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忌祓の守人~元ダメ人間の異界転生譚~  作者: 中野 元創
第四章:聖教国と神の子孫
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第二話:聖教国の街並み

「会長を護衛していた、ですか」

「と言っても、日雇いですよ?長い間の付き合いがあるわけでもないです。俺の知り合いが少ないからリィヴさんの印象は強いんですけど、リィヴさんから見た俺の印象はそこまで強くないと思います。…正直、こうしてすぐ思い出してもらえたことは驚きです」

「成程…。実のところ、会長は王国での生活について詳しくは語ってくれませんので、少しでも教えていただけると幸いです」

「そ、そうですか。でも、俺が知ってる事は…商会の養子だった、ってことくらいですよ?」


 本当にそのくらいだ。ハルジィル商会について詳しい事を知っている訳では無く、他に情報があるとすれば、義兄と仲が悪いという事だろうが…流石に家族関係についてぺらぺらと話す訳にはいかない。


「養子、ですか。事情はありそうですが、やすやすと踏み入るわけにはいかないでしょうね。ありがとうございました。…タクミさん、でしたよね?」

「あ、はい。こちらこそ、町まで連れて行っていただいてありがとうございます。…あの」

「ローヴキィ・パコールノスチです。家名は長いでしょう、上の名でも、省略した呼び方でも構いません。お好きなように」

「そ、それではローヴキィさんと。…あの、リィヴさんの事を会長と呼んでいますし、やっぱり新しい商会を立ち上げたんですよね?」

「はい。どうにか業績も好調で。今は大陸側と島嶼(とうしょ)部の間で取引を行うことや、島嶼部内での商売を中心に行っていくことになりましたが…まあ、船も少ないですからね。安定した現状維持と言った感じです」

「成程。でも、商売そのものが好調で、その先の方針も決まっているのならある程度安心ですね」


 商売については門外漢だから正しいのかは分からないけれど。


「まあ、ある程度は危険の少ない方を選んではいますからね。とはいえ、この場合の危険というのは大商会に吸収されない」

「少し話し過ぎだぞローヴキィ。そいつは…情報を悪用するような奴じゃないが、何も考えず話したりしかねない」

「そ、そんな事無いですよ…?」


 自重はできる筈だ。そんな思いを込めた視線をリィヴさんへと送るが、意に介した様子はない。

 と、そんな話をしているうちに町は目前となる。後ろを見ても皆の姿は無いので、もうとっくの昔に後退しているのだろう。

 ウエストポーチからギルドカードを取り出し、うっかり付着していた【小人鬼】の血を拭きとって、提示できるように準備する。ここに来るまで相当数の忌種を討伐してきたので、ウエストポーチは今にもはちきれんばかりである。

 門をくぐる直前で馬車は止まる。そのまま、少しずつ増えていた他の馬車と共に衛兵が調査を始めた。

 一部の大きな馬車はほとんど碌な調査も無く通過している。貴族関係なのだろうか?

 …いや、リィヴさんは忌々しそうにその馬車を睨んでいる事から考えると、どこか大きな商会の所有する馬車だという事だろう。信頼されているということか、それとも、賄賂か何かを送っているのか。実際の事は分からないが、こうして調査に時間がかかっている以上は、即通過できるというのは相当な特権だろう。

 賄賂を贈られているというのもほとんど引く可能性だとは思う。だって、あからさますぎるだろう?そんなに堂々と不正を働けるとは思えない。ならば、リィヴさんの視線にこもっているのは対抗心か。

 そうこうしているうちに、こちらの馬車へも衛兵が入ってくる。その衛兵にリィヴさんは何らかの札を渡す。すると、衛兵はこちらの中を見て、俺を見つめ首をかしげる。どうやら、商会員ではない俺が乗っていることを不審に思っているらしい。彼の切る鎧の装飾や、そもそも形式が違うあたりに外国へ来たという実感を感じながら、ギルドカードを差し出す。


「ん?王国の冒険者か。こんな遠くまでよく来たな、しかも、ここ以外の町には立ち寄らず」


 なんだか疑われている様な気がして、少しばかりリィヴさんへと視線で助けを求める。というより、本当の事を話して良いのかを判断してほしかった―――こういう事が自分で判断できないのはどうかと思うが。

 リィヴさんは軽く顎を前へと動かして返事に変えた。分かりづらいことこの上ないが、恐らくはそのままに言った方がいいという事だろう。


「彼は王国の、かの有名な大港湾町の住民です。どうやら船が難破したようで、例の森林の奥深くへと流れついたらしいんです。どうにかそこを脱出した所を、知り合いであるリィブ会長と合流。今に至るわけです」


 だが、俺が口を開く前にローヴキィさんが説明を終えてしまった。僅かに脚色されているのは確かだが、嘘というほどでは無く、説得力もなかなかに有ると思う。


「成程、そう言えばリィヴさんも王国出身でしたな。運が良かったようで。…いや、難破した時期は冬だった筈ですし、よく生きていたというべきですかね?冒険者としてもなかなか期待大だ」

「いやー、本当に大変でしたよ。命からがら森を抜けて、こうして知り合いに出会えたので一安心です」


 少しばかり演技を交えながら、衛兵と会話をする。どうやらリィヴさんの事は知っているらしい。彼だけが知っているのか、町全体で有名なのかまでは分からないが、きちんとした商売をつづけられているらしい。俺が言うような事では当然ないが、少し安心した。


「町に入る分に問題はありませんが、滞在するのであればギルドで手続きをお願いします」

「分かりました。ご丁寧にありがとうございます」

「これも仕事ですよ。それでは!」


 そう言って衛兵は外へと出ていく。

 馬車も再び動き出して、無事に町の中へと入った。


「僕たちはもう取引に向かう。こちらが若輩だから、先に待っていなければいくらなんでもまずいからな。お前はお前で上手くやれよ」

「はい、お世話になりました。何かあったら贔屓にさせてもらいます」

「…お前に贔屓にされた所で、そこまでの利益は見込めない気がするんだが」

「いえいえ、冒険者としてランクも上げていくつもりですよ」


『どうだか』と言った視線をリィヴさんから受け、その背後でローヴキィさんが頭を下げたのに合わせて俺もお辞儀する。

 頭を上げると、既にリィヴさん達は動き出していた。荷物も少量ながら既に下ろされている。何らかの取引に向かうのだろう。


「よし、俺もギルドに向かおう」


 しかし、そこでギルドの場所を忘れていたことに気が付く。何度でも失態を重ねてしまうことを反省しながら、衛兵を探して場所を聞こうと町を見回し…随分と景色が違うことに気が付く。


「おお…」


 町並みは白を基調とした石造り。王国よりも景観などは管理されているようにも思える。観光地なのだろうか?

 人々の服装も白っぽいものが多い。ロルナンに立っていた聖十神教会も白い建物だった事を考えれば、この国は白を多く使っているのだろう。聖教国という名前から考えて、清らかに思える色だから当然だろう。皆とも似合いそうだ。

 歩く人々は…王国とは違って、あまり騒いだりしていない。だが、暗いという訳では無く、あくまでも気風がそうさせているようである。このあたりも村の皆と通ずる所があるので、やはり皆も、壁に閉ざされる前はこの国の住民だったという事だろう。

 その視界の端に、武器や鎧を着た、しかし衛兵ではない人たちが入っていく大きな建物を見つける。間違いなく冒険者ギルドだ。


「よし、行こう」


 近づけば、ロルナンと同じような建物だと分かる。一度訪れたヒゼキヤのギルドとも似ているので、これからは他の町に行っても建物の形でギルドを見つけられそうだ。

 周りを歩く人も、少しずつ心地よい口数の多さになってきたと思う。ロルナンと比べればこれでもずっと静かだが、懐かしさを感じさせられる。

 扉を開けて、中へと入る。建物の外観は白を基調としているため、聖教国の町並みを全く乱さなかったが、中に入ると王国のギルドと全く同じだ。壁すら同じだということは、外から色か漆喰のような物を塗っているのだろう。

 受付の列へと並んで、少し周りを見回す。すると、少し離れた場所に依頼掲示板を発見できた。

 忌種の討伐依頼を受けるにしろ、何の依頼が出ているのかを覚えられるようになるまではあそこをよく使うことになるだろう。少し憂鬱になったが、ロルナンのそれと比べれば…いや、比べる事が失礼にあたるほど整頓されていることが分かる。あれならかなり楽だろう。

 そんな風に見覚えもある、しかし新鮮に見えるギルドの中を観察していると、何時の間にやら順番が回ってきた。


「次の方、どうぞ」

「王国から来た冒険者なんですが、何か手続きは必要ですか?」

「いえ、手続きというほどではありませんが、何かの依頼を受けるか達成することで、正式にこちらのギルドにも情報が入力されます。どちらからいらっしゃりましたか?」

「大港湾町ロルナンです」

「ああ、有名な町ですね。ここに来るまで、忌種を討伐したことは?」


 俺はギルドカードを見せながら、ウエストポ-チの中に有る【小人鬼】の耳を取り出す。


「討伐報酬はすぐにお渡しできます。…おや、Dランクなんですね。その年なら、かなり有望です」

「あはは…、ありがとうございます」


 今は魔術の威力も上がったから、うぬぼれを抜いても妥当だとは思う。しかし、Dランクへ上がったのは邪教の情報を知ったからという棚から牡丹餅出来状況だったため、素直には喜びきれなかったが。

 受付嬢さんはギルドの奥へと入っていく。例の狼型の忌種から切り取った耳も、しっかり討伐の証拠になった。有る程度の報酬は期待できる筈…何と言っても、壁の周りにいた忌種達まで全て討伐したのだから。

 ああ、これでロルナン時代の報酬もあれば皆を一度に町の中へと連れてくることもできただろうに。全てレイリの家においてきたんだよなぁ。


「報酬が多い事を期待しよう、うん」


 銅貨一枚分でも多い事を願いながら、俺は受付嬢さんの去った扉へ向けて手を合わせた。


 まだ先ですが、試験が近づくと更新速度が遅れるかとも思います。申し訳ありません。

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