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幼馴染の黒魔術に付き合ったら女にさせられた挙げ句、異世界に飛ばされてしまったのだが、なぜか諸悪の根源に説教されている。

 前回のあらすじ、

 男爵になれると思ったが、いろいろあってアン・ウィルバインことアン・ウィルバイン・リステシア・ヴィス・カオルーンの手の上だった。

 とりあえず男爵の爵位を貰う儀式だけやって屋敷に帰宅した。

「……なぁ?何がどうなればこんな展開になるのか誰か説明してくれないか?」

「だからボクは言ったんだ、断るべきだって」

 お前のは理由が違った気がするが?


「けど、良かったじゃないですか。アッチからは好かれているのですから」

「体目的だけどな……」

「けど、ご主人様はそういう展開を望まれていたのでは?」

「違う、こんなのは俺の願いじゃない……」

 そう、もっとこう……黒髪三つ編みメガネっ娘みたいなサブヒロイン的な少女を期待してました。

 家庭科の授業で作ったクッキーをクラスメイトにプレゼントするわけよ。

 でも男子に免疫ないから「こ、これ良かったら」と頬を染めながらクッキーを渡すのさ。

 そんな女子が居たら告白してましたね。玉砕だろうけど。

 夢見たいなぁ……。


「なにやら精神的に負けているようですね。物理的なら私に任せてもらえれば何とかできるのですが人間の精神を癒す術は人造人間ホムンクルスは習得しておりません」

心理療法サイコセラピーとかはないのか?」

「それは私の担当ではないです。申し訳ございません」

 チッ!使えない!

 アロマキャンドルくらい持ってろよ!

 と逆ギレする。



「というか縁談ってミコトは結婚するつもりだったの?ウィリアムじゃなかったら」

「ウィルバインですよ、お嬢様」

 パティが忍の間違いを指摘するが忍は「あ、うん、知ってる知ってる」と訂正するつもりはないらしい。

「とりあえず形だけは結婚して後は好き勝手に生きていこうかなぁと」

「最低な発想だね」

 政略結婚ってそういうモノじゃないの?

 だってあいつらは俺を拘束するために女を紹介したんじゃないのか?


「ご主人様、こういうことはあまり言いたくありませんが、だからあなたには恋人が居なかったのでは?」

「怒らせたいのかな?君は」

「無礼なのは承知しております。しかし、陛下自身がああ言っていたと言うことは本当にウィルバイン嬢はご主人様のことを気に入っていたように思います。公爵家の一人娘であり、そして女王陛下の姪ですよ?政略結婚の材料としてならこれ以上の駒はそうそうないかと」

「…………つまり……どういうことだ?」

「本気で結婚したかったのだと言っているのですよ」

「……マジで?」

「少なくとも『今は』そう思っているかと」

 『今は』か……。

 悪くない話だが、熱が冷めて他の女に浮気されたらどうなる?

 女に女を寝取られるってどんな気分よ?


「心配には値しません、マスター。あの猿達がマスターを苦しめるのなら縁談など考えないような目にあわせてやりますよ」

 また物騒なことを考えてるな、こいつ。

「具体的な案を聞こうか」

「まず、王城を制圧します」

 第一条件からとんでもない!

「次に王族を全員に復讐など考えないようにほどほどに調教します」

 調教!?

 あ……いや、ゴフンゴフン、何も想像なんてしてないですよ?

 ほ、ほんとだよ?赤い蝋燭とか想像してないよ?


「最後にそれなりの権力を貴族に渡し、マスターを国王にすれば万事解決です。雑事は私にお任せください。帝王学も心得ております」

 男爵から国王か……。

 それはそれで楽しくなさそうだな。

 人生はハードモードだから楽しいと言う。

 ゲームだって難しいから楽しいのだ。

 スーパーイージーモードじゃただのクソゲーだよ。

 しかし、現代では簡単の方が良いという風潮である。

 けど、人生がチートし放題の改造ツール使用可能だったら開始数年で退屈になるだろうな。

 人はこれを飽きと言う。

 サンドバッグを殴るだけの、Aボタン連打するだけのクソゲーに数年間ハマる人間って居るだろうか?


 高価な料理でも同じ物を毎日食べれば飽きるものだ。

 もしかしたら人は本能的に現状に満足しないようになっているのかもしれない。

 貧乏人は金を欲し、金持ちは金なんて要らないと言う。

 これを無い物ねだりと言う。

 つまり、人は完全な意味で幸せを手に入れられる人間なんて少数派なのかもしれない。

 結婚は人生の墓場と言われてるし。



「ちょっと良いかな?ミコト、君は別に彼女のことを恋愛的な意味で好いてない。ならなんでそういう話をする気になれるんだい?」

「この機会を失えば結婚はおろか男女交際すらできないからだ」

「それって一般的な考えかもしれないけど、どうよ?」

 一からの説明を要求する。


「長い話になるよ。ボクらの世界の愚民共は男女交際を善としている。交際相手の質や量こそが自身のステータスであり相手が居ないことは恥ずべきこととしている。けど、それは人間的だと思う?」

「思わない、というには情報量が少ないな」

「人間には理性がある。その理性によって人間は性的衝動を抑えることが出来てる。けど、その理性を無視して惰性で他人と、好きでもない赤の他人とそういう関係になる。これが動物的でないわけはない。性欲処理用の相手と開き直るならまだしも恋愛などと気持ちを誤魔化すのはおかしくない?好きでもないけど『付き合ってくれ』と言われただけで付き合うってのはどう考えても恋愛感情じゃない、性愛だよ」

 ……つまりラバー(恋人)ではなくセフレってか?


「そういうことだよ、特に下半身と思考回路が直結してる思春期男子ならなおさら。男子ってどのくらいからそういうのに興味持つものなの?」

「恋愛的な目覚め、つまり初恋は小学3年か4年くらいが多いんじゃないか?で性的な目覚めは小学6年の後期くらいじゃないか?」

「ってことは遅くとも中学生にもなれば精通も経験するってわけ?」

 生物学的には14歳くらいらしいがな。

「中学2年にもなれば第二次性徴でアダルトコンテンツに必死になってくると」

「全員とは言えないが9割9部はそうなる」


「となれば、そこで『モテたい』と思ってくる理由は?」

「異性にチヤホヤされたいという欲求とセックスしたいという欲求だろうな。けど」

「好きでもない相手とセックスするくらいなら風俗に行けばいいと思う」

 ごもっともだ。

 セックスするための関係ならそれは本当にセフレだな。

 最近はスマホの普及で未成年でもエロ動画を簡単に見れる時代だから小学生でもそういう知識を手に入れているマセガキとか多いらしい。

 国はそういうのの対策をしたほうが良いと思うぞ?

 エロマンガとかモザイクとかそういうのよりも。


「だいたい法律で18歳未満の性行為が禁止されてるのにそれを堂々と破ってる人間が多いことがオカシイと思うんだ」

「政府にも建前が必要だからな。赤信号と同じで無視しても通報されない限り捕まるわけじゃないからほとんどの人間が破る。皆がやってる普通の行為だから咎められる理由なんてない。咎めても仕方がない、そもそもキリがないって割り切り、性犯罪の被害者だけを守ろうとする」

 そして増えていく痴漢冤罪、あれを聞くたびに電車に乗りたくないって思う。

 そもそも往復に500円くらいかかる乗り物が人気な理由が俺には分からない。

 500円もあればそれなりの店で美味しい物が食べれるぞ?

 定期か?定期買うから別に良いのか?


「けど、それを平然と破る。モラルが存在しない所かモラルを破ることが普通になってしまう。これこそ本当に大変なことじゃないか?」

 お前が他人を愚民って言うのはそういう理由か。

「そうさ、『堕胎は人殺しだ!』なんて言ってるくせに動物みたいに性欲のままに性行為を行い自己陶酔する。そしてそれをコミュ力と言って評価して、20年くらい勉強に勤しんでいた人間には冷たく接する。ゴミみたいな奴が増え、そのゴミみたいな奴が社会を支え始めることでゴミがゴミを量産する。そしてゴミみたいな老人、所謂『老害』が健全な教育を妨害する。最近の公園は子供の声がうるさいって理由で遊具を撤去したり、遊ぶこと自体を禁止しめるそうな。そして中堅世代が若者を非難する。逃げ場がない、まるで飛車角落ちで王将を守る駒が歩と桂馬くらいの状態だよ」

 お前にしては変わった例えだな。


 飛車角落ちね、たしかにそうだ。

 頑張っていた人間には『頑張るのは当然』って言って頑張った度合いは無視する。

 度合いなんて測りようがないからって開き直って努力することを放棄して圧迫面接、そして『最近の若者は根性がない』と根性がない人間を雇っている見る目がない無能のくせに他人を一人前に非難したがる。

 考えが腐ってるよな、そりゃ不景気がなくならないって。

 日本は先進国って言う驕りを一度捨てて全てを整理するのが良いと思う。


 資本主義なら徹底的に資本主義を貫くべきなんじゃないか?

 下手に社会福祉を充実させようとするから悪くなるんじゃないか?

 せめて医療保険だけで良いと思うのだが?


 年金という謎のシステムの存在だけは理解できない。

 だいたい払った分が貰えなかったり、払った分以上に貰えるってどういう理論よ?

 それって誰かが得したり損したりしてるってことだろ?

 超高齢化社会の現代で年金が問題になってるのって根本的にそれを考えた奴がバカだってことだろ?違うか?たぶん違わないな。


 つまり俺はどうすれば良いと思う?

 この異世界でどう生きていくのが『たった一つの冴えたやり方』ってヤツなのか、答えは簡単だ。


 俺は、俺が楽しいと思う生き方を他人に咎められない限り行っていけばいいのだ!!

 他人など知ったことか!

 俺のことを簡単に嫌いになるヤツとは仲良くなれるわけがない、そう割り切って俺は生きていけば良いだけである!




 翌日、毎度のようにウィルバイン嬢がやってくる。

「おはようございます!ミコト様」

「あぁ、おはよう」

 もはや、日常茶飯事になってしまっている。

 慣れって怖い。


「先日のお返事について……」

「あぁ、断る。悪かったな、女王への嫌がらせみたいな使いかたして」

「………………はぃ?」

 即答した俺の返事が理解できなかったのか?

 それとも自分が喋っていた最中だったから聞き取れなかったのか?

「聞こえなかった?お断りします、と言ったんだ」

「な、なぜ?」

 俺がお前と結婚するメリットよりもデメリットの方が多そうだから。

 とデリカシーがない発言はないな。

「簡単ですよ、ウィルバインさん。ミコトは君と結婚したくないから結婚しないんだよ」

「もっとオブラートに包んでくれませんか!」

 結婚したくないから結婚しないってのは的確だと思うけど?

 あ、というかウィルバイン嬢の前だとちゃんとウィルバインって呼ぶようになったんだな。


「じゃ、じゃあせめてミコト様。『ウィルバイン嬢』ではなく『アン』と呼んではいただけませんか?」

「アン嬢?」

 この呼び方だと安城さんみたいだな。

「伯母上同様にアンと呼び捨てでお願いします」

「アン、まぁ今日の所はその旨を女王陛下に伝えてください、遊びに来たい時は自由に来てくれて良いから」

「分かりました、では今日の所はこれで」

 美しく会釈して帰っていった。

 意外だな、てっきりもうちょっと粘ると思ったがあっさりだ。

 いや、彼女のことはそれなりに理解している。

 諦めてないな、むしろここで無様を晒すよりも素直に従った方が良い、そう考えているのではないだろうか?


「……あの人、暇なのかな?」

 世界一の暇人と言っても過言でもない忍が他人を暇人扱いしていた。

「お前よりは忙しいと思うが、それなりに暇なんじゃないか?」

 往復数時間はかかるから暇なのは間違いないだろう。

「なんか酷くない?」

「事実だろ?」

「ボクだって忙しいよ?マンガ読んだり、ゲームやったり、ミドリちゃんの世話したり」

 充実してんな、俺よりも数倍。

「というかなんでお前がマンガとかゲームとか楽しめるんだ?」

「そりゃもちろん、ミコトのを勝手に借りてる」

 借りるな、ボケ!!


 だいたい俺のマンガって今この屋敷にあるのってエロマンガじゃね?

 エロマンガを愛読してるのか?

 どんな発想だ!!!?

 こんなバカ女と同居ってどう考えても間違っている!!

 [第一部完、第二部に続く]

※第二部は2014年8月2日0時頃に投稿予定

※第二部は投稿済みです。シリーズ管理などをご利用ください

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