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忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第二章:紅を知る、生活と別れ
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第三話:異常性と報酬

「あ―…ッ!有意義な時間を過ごしたぜぇ…!なあタクミ?」

「はい。基本的に守人と個人的に知り合いになれることなんてほとんどないですよね?まさかこんなに話をすることになるとは思いませんでしたよ。良かったです」


 あの後、すっかり調子を取り戻した守人さんは、自己紹介を終えた後にアケイブスさんのもとへと走って行き、一度大きく頭を下げて、自分から忌種の死骸集めの手伝いを始めた。

 他の冒険者が何か言ってくるかも…と思ったのだが、それは無かった。先程の魔術に委縮しているのだろうかとボルゾフさんに問いかけたが、返ってきた答えが『なんだかんだで気のいい奴らだからな。実力が自分よりずっと上の奴がちゃんと頭下げて謝ってる姿見たんだ、何なら年の差からちょっと下に見て、『認めてやった』なんて思ってるやつもいるかもしれねえな。ハッハ』…だった事を考えるに、どうやら俺は冒険者の人たちを見くびっていたらしい。

 うーん…町のために命張れる人たちばかりな以上、良い人の割合がかなり高いのは分かるのだが…、まだどこか、戦うことを仕事にしているという事に、野蛮と言う形容を重ねているような気もする。それでいて自分の事は棚に上げているのだから実は救いようがないのかもしれないな、俺。

 それはさておき、


「これで…大方片付いたかな、と」


 片腕ずつで抱えていた【小人鬼(ゴブリン)】を山に投げ、辺りを見回しながら呟く。森近くの、衛兵隊中心で行われている山についてはまだ作業中のようだが、こちらは再び着火できそうである。

 自然とみんなの視線は守人さん…シュリ―フィア・ローゼンガルドさんの方へと向けられる。

 彼女もまた、緊張の面持ちだったが、…唐突に、口を開く。


「…先程は、大変見苦しい失敗をしてしまい、皆に苦労を掛けてしまった事を、ここに謝らせてくれ。

 だが!次こそは、完璧に成功させて見せよう!それを今、ここにいる皆に誓おうではないかっ!」

『『おお…ッ!』』


 冒険者たちは皆―――俺も含めて―――、口の端から感嘆の声を漏らした。もちろん最も聞き取りやすかったのはボルゾフさんだ。隣にいたからだという理由だけでは無い事くらいもう分かる。

 シュリ―フィアさんは緊張を殺すためか、一度大きく深呼吸をして、目を瞑り、口元に杖の先端、そこに有る大きな水晶を当てて、魔術の起句を唱え始めた。

 光が中で乱反射でもしているのだろうか、こちらが少し身じろぎするだけで鮮やかに色を変える水晶の光はかなり幻想的なものだった。

 そして、その光を見つめ、数秒か、数十秒か、あるいは数分が経過した後の事、


『シュボッ』


 という小さな音が、次々と忌種の死骸の山の中から聞こえて来た。視線を山に移し、数秒を数える間もなく煙が目に映る。

 それから後は簡単なこと。内側から次々と火が燃え移り、今では立派にキャンプファイアーだ。

 ふとシュリ―フィアさんの方へと視線を向けると、『フッ』とでも擬音のつきそうな、微笑み…?を向けて来たので、こちらも笑みと、小さなガッツポーズで返答する。

 そして、俺の腕は背後に思いっきり引かれた。


「うおわっ!な、何…って、レイリ?」


 身体を反転させた先にいたのはレイリだった。何やらお怒り気味の様子でもある。


「タクミ!お前は…何時からあの守人と仲良くなったんだよ!ずるいぞ!」

「ず、ずるいぞって言われてもなぁ…一応、頑張りの結果ではあるんだけど?」


 一応、と、微妙に情けない言い方になんてしまったが、手のひらの上で踊っていた所もあったように感じられるし、こんなものだろう。

 レイリは先程の事を知らないだろうし、少し説明をしておく。


「守人さんが魔術に失敗したことで落ち込んでいたみたいだったから、ボルゾフさんと二人で慰めに行ってたんだよ。そしたら、結果的に仲良くなった」

「慰めに、って…くっそ羨ましい…」

「そのあと自己紹介とかしてた」

「いっそ妬ましいな!ボルゾフさんならともかく、冒険者なりたてのタクミに先を越されるなんて…ッ!」

「ご、ごめん…でも、まだ話できる機会もあるんじゃないかな?」

「そりゃあまあ、今回の事件の調査が完了するまでは基本的にいるとは思うけど…。

 いや、そうか!明日の調査隊に立候補すれば話をすることも出来る筈。こうなったら…よし、タクミ!お前も明日の調査隊に立候補しろ!」

「調査隊?それって、エリクスさんが言ってたのと同じ奴?一体何をすればいいのか分からないんだけど…」

「ああ、たぶんそれはガーベルトさんが報酬支払いの後に伝えると思うから、立候補する事だけ覚えていてくれりゃあいいよ」


 レイリはそこで口を止め、何かを思い出したように、燃え盛る忌種の死骸の方へと視線を向ける。そして、口を呆けたように開き、固まった。

 何ごとかと思い、俺も視線を向けると、


「…っぉ、おお…!」


 煌々と燃える炎の中、忌種の死骸から出ているのだろうか、緑や赤、青に黄色とじつに色鮮やかな光が溢れだしていたのだ。

 色だけではなく、その形状も球、帯、線、と千差万別だった。

この炎の中から出て来た、と言うことは…つまり、これこそが瘴気が燃えて、変化した状態と言うことなんだろう。忌種をあれだけ暴走させてしまう物が、こうまで美しく姿を変えてしまうとは…不思議なものである。

 しかし、レイリには…いや、それ以外の高ランク冒険者の面々の表情にも、美しい物を見た、と言う一種感慨に近い感情は宿っていなかった。あるのは、…むしろ、疑念に近い何か。

 俺が抱いた疑問を質問として口に出すよりも早く、ボルゾフさんがその答えを出した。


「瘴気の色じゃねえぞ…赤や青辺りはともかく、紫、桃、灰…あんな色になるとは思えん」


 その言に続くようにレイリもまた、口を開く。


「最初は綺麗だとしか思わなかったけど、あんなふうに光が帯状になるだなんて、兄貴からは聞いてないんだぜ…」

「えーっと…それって、何かまずいことなんでしょうか?」

「なにが起きるか、起きたのか…それが分からねえのが一番の問題点だな」


 周囲の喧騒は止まらない。森側の忌種の山も燃え始め、すぐに色づき始める。紫色が見えるので、あちらにも同じ現象が起こるのだろう。

 異常現象だ、と言う感覚が身にしみてくると共に、俺は、ここに留まる事に良い感情を抱けなくなった。その感情はこの場にいる冒険者の多くに共通するものだったらしく、誰からともなく炎から離れるように歩き出す。

 先程まであれだけ美しく、幻想的に瞳に映っていた光の乱舞も、もはや不気味としか思えない。


◇◇◇


 炎が燃え上がってから、数時間後。一部の見張り係を残して、俺達冒険者は町、ギルド内へと帰って来ていた。これからギルドへと向かい、待ちに待った報酬支払会になる…と言う、本来ならテンションもうなぎ上りになっているであろう状況にも、皆、あまり顔が冴えない。

 あの燃える瘴気の異常性が頭から離れていないのだろう。俺は話からして初めて聞いたし、余り深く考え込んでもいないのだが…俺以外の人にとっては、相当に堪えているらしい。

 そんな重苦しい空気が支配する広間の奥の扉が開き、ギルド長が出てくる。

 ギルド長も、もちろん炎の異常については聞き及んでいるのだろう。この場の空気に疑問を感じたりはしていないようだ。


「諸君!それぞれ思うこともあるのだろうが…今は一度忘れろ。そんな顔では、報酬を貰った所で喜べはしないぞ?」


 とのギルド長の言葉に、一拍置いてから幾人かの冒険者が小声で笑い出し、それは少しずつ伝播していく。恐らくは、無理に笑っていたのだろうが…それも含めてすさまじいカリスマだった。

 そして、報酬の授与が始まる。一体どうやってそんな報酬の支払いを決めているのかと考えていたが、どうやらそれぞれのランクと配置された部隊、そして直接確認できた討伐対象の数から決まって行くらしい。

 瘴気汚染されたことによる危険度の上昇も報酬の増額に貢献していたらしく、最低でも銀貨二十枚台後半、ほとんどが四十枚以上と言う大盤振る舞いだった。

 そして、


「レイリ・ライゼン!前へ!」

「は、はいっ!」


 遂にレイリの番。ギルド長のもとへと緊張の面持ちで歩いて行く。


「レイリ・ライゼンには、本隊での戦果が大だとの報告が有った。よって、銀貨七十八枚!」


 広間中がざわつく。俺も感嘆の声を『おお…』と漏らしていた。


「あ、有難く受け取らせていただきます!有り難うございました!」


 ギルド長の前では言葉遣いが礼儀正しくなるんだよな、レイリは。

 銀貨の入った袋を受け取り、こちらへと戻ってくるレイリ。少し離れた所からエリクスさんが『やったじゃねえか!』と声を張り上げてくるのを聞いても、『お、おう』と返すにとどまった。いつもなら軽く言い返したりしている所だろうに…そんなに嬉しかったのだろうか?


「良かったね、レイリ。七十八枚って、今まででは一番多かったよね?」

「お、おう。…でも、正直ここまでの功績あったかな…。」

「タクミ・サイトウ!前へ!」

「あ、あれ!?もう俺か」

「ほら、とりあえず早く行って来いよっ!」


 押し出される形でギルド長のもとへと進んでゆく。


「来たか…。今回、タクミ・サイトウには【人喰鬼(オーガ)】の討伐実績が報告された!」


 ざわざわと広間の冒険者たちが騒ぎだす。俺自身も相当頑張った結果ではあったのだが、こういう形で注目されると少し居心地が悪い。


「今だ新人でありながらこれだけの功績を残した事を考慮し、報酬額は少し増額して…銀貨八十六枚!」

「えっ………!」


 広間の喧騒はさらに混迷を増してゆく。当然だ。こんな若造が貰うような額ではないだろうとは、俺も思うからだ。

 だが、貰える時には貰っておくべきだ。袋を両手で受け取り、元の場所へと戻る。


「おお、やっぱタクミの方が多かったか。【人喰鬼】を討伐したんだから、当然ッちゃあ当然だったしな」

「うーん…そう言う物なのかな?」

「そう言う物なんだよ。と言うかまあ、中位忌種を中心に狩ってただろう兄貴やボルゾフさんがどんだけもらうのか、って話でもあるけどな…」


 なるほど…中位忌種はそれだけの脅威として扱われているということだろう。色々な形で実感して行っている。被害に、報酬。そして、今のレイリの口ぶり…年上に対しても全く怯まない彼女が、しかしボルゾフさんにちゃんとさんづけしていること、などだ。やはり強い人間を良く尊敬しているのだろう。


 更に二時間ほどの時間をかけて、ようやく報酬の支払いが終わる。これだけの人数の冒険者の報酬の計算と支払いを一日と立たない間に行う…副ギルド長が疲労困憊だったのは、これも理由だったのだろう。

 エリクスさんは銀貨百枚を超え、金貨を貰っていた。その内訳は、金貨三枚と銀貨五十七枚。俺程度の報酬の量ではまだまだ少ないらしい。ボルゾフさんなんて金貨七枚だ。いやしかし、こう聞くと元の予測よりもかなり多くの中位忌種がいたらしい。どう考えても高ランク冒険者が大勢いなければ殺されていたのはこちらだったということで間違いないらしい。

 そして、


「今回の事件には依然不可解な事が多い。よって、明日、森へと再び調査隊を派遣しようと思う。万が一に備えて守人殿も参加される。立候補する者は挙手を!」


 調査隊の募集が始まる。


「はいっ!」


 と声を上げ、大きく右手を上げる。周りでもかなりの人数が手を上げていた。当然、レイリも腕を上げている。しかも、ピクリとも動かない。皆少し揺れていたりする中一人だけ微動だにしていないのだ。まあ、注目を集めやすくするためと考えれば妥当だろう。

 しかしこれだけの数の冒険者の中から一体どういう基準で調査隊を選び出すのだろうか?完全に実力順だ、と言うならば俺が選ばれる確率はかなり低いようにも思われるのだが。


「ふむ…五十名程度か。ならば、明日の陽一刻、ギルド前へと集合するように。以上」

「…あれ?」


 そんなにあっさりと決まるのか?立候補、なんて大仰に言っていたくせに。

 しかもこれでこの会は終了らしい。少しずつだがギルドの中から人が減って行く。


「よし、とりあえず一回外に出るぞ」

「あ、ああ分かった」


 レイリの後を追い、ギルドの出口へと向かう。途中で横合いからエリクスさんも合流。歩きながら会話を続ける。


「さっきは二人とも手ぇ上げてたよな?俺も参加するぜ」

「なんか最近この三人で集まること多くなってきた気がするぜ。…いや、ここ最近に密集してるだけか…?」


 …確かにレイリの言う通りで、本気で仲良くなったのってここ数日だな…。まあ、なんだかんだでやる事が同じだからというのが一番大きな理由になっているのだろうが。

 …こちらとしてはこれからも仲良くさせていただきたいと思うのだが、…口に出すのは、ね。


「まあ、友達なんだし、こんなもんじゃないかな?多分これからもそうだろうし」

「ほぉう…」


 …ッ!?あれ!?今俺何言った!?なんか結局口に出してたような…エリクスさんがこっち見てにやにやしてるので確定ですね。そっちじゃないんです。妹が可愛いんでしょうけどそうじゃないんです。はい。


「まあ、確かにそうだな。それで、どうするんだ今日は?まだ日も高いぞ?」

「そ、そうだね。…やらなきゃいけない事とかは特にないなぁ」


 レイリの発言は、俺の思考とは関係ないものだったので、それに乗っかる形で話を反らす。

 しかし、実際今日はやることが何もない。今から仕事を受けるという気分でもないし、赤杉の泉に帰っても、おやっさん達はまだ準備で忙しそうだった。幸い、『今日の晩飯はウチで食えるぜ!』との事だったので、夜の戦勝会は開けそうだが。

 そんな思考を巡らせていた時、エリクスさんが先回りするように前へ出て、振り返りざまに口を開いた。


「じゃあよう、もう一回さっきの忌種の死骸でも見に行かねえか?なんか不気味だったから帰ってきちまったけど、あれも事前に調べて何か分かったんなら功績くらいにゃなりそうだしな」


 その提案に対し、レイリは、


「そんな事やって、もしさっきの光が毒かなんかだったらどうすんだよ。それは洒落になんねえぞ?」


 と返す。俺は俺で、


「誰も分からなかった現象みたいですし、俺たちがちょっと調べたぐらいで何か分かるものなんでしょうか?」


 と、自分の意見を出してみる。あの光が瘴気の燃えたことによるものだとして、異常現象が見えたとしてももう瘴気はないのだから、あの死骸には何もないような気もしている。

 しかし、エリクスさんはこの程度の反対意見で自分を曲げるようなタイプではないらしい。


「そうは言うがな、俺たちみたいな素人だからこそ、普段持ってない視点から物事を見つめ直したりできるんだ…って聞くぜ?それに、瘴気系の毒なら最悪でも教会行きゃあ治りそうなもんだしよ。…金は、掛かっけど」

「お布施お布施…ってやつですか?」

「おお、前に話してたのちゃんと覚えてたんだな、タクミは。あそこはほんとに…」


 以前町をレイリに案内してもらった時に、教会についての話も聞いたのだ。数日前の事だが、とても昔に感じる。そんな記憶が蘇った。


「ホーン、タクミもあそこの教会知ってんだな…金の亡者っぷりさえ無くなりゃ、もっと信仰されるだろうに、なーに考えてんだかあそこの神父は」

「結局、お布施ってどのくらい要求されるものなんですか?流石にあれだけ立派な教会を建てていて、それでいてせいぜい笑い話程度にしか嫌われていないのだから、法外な価格と言うほどではないですよね?」


 あれほどに立派な教会なのだから、金は稼いでいるだろうけど…国教でもないのにあこぎな商売、いや、活動をしていれば国から睨まれたりもするだろうから、ばかげた額ではない筈だ。


「レイリはまだ実際の金額出されたような事はなかったよな…結構前に胡散くせえ忌種にやられた呪い的なもんをどうにかしてもらおうと思っていったときゃぁ…大体、銀貨八十枚くらいだったっけか…?」

「ゴブリン百体分!?」

「そりゃまた…これはあこぎって言っても良いんじゃあねえのか?なあタクミ」

「さ、流石にね…あれ?俺でも一日でゴブリン十数体狩れる訳だし、十日くらいでどうにかなるならありなのか…?」

「なんか分かってねえみてえだから言っとくがな、忌種を楽に狩れる冒険者ってのはタクミが思ってるよりも少ねえぞ。それ以外の普通の仕事なら、だいたい月収と同じくらいって思った方がいい」


 治療費=月収か…。それは厳しいな。まあ、エリクスさんの場合呪いのような物を受けたっていうし、そこまでの治療が必要になる状況に一般人が陥ることはあまりないのかもしれないけど。


「さって、と。いざとなった時に駆け込む場所もできたわけだし、行ってみようぜ?」

「ゲェぇ…マジで行くのかよ。本気で病気にかかっても知らねえぞ?」

「…まあ、本当に病気になったら今日の報酬を使って…。………とっときたいなぁ」

「ええぃ小声で率直な願望を表しおってからに!そこまで言うならオレが!オレが払ってやろうじゃ~ぁありませんのおッ!」

「兄貴が壊れたっ…ッ!?」


◇◇◇


「あれ?あの馬車って…?」

「ん?」


 門を出て草原を歩く途中、俺の眼にどこか見覚えのある赤い垂れ幕を掛けた馬車が道をヒゼキヤの方角へ走って行くのが見えた。


「どうした、タクミ…あの馬車か?」

「うん。…どっかで見たような気がするんだよな」


 俺の呟きに反応を返してきたレイリに疑問をこぼしてみる。だが、レイリもあの馬車については知らない様子だ。

 一体何処で見たのだったか………ああ!確かリーヴさんの護衛依頼でロルナンに向けて馬車に乗った時にすれ違ったんだ!あの無駄に血のように赤い布で思い出した。

 もしかして、今の今までこの町から出る事が出来ていなかったのだろうか?となると…五日間か。商人だとしたら何か大事な日付なんかを守れていないかもしれない。実際すごい速さで馬車を走らせてるし、少し心配でもある。


「前に一回見た馬車だった。ちょっと色合いが特徴的で記憶に引っ掛かってたみたい」

「なんだよそんな事かぁ?確かに血見てえな色だが、気にするような物じゃねえだろ」

「そうだぜ。…早く終わらせて帰っちまおう。毒だと思いだしたらここにいるのも嫌になってくる」

「おいおい、そんなふうに言ってもよ、結局明日は森の中入るんだろレイリも。あそこが瘴気の発生源なんだぜ?」

「うげえ…いやになってきたからマジで止めろよな兄貴。…そうだ、そう言えばタクミの奴ズリいんだぜ!昨日アタシ達に黙ってボルゾフさんと守人に会いに行ってたって」

「なにぃっ!!」

「「うおっ!」」


 突然大声をあげて振り返ってきたエリクスさんにレイリと二人で驚く。一体どうしたというのだろうか。そこまで怒るような事ではないと考えていたのだが。

 つまり、それとは別の理由が有ると考えた方がいいのだろう。


「た、タクミおまっ!あのお方と知り合っているというのかッ!あの麗しき蒼薔薇とッ!」

「え?麗しき…蒼薔薇?」

「なに言ってんだよ兄貴…」


 数秒間肩をわなわなとふるわせていたエリクスさんは、こちらの眼を見据えて


「一目惚れだよっ!!」


 と叫んだ。


「………………おお」

「なにぃっ!?」


 これは、凄い事になったのではないかっ!?



 投稿が遅くなりました…と言うか、日付的にぎりぎり二日開けてしまっているようで、申し訳ありません。

 できる限り書こうと思いますので、見捨てないで頂けると幸いです。


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