幼なじみと黒魔術のおかげ(?)で異世界のオバケ屋敷で暮らすことになったわけだが当分は苦労しそうだ。
前回の大まかなあらすじ。
お化け屋敷には金塊がザックザックでした。
俺はビクビクしている忍を放って置いて、金塊の山を1時間ほどかけてリビングまで持ってきた。
1本が4000万、5本で2億、50本で20億……。
涎がとまらねぇ~♪うへへ~♪
50本のインゴットが俺の目の前に……♥
「し、幸せそうだね。ミコト」
「そりゃそうだろ。こんなに大量の金の塊が目の前にあれば誰だって笑いがとまらねぇよ♪」
「ボクは金塊よりもルビーとかサファイアとかの宝石の方がいいな」
「宝石は財産というよりもアクセサリーだろ」
「だよねぇ……だよねぇ?」
忍が上目遣いでこっちを見ている。
これはあれか?遠まわしに「買って♪」って言ってるのか?
そうだな。金塊がこんなにあるんだ。
少しくらいはこいつに宝石の1つや2つ買ってやっても良いかもしれない。
「だが断る!!」
「いやいやいや!何が!?ボクはまだ何も言ってないよね!?」
「どうせルビーのブローチだのサファイアのネックレスだのを買って来いって言いたいんだろ?」
「ち、違うよ……。か、買って欲しいなぁって……」
「90パーセント以上合ってるじゃねぇか!!」
「ほ、ほら。光り輝く宝石には魔よけの効果があるって何かの本で書いてあったからさ。こんなオバケ屋敷に住み続けるなら魔よけの1つや2つはないとさ……?」
「問題ないだろ。オカルトってのはありえな……」
『い』と言おうとしたけど、自分のみに起きている出来事が十分にオカルトだと言う事に気付いた。
「……そうだな、魔よけのお守りくらいは買っておこう」
「だよ!だよ!宝石までは欲しがらないけど、せめて魔よけのお守りは必須だよ!!」
どうやら本気で怖いらしい。
何も無い所でびびって失禁されても困るから買っておこう。
御札とかあるのかな?
「あ~、お腹すいてきたよ。ミコト、何かない?」
「何かって……このオバケ屋敷に何があるんだ?腐ったチーズでも探すか?」
「……え?…………え?」
状況が飲み込めないらしい。
まったく、バカだなぁ……。
「おいおい、こんな埃だらけの家に食べ物が残ってると思うか?保存食でもあれば良いけど食料庫みたいな都合の良い物はここには無い。つまり?」
「つ、つまり?」
俺が質問したと思ったらいつの間にか俺が質問されてたぜ。
何を言っているのかわからねぇと思うが俺も何が起きたのかわからねぇ。
いや、ただ聞き返されただけなんだが。
「夕飯抜きだ」
「…………え?なんだって?」
どうやら信じたくないらしい。
というか、そのセリフって実際に言われると非常に腹立たしいな。
「ちょ、ちょっと待ってよ。じゃあ何?2時間と30分もお馬でロデオして、3時間以上掃除して、ガイコツが倒れている隠し通路を往復したのにご飯抜き?オカシイじゃないか!!」
「お前は自業自得って言葉を知らないのか?」
「…………」
ぐうの音も出ないらしい。
仕方ない、この事態になるなんて夢にも思わないだろうがこいつのせいなのは間違いようが無い。だから、こいつにも責任を負ってもらわないと。
「裏庭の樹を食べて来い。存外美味いかもよ?」
「っなわけがないっしょ!頭オカシイんじゃないの!!」
逆ギレされた。
よほどイライラしているらしい。
腹の虫が二重の意味で騒ぎ出したようだ。
「保存食が無いんだから仕方ないだろ」
「ヤダー!! お腹空いたー!!」
遂には駄々をこね始めたぞ。
このバカ女め、お前が望んだんじゃねぇか。
異世界渡航なんてバカげたこと。
今の時間は分からないが、日はとっくに落ちて辺りは闇に染まっていた。仕方が無いので庭の樹の枝をへし折って燃やした。
電灯が無い世界ってこんなに暗いのか……。
「ミコト……芋とか無いの?」
「無いな、我慢しろ」
「ミコト、マシュマロ食べたい」
「そうか、我慢しろ。きっともう食べられないだろうからな」
「ミコト、肉焼こう。大丈夫、肉ならある」
「どこに?……まさか自分の肉を食べるつもりか?やめとけ、それは最終手段だ。1日くらい食べなくても大丈夫だ。ダイエットと思え」
「ダイエットねぇ……せめて水くらいは……」
「あっちに井戸があったぞ」
「井戸!?」
井戸の存在を知った忍が大急ぎで井戸の方へ走っていった。どうやら水で空腹を誤魔化すつもりらしい。水はカロリー0だから効果ないと思うけどな。腹持ちも悪そう。
あとバイ菌の危険があるから煮沸して殺菌した方が良いらしいけど、するつもりないな。
「ぇっぷ……ミコト、胃の中は満たされたけど空腹は続いてるよ……」
妊婦みたいに腹を膨らませた忍が俺に愚痴を言い出してきた。
「大変だな。俺のせいじゃない、お前のせいだ」
「気を紛らせたい……何かしようよ」
「いいぞ、暇だし」
「じゃあ……しりとりしようか」
忍の提案でしりとりすることになった。
「じゃあ最初は俺からな。『リス』」
「『スルメイカ』」
「『カブト虫』」
「し……『鹿肉』」
「『雲』」
「『桃』」
「『モス』(苔)」
「バーガー……」
じゃねぇだろ!!
かのハンバーガー屋さんはマウンテン・オーシャン・サンって意味らしいから、苔とか思うな!!
「あ、ごめんごめん。えっと……『素うどん』……あ、『ん』が付いちゃった」
ぎゅるるぅぅ~~。
俺達2人の腹の音が同時に鳴り響く。
「だぁーー!! なんでお前は食べ物ばっかりなんだよ!!
『し』がおかしいだろ!
『し』が!
『鹿』で良いじゃねぇか!!」
「だって……お腹空いたんだもん……」