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忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第四章:聖教国と神の子孫
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第二十六話:行動決定

 まるで歩いているかのように足を動かしつつも、数センチだけ宙に浮いた状態で『飛翔』する。…起句だから仕方ないにしたって、これを『飛翔』と表現することは少しはばかられるようにも思えたが。


「馬車って来てるのかな…?タクミもその状態でずっと歩くのいやでしょ?」

「そりゃあまあ、ね。…感覚がおかしくなるし、他の人に浮いてるのがばれたら、変な疑い掛けられそう」


 勢いよく飛んでいるのならまあ、魔術として判断されるだろう。だが、歩いているかのように見せかけて飛んでいる相手がいたとしたら…やっぱり怪しいだろ。

 だからまあ、辺りには注意を配って、馬車が来たのならそちらに乗せてもらおう。

 と、ここで一つ思い出す。


「遊ぶ?」

「いや、もう帰ろうよ。疲れたし」

「今日中に、帰れない事は、ともかく、野宿は、いや」

「…分かった」


 まあ、散々痛い思いもしたしなぁ。いくらなんでも空気の読めない発言だったか。

 二人も『やれやれ』と言った感じのため息をついているし、少し落ち着いた方が良いな。最近何だか、体調もおかしい様な気がするし…どこか悪いのかな?

 まあ、今日の夜はゆっくり休んで疲れを取るとしよう。

 両脇をカルスとラスティアさんに固められながら進みつつ、俺はそんな事を考えた。

 それからおおよそ十分ほど歩いていると、遠くに馬車が走っているのが見えた。そのあともう少しだけ進んで、立ち止まる。

 するとその馬車は俺達の前で止まった。御者さんに話を着たところ、どうやらあの村に帰る馬車らしい。乗せてくれるらしいので、その好意にあまえることにする。


◇◇◇


 往復を合わせて総移動時間二刻半。討伐依頼にかかった時間は四刻半…現在が陽九刻なので…午後三時とか、四時とか。

 今すぐに乗れる馬車があれば夜中にはつけたのだが、何と惜しい事に半刻前に出発してしまったらしい。

 まあ、昼食を食べたいと思ってもいた所だから丁度いいと思う事にして、宿の主人に昼食をとることは可能かと質問する。と、基本的には朝食と夕食のみの値段だったようで、昼食は別料金になるという。

 一食、銀貨一枚。

 ―――一瞬、ほんの一瞬だけ『高い!』と思って、しかしその後で思いなおす。このくらいがまあ、普通だよなと。

 むしろ、村唯一の宿という事で料金設定はかなり自由に出来る筈だという事まで考えればかなり良心的だろう。

 ともあれ、それを食べた後に明日の朝発つのでもう一泊お願いしますと伝えて、俺達は早速部屋に戻った。

 【白金牛(ズラトロク)】討伐の報酬はフィーク等のギルドでしか受け取れない…というより、この町の出張所のような場所では正式な依頼達成扱いにはならないらしい。

 偶に部屋から出て話をしに行ったりしたものの、早々に夕食をとり、眠りにつく。


◇◇◇


 ―――眠りづらい。


「ん…」


 上体を起こして、ぼんやりとした頭で辺りを見回す。壁に空いた窓の外はまだ暗く、未だ朝が遠い事を如実に示している。

 がりがりと頭をかいて、僅かにため息。

 昨日も少し寝苦しかった。だが今日は、寝たのか寝ていないのかも曖昧なままに何度も起き上がっている。寝転がっていればいつかは眠れるというものかもしれないが、非常に苦しいのだ。暑苦しいというのに近いと思うが、しかし気温は、むしろ肌寒い程度。

 …薄着になってもこれなら、全裸になった所でたかが知れてるしな、今日は諦めるか?

 何処が熱いのかと思って色々な場所を触ってみると、まず一番に、右足の裏だという事が分かった。

 それ以外には、両足の膝付近と腰辺りも。少々弱いものの、やはり熱かった。

 …まあ、考えるまでも無く、今日怪我をした所だ。治りきった物だと思っていたが、後遺症の様なものが残っているのだろうか。そんな風に考えて足の裏を見てみると、傷と呼べるようなものではないのだが、しかし痕がまだ残っているように見える。

 以前はっきりと治癒を確認したのは【岩亀蛇(ペルーダ)】との戦いのさなか、腕に大火傷を負った時だ。

 酷い火傷という物は、基本的に元の肌に戻すことは不可能…という話をどこかで聞いた事があったと思う。

 なら、今回の傷と比べればどちらが酷いものだっただろうか。

 傷の深さで言えば、今回の物。でも多分、銃で撃たれたりして体に穴が空いても、後は残るだろうが傷は塞がる筈。だとすれば、火傷の傷は完全に消えているのに、今回の傷がふさがっていないというのは…少しおかしい様な気がする。


「同時なのが、いけなかったとか…?」


 膝や腰にも、相当薄いが、やはり僅かに痕が残っているように見えた。でも、塞がるまでの時間はやけどが治るまでの時間とほとんど変わっていなかった筈なのに、痕が治るまでの時間は長いって言うのは…どういう事なんだろうか、本当に。

 …もう寝苦しくても我慢するしかない、か。結局、この回復能力だってアリュ―シャ様くらいしか詳しい事を理解している人もいないだろうし、今の俺が悩んだ所でどうにもならないだろう。

 全く関係ない事が原因って可能性もあるし、フィークに帰ったら、病院でも探してみようかな…?


◇◇◇


「…あ、朝か」


 窓の外から陽の光が差し込んでくる。結局あの後も、起きたり、眠ったりを繰り返していた感は否めない。ぐっすりと眠りたかったが、もう今更だ。

 今はまだ陽一刻ほど。二度寝しようとは思わないが、二人を起こすのはもう少し後でも良いだろう。

 ―――それから二十分ほどしてから、着替えるなどの準備を終えた俺は部屋の外に出る。二人はまだ出てきてはいないが、多分もうすぐ起きてくる筈だ。

 と、俺がそんな風に考えたのと同時に、部屋の中から足音が聞こえてきた。


「あ、おはようタクミ」

「おはようカルス。今日は眠れた?」

「うん。少しは慣れたかな。…タクミは寝れた?なんだか疲れた目してるような」

「何だかちょっと寝苦しくてね。まあ、とりあえずフィークに帰ってからゆっくりする…前に手紙書かないといけないか。何書こうかな」

「結構忙しいね…でも、ちょっと元気出たのかな?」

「うん。疲れてる場合じゃないみたいだね」


 その時、ラスティアさんも隣の部屋から出てきた。その顔はカルスと比べるとやや眠気が残っているようにも見えるものだったが。


「…おはよう、二人とも」

「うん、おはようラスティアさん」

「おはよう。えーっと…まだ多分陽二刻にはなってないでしょ?あとどのくらいで出発なの?」


 カルスが、恐らくは三人そろってからにしたかったのだろう質問をしてくる。

 馬車の出発時間は陽三刻頃だという話なので、まあ、まだ余裕はあるだろう。


「とりあえずご飯食べて…それでも余裕は有るかな。準備だけ済ませてゆっくりしてよう」


 そのあとほんの少しだけその場で、帰ってからの行動について話をしてから食堂へ。

 今度は本当に他愛のない話をしてから、外で馬車の準備をしていた御者さんに話を通して、少しの間部屋に戻る。

 ベッドに横たわると、余計に体の疲れが抜けきっていない事が分かる様な気がした。純粋に傷を負った所だけでは無く、肩や首など、いかにも疲労が溜まりそうな場所に鈍い痛みを感じる。

 数日前までこんな事はなかった。勿論、地球での生活を送っていた時であれば話は別なのだが、もっとすっきりとした目覚めだったような…それとも考え過ぎだろうか。

 というか、こういう中途半端な所が俺の良くない所かもしれないな。夜中、考えた所で分からないと結論付けたくせに、結局また考えてる。そりゃぁ、もしかすると命にかかわるような事かも知れないから、どうしても気になりはするけど…。

 さて、と。頭を切り替えられないままではあったが部屋を出て、二人と合流する。そのまま馬車へと乗り込んで、八刻ほどの長旅が始まる。

 最初の三刻程、俺はカルスやラスティアさんと話をしたり、何となく外の風景を眺めたりするだけで過ごした。

 ―――しかし、休憩としてとある村に立ち寄った時、一つ気が付く事があったのである。


「………聖十神教」


 見覚えのあるレリーフが掲げられた建物を見て、俺はそう呟く。

 非常に、非常に都合のいい話だとは思うが…以前俺に教会の見学を誘ってきたあの人のいる場所。つまり、ザリーフの聖十神教の教会に足を運んで、何か神様についての話を聞けば、別の面から情報を手に入れられるのではないか?


自分で書いている物に言ってる時点でかなり度し難い事ですが…最近展開が遅いですね。取り合えず今章のプロットを少し詰めていくつもりです。

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