表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第五章:獣人、信仰、悪意、そして
154/283

第二話:王都と予想外の再開


 馬車に揺られて王都へと向かう間、俺達三人は王都で何をするのかという事を話しあっていた。

 これは、以前も少し考えたことなのだが…この世界にはあまり娯楽というものが無い。いや、ない筈はないのだが、俺が地球で暮らしていた時期に親しんだ物が存在していないから、いまいち見つける事が出来ないのだ。

 二人も同じで、生まれてからずっと、瘴気の壁に閉ざされた村の中で生活してきたから、娯楽の類を知らない。

 俺にとっての娯楽とはつまり…いや、俺の場合はもはや日常になっていたのであまりよくはないだろうが、テレビやインターネット、或いはゲームなどだ。

 当然、無い。機械類に近いものはギルドカードくらいしか見た事が無いし、これだって恐らくは魔術から生まれたものだろう。


「…だったら結局、何時もみたいに仕事を終わらせて、町を歩いて、宿に帰って寝る、みたいな生活になるのかな…?」

「タクミは今までそんな生活してたの?」

「まあ、いっつもってわけじゃないけど…冒険者って、仕事を受けに行くのは自分の意思次第でしょ?やる事が無い時間って凄く多いからさ、何をすればいいんだか分からなくなる」


 何となく商店街を見て回ったり、ロルナンに住んでいた頃なら、レイリと一緒に話をしたりとか、そんな事もしていたんだけど。

 今だってそれは出来るだろうけど…町その物の治安が悪いとなると、目的も無くさ迷い歩くのは危険だと思う。今日に関しては、町の状況を知る必要もあるだろう。


「王都は、どのくらいの、大きさ?」

「うーん…俺も行った事無いから良く分からない。と言っても、この国の首都だから、かなり大きい町だとは思うけど」

「フィークと、比べると?」

「森を合わせても、もっと大きいんじゃないかな?」


 ロルナンと、フィークに森の半分を足した大きさが同じくらいだから、まあそんなものだろう。


「お客さん、王都は始めてかい?見えてくるよ」

「本当ですか?」


 これは乗り合い馬車―――つまり、大勢の人が乗っている馬車なので、声を落として話をしていたのだが、今の声でも御者さんは聞き取れたようだ。

 外へと身を乗り出してみると…そこには高い壁で囲まれた、巨大な町が有った。

 いや、町が有ったというのはあくまでも俺の想像だ。壁の上から見えるのは、城…恐らくは王城の上部、塔のようになっている場所だ。あの壁、六階建てのビルくらいは有るんじゃないだろうか。ここからではまだ距離が有るからはっきりとは分からないが、そのくらいあれば内側の建物を覆い隠す事は出来るだろう。

 ただ、最近になって抱いた疑問もある。

 俺は今、魔術で『飛翔』出来る訳だが、あの壁をそれで越えたらどうなるのだろうか。

 何の問題も無く飛べるような気もするが、魔術士が有り触れているこの世界の首都、しかも間違いなく戦いを視野に入れた城壁をもつ町が、魔術士なら簡単に入れるなんて緩い警護態勢で満足するのだろうか?…いや、自分で考えておいてなんだが、絶対にあり得ない筈だ。

 あそこにもまた、何らかの魔術的な仕掛けが有るのだろう。


「うわ、中が全然見えない…あの壁の向こうなんだよね?」

「う、うん。その筈」


 カルスは単純に興味深げに町を見つめ、ラスティアさんは見つめたままあまり大きな反応をしなかった。

 一度町を見た事で想像力を刺激された俺達は、それから王都につくまでの約一刻、どんな町なのかという事を話しあっていた。


◇◇◇


「…な、なんかもう―――これが王都か」


 視界を埋め尽くす人、人、人。

 今まで体感した事のない様な、いっそ暴力的とも言えるような人波に、俺達は恐れをなして外壁の近くへと退散していた。

 日本の都会なら、見る事も出来た光景だっただろうが…俺もほとんど外へ出歩かなかったし、住んでいたのは都会から少し離れた町だった。だから結局、こういう人混みには慣れていないのだ。村の中でずっと暮らしていた二人なら余計に、だ。


「ど、どうするタクミ?僕、どうやって道を通って行けばいいのかも分からないんだけど…」

「…一応、流れに乗って移動する事は出来ると思う。ただ…」

「行き先が、分からないのに、移動したら…何処にも、たどり着けない」

「だよね、やっぱり。…誰かから、せめてギルドの場所だけでも聞き出さないとな…」


 衛兵を探して、話を聞く。するとどうやら、王都には冒険者ギルドが二か所あるらしい。と言っても別に、違う組織という訳ではないのだ。

 自分のランクを訊かれて、Dだと答えた俺達は、北側に有るギルドへ向かうようにと言われた。俺達が入った門は王都の東南東辺りに有るようなので、少し遠い…のだが、大通り沿いに有るから、歩いていけばたどり着ける筈だそうだ。

 王都を中心方向へと延びる道を進んで、二つ目の横へ延びる道を進んでいく。王都の中心にはあの大きい城が有るのだが、そこまでにも壁は幾重にも作られているようだ。

 その道は真っ直ぐだが、俺達が今進む道はゆったりと湾曲している。城を中心として円を描くような構造になっているのだろう。

 だがやはり町は広い。円形の、外縁部により近い場所を回るように歩いているのだから、移動にも時間がかかると言うものだ。

 周囲の雑踏も相まって、精神的な疲労が積もる…が、いい加減に文句ばかりも言っていられない。三人ではぐれないように身を寄せ合いつつ歩みを進める。


「…冒険者の人数も多いみたいだし、やっぱりこっちで合ってるみたいだね」

「うん。でも…強そうな人、多いね。王都の周りって、忌種は居ないんでしょ?」

「そういう話だったよね。…なんでだろ?」


 他の町では、冒険者の中、忌種を討伐出来ないランク…つまりはFランク未満の冒険者の方が数が多く、剣などの武器をきっちりと装備した冒険者は数が少なかったのだ。

 だが、冒険者と分かる見た目の者はほぼすべて武器を持っているか、或いは、シュリ―フィアさんのように杖を持っている。俺やラスティアさんのように杖を持っていない魔術士も多くいる筈だから、…この道にいる全員を集めると、ロルナンでの瘴気汚染体との戦いに参加した冒険者たちと同じくらいの戦力が有るのかもしれない。

 まあ、個人個人の力の差まではっきりしている訳ではないから、エリクスさんやボルゾフさん並みの力を持つ人がどれだけいるのかは分からないのだが。

 そんな風に考え事をしたり、また、辺りを見回したりして歩いているうちに、ようやくギルドへと到着した。

 ギルドも賑わっている。それぞれがどんな依頼を受けるのか、と、そんな話を仲間内で繰り返している様子が見て取れる。


「受付も、凄く並んでるね…。他の街ならこの時間、仕事に出る人が増えて空いてくるくらいなんだけど…」

「ザリーフとかフィークの朝方と同じくらいだよね、これ…とりあえず並ぼう?このまま待ってても仕方ないし」

「あそこが、一番短い、列」


 ラスティアさんが指をさした列へと向かい、最後尾で待機する。どうやら、一人一人の間隔が他の列と比べると少し広いようだ。合計人数という意味では四人くらい違う。

 その後は、計画通りとばかりに他の列よりも早く列が進んで行ったので良かった。

 そして、いざあと二人で俺達の番だ、となった時。聞き覚えのある声が耳に入った。それは、女性の声で、更に言えば仕事中の物だ。


『それでしたら、本日陽七刻から月二刻までとなります。少し前には到着された方がよろしいと思います。…はい、それではよろしくお願いします』


 至って普通な、…ギルドの受付嬢が冒険者に対して仕事の内容を説明する会話。だがその声は、間違いなく聞いた事の有る物で…。


『それでは、次の方どうぞ。…申し訳ありません。昨日お受けになった依頼は取り消されてしまいました。申し訳ありません。どうやら別の貴族宅で会合が有るようです。よろしければ、そちらでの仕事を斡旋させていただく事も出来るのですが…はい、承りました。昨日の物より終了予定が三刻程遅くなっています』


 俺達が並ぶ列の先…つまりは、その奥に有る受付に座っているであろう受付嬢の声。…まさか、と思いつつ、仕事に関する話が終わったらしい、俺の前にいた最後の一人が列を離れた。

 そこにいたのは―――。


「それでは、次の方―――って、え?」

「―――ミ、ミディリアさん!?」


 ロルナンの冒険者ギルドで俺に冒険者としての仕事について教えてくれた、ミディリアさんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ