人造人間のせいで金髪美人が酷い目に合いすぎてちょっと心が痛い
前回のあらすじ、
悪夢に犯される。
パティの好感度がドンドン下がっていくが、あいつとは仕事上での関係しかないので別に構わない。
あいつはクビにされることを怖がってたから自主的に辞める事はないだろう。
しかし……気分が悪い……。
今日はベッドの上でグダグダしておこうかな?
俺はスマホを取り出してダナーに連絡を取る。
因みに電話会社が存在しないこの異世界でなぜ電話ができるかは俺にも分からない。
ダナーにスマホを弄らせたら妙なアプリを中に入れられ、ダナーとトランシーバーみたいな感じでボイスチャットできるようになったわけである。
原理なんて工学部でない俺に分かるわけがないが、どうやらダナーは機械を弄る能力も高いらしい。
もしかしたら体内にナノマシンを入れているのかもしれない。
今までの錬金術なんかの超能力もナノマシンの力とすれば納得である。
「ダナー、ちょっと良いか?」
「勿論です、マスター。何か用ですか?」
「今日は気分が悪いから1日部屋を出ないと思う。パティが朝食を用意しているなら適当に処分しておいてくれ。あと、誰も俺の部屋に入れるな。いいか?『誰も』な」
「任務了解、復唱しますか?」
「いや大丈夫だ」
「他に何かありますか?」
「特にないな」
「ではお大事に、マスター。何かあったらまた遠慮なくお申し付けください」
通信が終わる。
パティと違ってこっちの方がちゃんとメイドっぽい。
ちなみにダナーは『メイド』という文化が理解できているようで、メイドと呼んだらかつてのように怒られた。彼女には相当なプライドが存在するようである。
◇
「パティ?ミコトはどうしたの?」
パティが見てはいけないモノを見てしまったと言う悲しい顔をしてリビングに入ってきた。
その上、ミコトは付いて来てない。
「あぁ~、お取り込み中だったので……」
「ふぅん?」
何があったのだろうか?
全裸で三点倒立でもしてたのかな?
ミコトの部屋に入った時に寝ぼけてそんな感じの行為をしてた時はパティと同じようなリアクションを取ったよ。
「忍お嬢様、マスターことミコト様は今日は部屋で療養するとのことで部屋には誰も入るなとおっしゃっています」
「ん?気分でも悪いの?」
ありゃりゃ、バカは風引かないって言うのも嘘なのかな?
「そう言っておられます。なのでマスターの部屋には侵入しないでくださいね?もちろん上司パティも」
「オーケィ」
無論、空返事である。
「心配しなくても入りませんよ、仕事以外では」
パティは入りたくないらしい。
今の好感度はかなり低いんだな……。
「ミコト様!今日もやって参りました!」
ウィルバインだのウィリアムだのどっちか忘れたあの煩い女が入ってきた。
ダナーがゴム弾をいつものように発射したのだけど、ウィリアムは予想できていたのか避けた。
「あら?ミコト様は?」
「マスターなら自室で寝込んでおられます」
「まぁ!病気ですか!?大変ですわ、看病しないと」
おかしい、ダナーがなぜかウィリアムの奇行を放置している。
通常ならダナーがミコトにとっての害を放置するわけない、どういうこと?
怪しく思いウィリアムの後をつけてみたが、彼女がミコトの部屋のドアノブを触った瞬間。
「ビィィガァィァア!!!!」
何やら酷い声を上げながら倒れた。
倒れたウィリアムを道路で車に轢かれて死んだ野良猫を処分するかのように摘んで玄関の外に持っていく。
「何したの?」
「マスターの部屋のドアノブにマスター以外の人間が触った瞬間に高圧電流が流れるように細工をしておきました。これでマスターの部屋には『誰も』入ることは出来ません、マスター以外は」
電磁トラップ!?
危ない、ウィリアムが不法侵入して来なかったらボクが餌食になっていたかも。
「……ダナー、1つ良いかな?」
「なんでしょう?」
「電磁トラップを仕掛けるのは構わない、それがミコトの意向なら尚更。けど、住民であるボク達にくらいそれを教えても良いんじゃないかな?」
「しかし、マスターは『誰も俺の部屋に入れるな』と言っていました。まさか、忍お嬢様は入るつもりではありませんよね?」
「もちろん」
入るつもりだったよ。
「では問題ないように思われますが」
「しかし、ドアノブに触れることと部屋に入ることはイコールじゃない。その辺りはどうかな?」
「……屁理屈のように聞こえますが、その通りですね。以後善処いたします」
うむ、よろしい。
これからはミコトの部屋に侵入するときは高品質の絶縁体のゴム手袋を着けなきゃ。
「何をするんですか!?」
玄関に捨てられたはずのウィリアムさんがまたリビングに入ってくる。
彼女の髪の毛が電気のせいで大変なことになっているが彼女自身はそれが理解できているのだろうか?
つうか、自滅したようにしか見えなかったけど?
「無意味、愚劣な原住民には理解できないと判断したため説明は不毛である」
「この下女風情が!」
舌打ちにも近い捨て台詞で愚痴る。
その一言に冷たく激怒しながらダナーがウィリアムの肩を曲がっちゃダメな方向に曲げた。
「グギギィギィギ!!イタイ!イタイイタイイタイ!!ギャァアアア!!」
うわぁ…………。あれは痛い……。
関節技ってのは見た目は地味だけど攻撃力は最強クラスだよね。
格ゲーでもレバー一回転の投げ技の火力は高いし。
「スミマセンでした!!失言でした!!だから許してください!!」
マジ懇願だ……。
ここまでマジだと哀れと言うよりも引くよね……。
「ダナー、そのくらいで許してあげようよ。さすがにこれ以上騒がれたらミコトが怒るかもよ?」
「は!?申し訳ありません。取り乱しました」
ダナーでも取り乱すのか……そういえばミコトがダナーは見た目と言動以上に人間らしいから注意が必要だって言ってたっけ?
「……すっ……」
ダナーに解放されたウィリアムさんの目が充血しているのか赤く染まっている。
ここまですると良心が痛む。
「ウィルバイン様、遅くなりましたがもてなしの紅茶になります」
パティが沈黙の空間を破壊するように涙目のウィルバインさんにお茶と茶菓子を提供する。
「……いただきますわ……」
グッジョブ、このまま泣かれたままだとまるでいじめっ子みたいで気分が悪いよ。
「……ミコト様が気分が悪いのなら今日はこの辺りで失礼します。お邪魔致しました」
「帰り道はお気をつけて」
パティはこういう所が一流だから助かる。
ダナーだと『へっ、帰れ!ドサンピン!!』と中指を立てて追い出しそう。
◇
「姫様、大丈夫ですか?」
「正直、心が折れました」
そういえば伯母上が『私と互角以上に闘える従者がいる』って言ってましたけれどおそらくあの下女のことなのでしょうね……。
しかし、あのえげつない痛みを感じる技は何なのかしら?
あれも異世界の技術の1つ?
「そういえば本命は済ませたのですか?」
「本命?」
「お忘れだったのですか?あの異世界人に爵位を与えるという話があったではないですか?」
あぁ、そういえばそうでしたわ。
ミコト様に爵位を……ん?これって上手く行けば……。




