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忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第一章:沈んだ先の戦世界
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閑話二:救出作戦

今回は再びの閑話。主人公と同じ場所にいなかったり、関係ない事柄についての話が長引いた場合は、閑話として投稿します。

 それは夜更けの事、新入り冒険者タクミ・サイトウの捜索のため、ロルナン冒険者ギルド長のガーベルト=エリアスは、ロルナンより東側に有る森(・・・・・・)にてその鍛えあげられた肉体と同じ力強さを醸し出す戦斧を振るいながら群がるゴブリンを蹴散らし、着々と森の奥へと足を踏み入れていた。


(…くっ!遅すぎたか…ここに来るまでにはタクミ君とすれ違わなかった。彼がロルナンに帰っていない限り、夜になり活性化した忌種に対抗できず、もう死んでしまっているだろう………)


 惜しい人材をなくした、と彼は悔やむ。魔術の全適性だけでも十分珍しい事だと言うのに、娘の言う事を信じれば、彼は一切の戦闘経験無しでDランク冒険者とまともに打ち合う事ができ、更に言うなら勝つために諦めない心と策を練る思考能力。

 …何度考えても本当の事とは思えない。そういう物は実践の中で培っていく物ではあるまいか?いや、それができるのが天才と言う物かもしれないが。

 

「…いや、まだ諦めるには少し早いな。どうにか隠れてやり過ごしているかも知れないのだし、もっと奥まで探してみよう」


 彼が森のさらに奥へと進もうとしたとき、懐にしまっておいた通信板―黒い板状、魔術的に遠距離での会話を可能とする為に開発された物品―から同じく通信板を持っている娘の声が聞こえた。


「…ギルド長?報告があります。………タクミさんが依頼を達成して既に帰還しているのですが…どういう事なんでしょうか?」

「…なに!?どういうことだ!私は一度も彼の姿を見ていないぞ!あの時点で依頼を完遂出来ているはずもないし、この森の中から出るならば忌種のまだ少ないこの道を通る筈。それなのにどうやって!」

「…言いにくいのですが、どうやら彼、…西の森に行っていたらしいのです。ギルド長は東の森に行かれていたのですね…。出会えないのも、納得です」

「しまった!行き先の説明をしていなかったのにうっかり東だとばかり!」


 本来うっかりで済ませられる範囲のミスではない失態ではあるが、生還の報告を受けて安堵するガーベルト。

 しかし、ここで疑問が、

 そもそも今の彼ではゴブリンを倒せないから、こうやって自分が捜索に来ているのではなかったか?だと言うのに、何故彼が依頼を終えて帰って来たなんて事になるのだろうか?


「…なあミディリア、なぜ彼が依頼を達成している?ゴブリンを討伐できずに逃げかえってきた、と言うならまだしも、既に二体以上討伐済み、と言うのはおかしいと思うのだが…」

「それがですね、信じがたい事ではあるんですが、事実なんですよ。冗談なんかいちいち言ったりしませんから。しかも二体どころじゃないんです。十一体です、本来の数の五倍ですよ!なんと彼、このわずかな時間で、ゴブリンを討伐できる威力をもった魔術を自力で作成したと言っているんです。流石に無いだろう、とは思ったんですが…実際にゴブリンは討伐されています。どうしましょうか…」

「…それは…」


 実際に魔術を作成したと言うならそれはとんでもない話である。新たな魔術を作ることなど各国の王宮魔術官や守人たち、その中でも魔術という概念そのものに対し深い造詣のある者たちの特権とでも言うべき高等技術。

 もちろん、ゴブリンの討伐に使われる程度であるならば、彼らが作る魔術とは天と地ほどの差があると言う事は分かる。何せ彼らの魔術は災害に対して災害をぶつけて止めるような馬鹿げた威力なのだ、さすがにそんな物使われた場合離れた場所からでも確認できる。

 だが、

(…彼に対する評価を改める必要があるだろうな。魔術を使った事が無いと言いながら誰に教えられるでもなく自分から魔術を考え出してしまうその異常性…今更冒険者ランクを上げることはできないが、目をつけておくにこしたことは無い、か。しかし、また妙な人材だ…。…どうやら、娘が言っていた守人へと至る可能性と言うのもあながち的外れではないらしい)

 そんな事を考えながら自らが歩いている獣道じみた細い道を森の外へと歩き出す。彼の周りには知性は有れど学習することを知らない低位忌種が群れ、機会を窺い襲いかかろうとし…

 …もちろん、その後も彼の斧はずっと振るわれ続けていた。


◇◇◇


「うぅむ…どうにも最近は忌種の数が多いような気がするな、西の森には本来ゴブリンを含め、忌種など巣食ってはいなかった筈…。それに、今日は【小人鬼(ゴブリン)】どもの凶暴さもいつにもなくたかった気がするし、………これは近じか冒険者を集めて大規模な討伐でも行った方がいいのかもしれん…」


 ロルナンをすぐ目の前にした草原でガーベルトは呟く。この問題の原因、実はロルナンの冒険者の平均的な実力が高すぎる事で、依頼の達成のため遠出しがちだった事が原因だったりもする贅沢な、それでいて根深い悩みだったりする。

閑話休題(それはおいといて)

 今はギルドに帰り、タクミと会えるならば事情を聞き、そうでないなら午後の中に溜まっているであろう仕事をかたずけなければならない。彼はギルド長。少なくともこんな真昼間からそこまで自由な時間などは無いのだ。


「………帰るか」


 その背中は、歴戦の猛者とも英雄と呼ばれた物とも思えない程疲れ果てていたと言う。もしも卓克がこれを見ていたならば「仕事終わりで疲れた父さんみたいだ…」とでも言ったことだろう。



今日執筆していた部分で、ようやく一章がどういう形になって行くのかを明確にできた…。どうにかこうにかこれからの展開も頭の中で詳細なところまで設定完了したので、お待ちください。

ストックが尽きるまでは毎日投稿したいと思います。評価・ご感想お待ちしております。

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