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忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第二章:紅を知る、生活と別れ
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第二章エピローグ:それぞれの場所、それぞれの思い

 日が沈み、夜が来て。

 しかし、彼は帰って来なかった。


 朝が来て、自分でも探しに行って、

 しかし、彼は何処にもいなかった。


 少女は、港の岸壁に腰かけて、昨日の騒動の後始末に奔走する衛兵隊の姿を眺めていた。

 いや、そう言っては語弊があるのかもしれない。だって彼女は、衛兵たちではなく、その騒動の中で海へと消えていった、とある一人の少年の事を探していたのだから。

 ―――発表された死者の数は、ロルナンに所属している人物には限るが、未だ零人。

 しかし、行方不明者数は十人と、町中で起こった騒動としては、決して少なくない人数が被害にあったとも言える。

 その中に、彼女が探す少年も、また。


「………あ…」


少女は、ふと、思いだす。

 一昨日の夜、自分と兄の住む家に、その少年を泊め始めた、その、最初で最後の日の夜、壁越しに語り合った内容を。

 そこまで深く考えながら会話を交わした訳では無かった。だが、あのときは確か、その翌日に置いて、何かが有った時に、彼はどういう行動をとるのか、という事を知ろうとしていたのでは無かっただろうか。

 その時だけでは無い。その日何をするのか、明日はどうするか、なんて会話を、二人で交わしていたのだ。

 それを、思いだした。思い出して、そして、思った。

 結局、明日の事なんて何も分からないものなのだろう、と。

 一昨日の夜は、そう、彼が、今回の騒動に置いて、一種、裏切り者ともされる男が、実際に裏切っていたのならばどうするのか、という事を聞いたのだ。

 そうすると、彼は、『頑張る』と、そう言ったのだ。

 その時彼女は、それを、彼が時折見せる、ちょっと実感のこもり切っていない言葉と同じようなものだと思っていたし、しかし、一度口に出した事はやり遂げようとする彼の事だから、確かに頑張るのだろう、と、その程度の事しか考えてはいなかった。

 だが、それは決して。


「死ぬような無理、するって事じゃねえだろ…!」


そう口に出しても、そこにいない彼に届く筈もない。

力強く地面に叩き付けられた右拳からは、うっすらと血が滲んでいた。

昨夜の彼女は、大きな後悔に心を支配され、当然のように一睡も出来ていなかった。

自分の力が足りなかったのがいけなかった、なんて思いに呑まれていたとも言える。だが、今はそうではない。

 彼女は、物事を冷静に考える事のできる性質でもあった。一度は自分でも海に潜り、彼の事を探しもしたものだが、今それをしようとも思わなかった。

 未だに海の中にいるのであれば、窒息死しているし、そうでないなら打ち上げられているだろう。しかし、それが何処かは分からない。

 潮の流れは、ここから東…聖教国側に向かっているのだと聞いた。但し、その流れは陸から大きく遠ざかるらしい。

 ―――何処に有るかも知れない島を渡り歩く、というのは、流石に現実的ではなかった。

 彼女は決して、彼が死んでしまったと諦めている訳ではない。彼女にとって人の命とは、容易く失われてしまうものではあったが、しかし、それに反する程強く有る物でもあった、

 彼女から見て、彼の命は強そうだった。

 経験のない内から【小人鬼】などの忌種と戦い、そして大きなけがを追う事もなかったと聞いたからだ。そういう手合いは、総じて危険の中でも生き延びる。彼女のまだ短い人生の中で、しかし強く刻まれた、一種の法則のような物でもあった。

 そして、もうずいぶん昔のように感じる、少年に言った一つの言葉を思い出した。


「…はは」


 そう。


「ああ、そうだったな。はは、はははははは!」


 『笑え』、と。

 だから彼女は、悲しくても、不安でも、笑うのだ。

 それが出来る者は幸せになれるのだと、知っているから。


 一通り笑って、そして彼女は立ち上がる。


「…シュリ―フィアさんを送り出しに行こう。兄貴も待ってるだろうし」


 ロルナンから王国中心部へと続いて行く街道へ通じる門へ、足を進める。

 その胸に、『もっと強くなろう』という、小さな誓いを秘めて。


◇◇◇


ロルナン冒険者ギルド内、自らに割り当てられた―――その言い方は正確ではない―――部屋で、ギルド長であるガーベルト・エリアスは、少し憂鬱な気分でいた。


「…クヴィロは、何処にもいなかった、か…」


 昨日の騒動に置いて、この町と邪教の間で最も大きく通じ合っていた男、それがクヴィロ・べグドだった。

 …彼にとっては、それだけではない。

 まだクヴィロが幼かった頃から、それこそ、彼の娘が生まれたばかり、クヴィロの年齢も十は超えていなかったような時から彼の事を知っており、その年が十五を数えた時、ギルドに、彼自ら勧誘したのだ。

 自ら副ギルド長の筆頭書記官という役職を与えた。勿論、そこには一切の贔屓なんてものはなかった。

 その若さにして算術に通じ、純粋に頭の回転も速い。魔術も、その歳では十分すぎるほどの腕前、なにより、人を相手にして立ちまわる交渉力など目を見張るほどの物が有ったのだ。

 だが、彼の行動に違和感を感じるようになった。

 それが何時なのか、という事には、実は大凡感づいている。


「二年前…帝国国境付近までの遠征に参加した時、なのだろうな。あの時から、こちらの知らない彼の姿が増えたように感じたものだ」

「二年前って…私がギルドの受付嬢始めたばかりの頃よね?そんな話、聞いたことないんだけど?」


 その部屋にいたもう一人、ミディリア・エリアスが、浮かんだ疑問をそのままに口にする。


「大々的に行われた物ではないからな。…帝国と王国は敵対しているが、冒険者ギルドはそうではない。しかし、ひとたび戦争が始まれば、冒険者もそこに参加する。………無駄に戦火を広げる必要はない。冒険者同士の間だけでも国家間の距離を縮めようという本部の方針の、その試験的なものだった」

「………その計画、凍結されてるんじゃないの?私は聞いたことないし、最近そんなに大きな移動が有った記憶もないけれど」

「忌種の群れが、その現場を襲ってな。双方ともに、死者は一名、負傷者が数名、と言った所だったが…」


 ガーベルトは、頭を痛そうに押さえる。


「敵国同士だったから、としか言えないが、互いが互いの敵国の陰謀だと思ったようでな。結局交流は失敗に終わった。その後のごたごたも有り、クヴィロ達はバラバラに帰還した」

「その時から、って事…?結局ずっと自分一人で抱えて来たんじゃない。父さんの悪い癖よ?他の人に伝えないくせして、自分の動きも遅いんだから」

「…そうだな」


 ガーベルトは思う。昨日の騒動だって、もっと早くに手を打っていればどうにでもなったのだろうと。

 そもそも、瘴結晶を奪われることすらなかったのだ。

 ―――情に流されたのがいけなかった。彼の事を完全に信頼する事は出来なくなっていると分かっていて、それで尚行動を変えなかったのだから。

(どうやら、私は戦場から身を引いたせいで、随分と下らない人間になってしまったらしい。思えば、自分で大胆に状況を動かそうとする事を止めていた気がする。………他人には覚悟を問うておいて、私自身がこれではな)

 彼は、自身の姿を、確実に昔のそれと比べて、『堕ちたもの』だと感じていた。

 自身の昔の姿…『救国の英雄』と呼ばれていた頃の姿を見たもの、伝聞で聞いているもの、そんな人物たちからは強く信奉され続けているが、そうでないものには、自分という人間はきっと、高い立場で選ぶる、汚い人間に見えているんじゃないのだろうかと考えていた。

(それで若い命を失ってしまった訳か…。如何ともしがたい男だな、私は。

 …このままでいい筈もないだろう。反省も改善もないのなら、その時の私はただの老害と化してしまう)


 ガーベルト・エリアスは、これからの自分の精神を、徐々に『救国の英雄』としての、もっとも人を救い、最も功績を打ち立てた男としてのそれに戻して行くことを誓った。


◇◇◇


「ヅェル!何処行ってたんすか!」

「仕事ですよ…。後始末もほとんど終わったので、もうここにいられますけど」


 ロルナンに、他の町と比較すると数の多い施設が有る。


「結局、ワタシは怪我で休んだまんまだッたッすからね。その分、ヅェルには苦労かけたッす」

「いえ、結局の所、頭数が多いかどうかは関係が無かったような物でしたよ」


 それは、診療所。普段から何かと事件・騒動の多いこの町では、相当に診療所の数が多くなっていた。更には、臨時で仮設の診療所なども一部には出来ている程でもある。

 ここは、その内の一つ。


「………ねえ、ヅェル?何で、こっち見てくれないんすか?それに、なんか話し方も硬いし」

「…いや、そんな事はない」


 ガタイの良い男性が見舞いに来て以来、途切れることなく甘い会話が繰り広げられ始めた病室の、その隣。

 そこにいた二人の男女―――女性の方が入院中、見舞いに来たのが男性―――は、会話を交わす。

 だが、ヅェルと呼ばれた男性の方は、女性と目を合わせていなかった。女性の方は、それが不審に思えた様である。


「………一昨日の夜の言葉は、冗談だったんすか?そりゃあ、確かにそれで元気づけられたわけだし、文句は言わないっすけど」


 その言葉を聞いた男性は。途端に女性の方へと顔を向け、そして口を開く。


「違う!………本気だ」


 その頬は、普段の彼を知る者からすれば想像もつかない様なものだっただろう。基本的に、彼は寡黙なのだ。…それを考えれば、今、声を張り上げた事からして普段の彼の調子を乱されているとも言えるが。


「………だったら、ちゃんと昔の約束を果たしに来てくれた、って事でいいんすよね?」

「…あ、ああ」

「じゃあ、もう一回、ちゃんと言ってほしいっす」

「………………………結婚、してくれ。リバ」

「はい。良いっすよ。ヅェル」

「………あり、がとう」


 事ここに至って、未だにヅェルの顔は赤く…顔面が全て赤い以上、その症状は進展していると言える。

 そして、女性…リバは、そんなヅェルの顔を見てにやにやと笑っている。

 今のロルナンの中で、最も幸せという物を感じているだろう二人が、ここにいた。


 そして、そんな二人を建物の入り口で、壁に隠れて眺める二人の男。

 ロルナン衛兵隊総隊長であるクリフトと、二番隊隊長のレッゾだ。


「あいつの初々しい姿とか、…新鮮だわぁ…!」

「そんな事を話しに来たんじゃないだろう?いや、勿論、見ていて楽しい物だとは思うけどね。………今回の一連の騒動、まだ分かってない事が多い」

「だな。何というか、邪教の奴らの認識と、こっちの認識がずれてるような感じだった。クリフトやヅェルから聞いた話で俺が気になったのは、瘴結晶についてだな」

「…瘴結晶を彼等が奪ったことは事実みたいだけど、彼らにとってそれを地中に埋めたりする事に利点や、信仰上の理由はないようだね。勿論、ヅェルが読み取った情報だって、邪教信者の中でも下っ端でしかないだろう彼等がガセを掴まされているという可能性を排除なんてできないんだけど」

「………瘴気をなくす事が目的、か…」

「邪教信者から得た、『確実な』情報としては異質もいい所だよ。ただ、その前提に立って考えると」

「そもそも、奴らが瘴気を。引いては忌種を使って悪事を働いているという事に、証拠はないんだよな…」

「レッゾは、私が帝国出身だったのは知っていたよな?」


 クリフトのその言葉に、レッゾは少し、気を引き締める。


「ああ、知ってますよ。と言っても、本当に小さい頃しか住んでなかった、という話でしたけど」

「それで有っています。ただ、帝国出身の物が、この町の衛兵団の長をやっているという状況、彼らには別の物が見えているようでしてね」

「彼ら…というのはまさか、帝国の事ですかい?」

「はい。数カ月ほど前に、私の前に帝国の密偵と思しき人間が現れ、そしてこちらに言ったのです」


 そこでクリフトは息を吸い、声のトーンを落として行った。


「瘴気を使った実験を行うから、協力してくれ、と」

「そりゃぁ!…本当の話で?」

「もう、ウェリーザ=ロッド=ガードン伯爵まで話は伝わっていますよ。…生け捕りに出来ればよかったものを、自害されてしまいましたが」


「全く、私もあちらも甘いものです」と言って、クリフトは診療所から離れる。その後ろには、レッゾが続いた。


「そろそろ、私の親の世代のような戦乱が来るのかもしれませんね」

「縁起でもねえ事言わねえでくだせえよ!絶忌戦争なんてもう起こんねえですって」

「のような、と言ったでしょう?それに、警戒する事が大事なんですよ」


 彼らの生活は、大きく変わらない。ただ、日々を自らの職務、そして考えに従い、より良く生きようとするだけだ。


◇◇◇


 ロルナン北部。街道へと続く門の前に、二つの人影。

 片方は、門付近の壁にもたれかかり、何かを思い悩んでいた。

 そしてもう片方は、その姿に小走りで近寄っていく。


「…人が、変わるのか?いやしかし…調べなければいけないが…」

「遅れてすみません!シュリ―フィアさん!」


 思い悩む女性に、声をかける男性。

 その声で思案の渦から抜け出た女性は、声をかけてきた男性へと返事を返す。


「ああ、すまなかったな、エリクス殿。このような、慌ただしい別れになってしまって」

「いえ、仕方ないですよ。騒動が、一時的にでも終結した、って情報は伝わっているんですし、これ以上ここに残ると、それこそ危ないんでしょう?」

「まあ、某に対して、何らかの罰が下る可能性は大きいな。………しかし、こんな事を言うのもなんだが、寂しい物だ」

「………そうっすね。タクミは居ねえ。レイリも、まだ来てねえですし」

「…タクミ殿は、今頃どうしているだろうか」


 その言葉を聞いたエリクスは、一瞬その言葉の真意を問いかけるようにシュリ―フィアの表情を見、そして、笑った。


「やっぱりシュリ―フィアさんも、あいつが死んだって思ってないんですね」

「ん?ああ。大けがを追っているだろうし、死にかけてもいるかもしれないが…命を落とす所を、いまいち考え辛い」

「本人は、死の危険とかをよく感じてるみたいでしたけどね」

「そう言う所が、生き抜く術と化しているのではないか?」

「ああ、そう言うもんかもしれません。………次は、何時会えますかね」

「…分からないな。困ったことに、守人は遠くまで自由にはいけない。………だが、また会おうではないか」

「…シュリ―フィアさんって、基本的には王都に居るんですよね?」


 エリクスから、自らの発言に対する同意では無く、質問が来た事に対してシュリ―フィアは僅かに驚いた。

 驚いて、しかししっかりと質問には答える。


「ああ、守人は、大体王都か、もしくは辺境にいる。そして、平時で有れば王都にいる。…拠点だからな」

「だったら、俺も近い内に王都に行く事にしますよ」

「何?」


 今度こそシュリ―フィアは大きく驚いた。その発言は、完全に予想外だったからである。


「ま、待て待てエリクス殿。なんだその話は、唐突も過ぎるぞ?」

「唐突なことは否定しませんが、すぐにここから移り住む、ってわけでもないです。正確には、王都そのものに住むって事もないと思いますし」

「家だって、自分たちの物を持っているのだろう?それを放置して行くのはどうなんだ」

「家程度を買う金なら、すぐに溜まるでしょう」


 その言葉を聞いて、ああ、そう言えばエリクス殿は賞金も貰っているんだったな、と思ったシュリ―フィアだったが、もう一つ、かなり重大な事実に気がつく。


「そもそもレイリ殿はどうするのだ。彼女を置いて出ていくというのか?仮について行くにしろ、彼女だってまだこの話は知らないのだろう?」

「ええ。でも…」


 そこで一度、エリクスは言葉を区切る。その間を、言葉を区切ったのだと分かる程度には、二人の関係は強くなっていた。


「レイリだって、もう大人になるんです。自分の『これから』くらいは、すぐに決めてくれるようになりますよ」

「………信頼しているのは、いい事だとは思うがな。それでも、絶対にという訳ではあるまい?」

「なら、本人に聞くとしましょう。…ほら、ちょうど来ました」


 そう言われて、通りの方を見詰めたシュリ―フィアの眼に、確かにレイリの姿が。

 この兄妹、心が通じ合い過ぎていないだろうか?と彼女が思うのも、無理のないことだろう。


「ごめんシュリ―フィアさん!遅れた!」

「い、いえ。仕方がない事です。…」


 シュリ―フィアの視線にさらされたエリクスは、現れた妹に対し、一つの問いかけをする。


「なあレイリ、強くなりたいか?」




◇◇◇




 …ザザー、…ザザー、

 …ザザー、…ザザー、

 ………………波の音、だろうか?

 ………………………何で、そんな音が聞こえるんだ?


「うおッ!?」


 上体を背筋の要領で起こし、目を見開いた。

 その視界の隅々まで、人工物は一つも見当たらない。暗い事から考えて、間違いなく夜なのだろうが…それでも、砂浜と、森くらいの物だ。

 横向きに転がり、逆側を見れば…水平線まで何もない海が広がるばかり。


「ど、どういう状況だよこれ」




◇◇◇




「兄貴、強くなるなんて言っても、そんな簡単な話でも無いだろ。何する気なんだ?」

「ああ。………俺もまだ出来てない、修行途中の技術が有ってな。それを、お前にも伝えておこうと思うんだよ」

「それを学べば、強くなれるってか?そんな安易な事」

「それは、俺の家に代々伝わってきた技術らしい」

「………アタシは、両親の顔も覚えてねえ。それで納得はできねえぞ?」

「俺がここまで強くなった理由の半分…いや、四分の一くらいはそれだ」

「………ああ、もう。分かった分かった。じゃあ、とりあえずどんなもんなのか教えてくれ」

「ああ、これだよ」


 エリクスが、家の戸棚の奥から引っ張り出してきたその本は、分厚いものではなく、しかしずっと古いものだった。

 しかし、


「この本、何て読むんだ?題字が、アタシ達の使う字じゃあない様な気がすんだけど」

「ああ、ご先祖様の住んでた国の文字らしい。ライゼンって書いてあるらしいぜ。ああ、中身は大陸共通語だから心配すんなよ」

「ふうん、家の家名…まあ、読ませてくれよ」


 その本の題字は、『雷然』




◇◇◇




 森に、かなり警戒しながらも足を踏み入れる。

 あのまま海辺に居てもどうにもならない。安全を確保する事が大前提だが、少しはこの場所がどこなのかを知らなければいけない。


「とはいえ、生き物の気配はしてるけど、大きな動物を見かけないな…やっぱり海のすぐ近くだし、森が浅いからか」


 森の奥の方まで目を凝らす。…月光でも、ずいぶん遠くまで見えた。


「これなら、何か出てきてもすぐに対応できそうだ」


 そして、そのまま視線を横に動かしたとき、それを見てしまった。


「…ん?」


 白く、ぼぅっと光る、人型。

 足取りは、ゆらゆらとして。定まった方向へ歩いているようには見えない。

 …それは、まるで、


「幽、霊?」


 ………どうやら死んでしまったらしい。今度こそ、それから逃れることはできなかったようだ。

 一度は死から逃れられたのだから、諦められなくても、受け入れるしかないのだろう。

 ………気のせいだろうか?更に、辺りの白い人型が増えた気がする。

 俺の事を、十メートルからニ、三メートルほどの距離で囲んでいる。


「………あなたは、だれですか?」


 その内の一人―――でいいのか?―――がそう聞いてきたので、答えを返す。


「………俺の名前は、西鐙卓克です」


 これにて第二章完結です。第三章は、卓克視点をメインとして、閑話としてのロルナン側の状況を挟んで行く形になると思います。

 次回の更新は、設定の方に情報を追加する、という形にしようと思っています。

 また、筆者の勝手な行動で申し訳ありませんが、話数が増えすぎたように思えるので、昔の話、特に文字数が少なめのものなどを、二話分をまとめて一話にしようかと考えております。

 その作業はもう少し先になると思いますが、こことあらすじの欄に記載しておこうと思います。

 三章は、おそらく水曜日、遅れれば木曜日の更新です。それ以降は、二日に一回の更新を続けていきたいと思っています。

 ※何故か完結済み扱いになっていたので修正しました。…前にも一回やったミスな気がします。


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