完成形だとすれば、俺や少し離れた所に居る二人の物は、何か間違ったものだった?その上で、修行から弾き出されたのならば。それはつまり、一種の『破門』というやつなのだろうか?

 もしそうならかなり悲しい。流石に破門されたと言う事は無いと信じたいが、少なくともカルスのそれが俺のものよりずっと進んだ物だと言う事は伝わってくる。

 修行に水を差す訳にもいかず、とりあえず、傍観するしかないだろうと決めて、しかし手持無沙汰で有るが故に、他二人の所まで向かう。

 その間にもカルスは何度か攻撃を避ける。…足捌きだけで回し蹴りを避けるのって、どうやるんだろうか?


「あの、お二人は…?」

「ん?ああそうか、君も」

「ああ、貴方でしたか」

「…俺と同じ状況、って事ですよね?」

「ああ。何というか…感情が昂って、何時の間にやら族長の近くで挑発するように動き回ってしまってだな。重い一撃で沈んで…君たち二人が同じような目に会う所も見ていたよ」

「貴方の後に、私は倒れましたよ。そこに至るまでの状況も同じです」

「あ、はい…。俺も、言われてみればたかぶったままに動き出したような気がします。えっと…グベルドさん、でしたよね?」


 余り会話などもしていないが故に、少し思い出しづらかった男性の名前を呼ぶ。おそらく最初に目隠しを外されたのだろう彼に、もう少し詳しい話を聞きたかったからだ。


「ああ、タクミ君。…しかし、族長の動きは凄い物だよ。もう年齢を考えれば、衰えが見える筈なのだが」

「以前はもっと凄かった、という事ではありませんか?」

「そういうものかもしれんなぁ、マォク。タクミ君、…君はこの状況、どう思う?」

「え?そ、そうですね…。族長の目指すものと、俺やグベルドさんとマォクさんが見た物って、たぶん違うんじゃないのかな、と」

「…なら、私たちと意見が同じという事だな」

「カルス君の動きとか、多分族長が求めている物と同じなんでしょうね」


 マォクさんの考えには俺も同意である。しかし、三人全員同じように考えていると言うのなら、やはり推測は間違いではなかったという事だろうか?

 二人の側へと腰をおろし、カルスの方を見る。

 先程から更に二人、地面で倒れている。流石に限界も近いという事なんだろう。これで残り四人。しかも、族長の意図か、それとも偶然か、皆かなり集中している。族長は最早、数歩の移動で一度攻撃できるような状況。

 見れば、カルス以外にもう一人、同じようにゆったりと攻撃をかわし始めた人が居る。


「スェイフも、良く動けているな」

「そうですね…。今のところ最もよく動けているのはカルス君でしょうが、それに追いついてきたようにも思います」


 スェイフさん―――名前を忘れていたとは言えない―――も『本能』に目覚めたとして、なら、残りの二人は?

 そう思ってみている内カルスの右方向二、三メートル離れた場所に立っていた女性が、族長の方へと一気に走りだす。


「あ」

「ううむ…!」

「あれは…」


 俺が口を開いたのとほぼ同時に、二人からも僅かなうめき声。…四人目、という言葉が脳裏に過ぎる。

 その女性が族長の元へと走り寄ると、族長は回し蹴りを放ち、それを屈んで避けた女性は、今度は右側へ。そこに、一種の正拳突きのような物を族長が放ち、それを避けた女性は背後へと回ろうとして、

 顎をこするように殴られ、昏倒する。


「…女性だからか、少し対応が優しいな」

「ああ、まあ、娘さんが居るわけですからね」

「父親としての一面、こんな所で出るんですか…?」


 族長が女性から目隠しと耳栓をはずしてから五秒、どちらにも変わらなかった最後の一人が倒れ、修行は終了を迎えた。


「カルス!」


 族長によって目隠し斗耳栓を外されたカルスの方へ、名前を呼びながら駆けよる。


「さっきの凄かった!こう…スッって避けてて」

「スッて何だよ…?僕がいった短刀の説明と同じじゃないか」

「あ、…確かにそうだけど、族長の足とかを、ちょっと体反らすだけで避けたり、少し歩くだけでまあいから外れたり!」

「…僕自身にはあんまり自覚ないよ?途中から全部、何となくで動いてて、それでいいともおもってた、みたいな。ところでタクミ、何でそんなにドロドロ?」

「何回も転んだからね…。でもそうか、だったら多分、カルスは成功だよな」


 昨日の俺の状況と同じだろう、それは。となれば、やはりカルスと、もう一人…スェイフさんも、族長の求めるものに到達していると考えるのが自然だ。


「集まれ!」


 と、背後から族長の力強い声が響き渡る。その声に従い、周囲で倒れていた人を担いでカルスと共に族長の元へと急ぐ。


「…よし。カルス、シェイフ合格だ、帰ってよし」

「「はい、教官!」」


 カルスと、先程のシェイフという男が村の方へと身体を向けて、走り始めた。細い道が出来ているので、この状況でも判断できたようである。


「それ以外の者も、本日は帰ってよし!」


 そう言われ、ならば帰ろう、とカルスを追おうとした時、少し違和感が有った。

 ―――俺たち四人と、それ以外。扱いは同じで良いのか?俺たちの方は、多分矯正か何かが必要ではないか?と。

 理由は単純。確かに俺の中で、あの時何かが変わったのだと、そんな感覚が有ったからだ。

 その予測は的中する。


「但し!グベルド、タクミ、マォク、フィィツの四名は残れ!…追加だ!」


 …連日昼食抜きだろうな、と思った。

 まだ完全に本能的行動がとれるようになったわけではないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ