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忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第四章:聖教国と神の子孫
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第四十九話:邪教の真実

 どうする?奴らが何をしでかすかは分からないが、俺一人でどうにかできる相手じゃないぞ。

 陽は高く、しかし木漏れ日の実が照らす薄暗い森の中では、奴らの纏う紅がより一層不気味に映った。

 その奴らの足元には、よく見れば見覚えのある狼型の忌種も数頭いる。ロルナン近くの森で瘴結晶を確保しようとした時の忌種は、奴らの仲間だったのかもしれない。

 ここにいる…ザリーフの近くにいると言う事は、ザリーフに対して何かを仕掛けようと言うのだろうか。

 …結局のところ、奴らの目的がどんなものなのかははっきりしていない。だが、町の近くでこんな大人数が潜んでいるという時点で、何かよくない企みをしていると考えるべきだろう。


「揃いましたか?それではみなさん、準備もきちんと終わっていると思いますので、作業に取り掛かってください」

「了解しました」


 視線の際、司教の命令を受けた部下達がそう返答して森の奥へと消えていく。…目的は町じゃないのだろうか?

 …だとすれば、ここは町まで一度戻って衛兵の詰め所なりなんなりに駆け込むのが一番だろう。俺一人で対処ができる強さでも数でも無い。…それに、まだ人に対していきなり攻撃できるほどの覚悟は無い、かな。

 となれば、ここからどうにか見つからないように距離をとって移動しなければいけない。

 息を潜めて、森の外へ体を向けてから、小声でひっそりと


「…『飛」

「ああ、少し待って頂けますと嬉しいです」


 心臓が、バクンと音を立てた。ゆっくりと振り返り、そして、木の向こう側にいる筈だった司教が、今は少しずれた場所にいて、そして俺を見つめている事に気がつく。

 ―――まずい。


「お久しぶりです。まさか、こんな場所で再びお会いできるとは思っていませんでしたよ。…住みませんでしたね。まさかあんな風に暴れられるとは思っていませんでしたので、あの時は…。大丈夫でしたか?」


 最早言い逃れは出来ない。どこかの誰かが見ているという状況では無く、俺という個人の事を司教は認識している。

 覚悟を決めるために、深呼吸。逃げるにしたって、単純にそうしただけでは対抗できるかは怪しい。今は昔と違って『飛翔』を使えるが…それで互角という所だろう。

 あんまり刺激するのはいけないから、出来るだけ普通に話す事にする。


「…お久しぶりです。どうして、ここにいるんです?」

「いえ、仕事の時期だったと言うだけの話ですよ。ロルナンではご迷惑をおかけしました。恙無く進んでいれば問題は無かったのですが、その隣の…ヒゼキヤという町の方での仕事が滞ってしまいましてね。結局遅れて、被害も出てしまいましたし」


 司教の言う事は、分かるようで、結局具体的な事は何一つ分からない様な内容だった。瘴結晶を回収する事が仕事だったのだろうか?

 だが、こちらの町にも、そして自分達の組織の人員にも多大な被害を出しておいてまでするような仕事だったのだろうか?まったく理解できない。


「…それで、ですね。前回貴方には、こちらの御誘いを断られてしまいましたが…どうです?考え直す気などございませんか?」

「え?」


 考え直す気は無い、とはっきり言ってやろうかとも思ったが、どう考えたって真正面から喧嘩を撃っているようなものだ。ここは慎重に、様子を見よう。


「お誘いも何も、俺は貴方がいる組織の事を全く知りません。流石にそれは…」

「…そうですね。確かに、私達の組織は世間一般からすると誤解を受けている所も多いですから」


 誤解?

 …昔ミディリアさんから聞いた話の内容とこに人達の話の内容が食い違っているという事には気がついていたが、しかし誤解しているとは思えない。結局彼等は危険な組織という認識で間違っていない筈だ。


「それでは、…そうですね、私たちの活動内容からお話しましょう」


 さっき聖十神教についての話を聞いて来たばかりだと言うのに、今度は邪教の話を聞くのか…。なんて、正直に言うと面倒だと感じた俺は、しかし司教の言葉にあっさりと興味を引かれてしまうのだ。


「私たちの活動内容は、瘴気の浄化作業です」

「…は?」

「二十六年前の絶忌戦争の折りより爆発的に総量を増した瘴気により増加した忌種を討伐し、土壌及び水源を汚染する瘴気を自らの中に取り込み、或いは別のものへと転換する事で瘴気を浄化。忌種や瘴災の発生そのものに対抗すると言うのが、基本的な目的と、活動内容ですね」

「い、いや、ちょっと待って下さい」

「…どうかしましたか?」

「瘴気の浄化作業って…貴方達がやってるのはその逆なんじゃあ」

「そんなわけ無いでしょうに…!」


 憤りを感じている事がひしひしと伝わってくる口調でそう言い捨てた司教の顔などから鑑みるに、その言葉には嘘が無いらしい。

 だが、そうなると俺の中では矛盾が生まれてくる。瘴結晶を森の奥に埋めて瘴気汚染体を作ったのは邪教の連中ではないのか?


「いえ、まあ…分かっていた事ではあります。誤解を放置した結果、それが私達の存在を知る者たちにとっては常識とされてしまった事は。ただ…そこまでですか」

「え、ええ…?」

「そもそも、ですよ。私達も人だと言うのに、何故人と見れば見境なく殺そうとするような忌種を生み出してしまう条件を整えないといけないんですか。よしんば結果がそうなったとしても、それは更なる瘴気の消滅を前提としてのみ行われる内容です」

「…ちなみに、ロルナンでの事については」

「それは誠に、申し訳なく思っております…」


 司教は手を胸の前で組んで、膝をついた。謝罪と言うよりは拝んでいるような恰好である。

 ―――ロルナンでは失敗が有った、というのは、さっきも司教が言っていた事だ。遅れて、被害が出たと。


「それは、瘴気汚染体の事ですか?」

「はい。元々は私達で一か所に纏めた瘴気…つまりは瘴結晶を回収、その過程に手集まってきた忌種を一網打尽にし、彼等が持つ瘴気まで回収しようと言う作戦でいたのですが、『青銅の蛇』の霊地調整に失敗、本来の生息域を抜けだした忌種などの対処を行っているうちに、ロルナン近く、肝心要の場所で暴走が起こってしまうと言う…ここ十数年ほどで一番の失態でした」


 …聞いた事のない単語が混じっていたので完全に理解は出来ていないが、つまりはヒゼキヤでの仕事に手間取ってロルナン側への対応が遅れたという事らしい。…『青銅の蛇』とか、何処で聞いたんだっけ…?


「…それが本当の事だったとしても、何でこんなにこそこそと動いているんですか?もっと大きく、活動を表沙汰にすれば危険も減るんでしょうに」

「…それは、ですね。私達の組織がもともと、…ああいえ、これは多分話さない方が良いですね」

「もともと何だったんですか?…それを聞いたら殺されてしまう、とかじゃ無ければ是非聞きたいんですけど」


 少し背筋に冷たいものが走る感覚を得ているが、そっちに興味が有るという形で踏み入って行くのならそこまで悪いイメージを持たせることも無いだろうと信じて、深い所まで探りを入れてみる。


「…他言無用でお願いしますが、私達はもともと、聖十神教の『赫獣魄栄』様派と『月煌癒漂』様派の二派閥を中心として組織化されたものでしてね。ですが、双方共に悪評について気にせず仕事を進めていった結果、人々の味方である聖十神教と、瘴気や忌種を使って人々を傷つけようとする邪教という二つの組織が人知れず争っている、というようなうわさが流れてしまいまして…」

「…な、なんですかそれ」

「ですので、今更聖十神教の方から私達を身内として扱う事は出来なくなってしまったのです。まあ、双方争い合うような事態に発展しなかったのが何よりの救いですね」


 何が何だか分からない、分からないが…もしも司教の言う事が正しいとしたら、皆すさまじい勘違いで殺し合いを行っている事になる。

 まさかそんな事が有る筈はないと思いつつも、司教の態度から嘘を見抜く事が出来ないのも事実だった。


「でも、さっきはあの人たちと一緒に、狼みたいな忌種が居ましたよね?あれはどう説明するんですか?」


 まだ司教へと聞きたい事は有る、が、まず一番に聞くべきだと思うのはこれだ。一種の現行犯とも言えるだろうか、…あの日俺とレイリ達もいた調査隊へ襲いかかってきたものと同一個体なのは明らかだ。


「あ…その、ですね?正直なところ、これが一番理解され辛いというか、違いを分かっていただけないのですが…彼等は忌種では無いです」

「忌種じゃない、って…でもロルナンで、俺達を襲って来たんですけど」

「それは、私達が瘴結晶の近くへ近寄る人がいない様に脅かしておけというふうにお願いしていたんですよね…えっと、あの狼は由緒正しい聖獣の一種なんですよ?流石に、ヒゼキヤの青銅の蛇程ではありませんが、その数と統率性によって力を増している素晴らしい」

「ちょ、ちょっと待って下さい」


 何故かあの狼に対してほめたたえるような言葉を並べ始める司教だが、そのまま話されてもわけが分からない。


「聖獣ってなんですか?青銅の蛇って言う聖獣についても俺は全く覚えが無いんですけど…」

「…そ、そうでしたか。聖獣と言うのは、忌種と同じように…というのもおかしな話ではあるんですが、ともかく、強い力を持っていて、しかし人類の敵では無い存在の事です。多くは同じく強大な忌種を封じるために残滓のようなものになっていますが、『赫獣魄栄』より齎された彼等は今の時代にも多く息づいているのです」

「…は、はあ」


 正直全く頭に入って来ない。説明してくれたんだろうけど、そもそも俺の方で元から持っているべき知識が欠けているからなのか、結論の前段階の時点で既に分からない事ばかりだ。


「青銅の蛇、という聖獣はどうしたんですか?」

「とある、同じく蛇の形をした忌種を封印するために、その時代にあの町を収めていた男と共に消え行きました。最早ヒゼキヤにはその身体が持っていた火と蛇に対する抑制効果しか残っていません。それが、残滓です」


 壮大だな…。神話とかに書いて有りそうな内容だけど、聖十神教から、少なくとも最初は正式に分かれた部署だったとすれば嘘は付いていないんだろう。ミディリアさんがそんな事を言っていた事もうっすらと思いだせたし。

 ふと気づけば、太陽は傾きだしていた。そんなに長い時間話しこんでいた記憶放ったが、もしかしたら無意識に思考の時間を長くとっていたのかもしれない。

 今の時刻、体感で陽八、九刻。正午からは二、三時間ほど過ぎている位だ。出来る事ならそろそろ移動したが、いくらなんでもこんな状況ですぐ移動しようとは思わない。


「何で、俺を誘おうとするんですか?」


 大切な質問は他にもある。だが、俺個人として重要なのはこれだろう。

 ―――場合によっては、これからの行動を考え直す必要がある。


「…貴方が、魔力で瘴気へと干渉できる人物―――つまり、私達と同じ、遠縁であろうと神の血を引くものだからです」


…詰め込みすぎた感。いや、どちらにしろこのころでする話だったんですけれども。一章頃の伏線張り忘れと間違いが痛い…。

第二章閑話三:闇往く狂気を修正しました。展開そのものは変わっていません

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