幼なじみと黒魔術で異世界にやってきたけど、この世界は予想以上に大変そう
前回までのあらすじ。
幼馴染の男の子、ミコトが何故か女の子になっちゃった上に一緒に異世界にやってきちゃった。なので異世界で生活していくわけだけど女王様がくれた建物は廃墟同然のお化け屋敷なのでした。
ミコトが庭の樹にもたれ掛かって寝てしまった。
つまりこのお化け屋敷はボクが一人で掃除をしないといけないらしい。
……やだなぁ……。
でも異世界に行くことを願ったのはボクだし、これくらいはやらないとね。
……はぁ……溜息しか出てこないよ……。
……従順なメイドさん欲しい。
とりあえず玄関の埃から掃くことにしようかな。
ボクは掃除用具入れから魔女が持ってそうな箒を手に取り掃いた。
砂埃が大量に飛び散る。
けほけほっ……ま、マスクが欲しい……。
玄関の次は廊下、リビング、2階への階段とどんどん掃いていったのだけど疲れるね……。
掃除機が欲しい……。
お掃除ロボットが欲しいよ……。
ここでボクは自分がとんでもなく不便な世界に来てしてしまったと理解できた。異世界ってもっと都合良く便利グッズが2,3手に入るものじゃないの……?
少し掃き掃除しただけでもう3時間も経ってしまってる。
ふぇぇ……。現代っ子にはちょっと大変すぎるよぉ……。
ちょっと休憩してみると壁の汚れが微妙に薄い感じがする部分を発見した。
何だろうかと思い触れてみるとギギィっと動く。
おやや?隠し通路?
隠し扉の近くに用意されていたマッチと松明を使って通路を用心して進んでみる。
もしかしたらモンスターとか居るかもしれないから。
こわいなぁ……この世界ってそういうの居るのかな?
居ないで欲しい……。
1人じゃ何もできない臆病者です。はい。
数分進むと妙に臭い、本能が拒絶している。
そして何か枝のようなものを踏んだことに気づいた。
何かと思って松明を使って足元を明るくして確認すると白骨死体だった。
ガイコツですよ、ガイコツ。
ボクは極限の恐怖を感じてしまい絶叫する。
「きゃぁぁああーーーーー!!!!」
全力で逆走した。
ちょっと漏らししちゃったけどそんなことなんて気にせずに全力ダッシュ。
慌てて屋敷を飛び出して庭で寝ているミコトに泣きついた。
「ミコト!!ミコト!!この屋敷はヤバイ!!ヤバイよ!!」
「……ぁ?何だ?もう掃除終わったのか?お疲れさま」
「違う違う!そんなことしてる暇ないって!」
「……何だよ、掃除終わってないならさっさと掃除終わらせろ。終わらなくても良いけど後5時間くらいは寝かせろ」
「違うんだ!し、ししししし死体が……!死体が転がってるんだよ」
「……は?死体?」
「そそそ、そう!死体だよ!白骨死体だよ!隠し通路に白骨死体があったんだよ!!ボク、ホントに怖かったんだよ!なのになんで二度寝しようとするの!?」
「……なんだ?お前チビったのか?」
「うぐぐ……」
「あちゃちゃ、マジでチビっちゃったのね……」
しょうがないなぁー、と言う感じで欠伸をしながらようやく起きてくれた。こういう時に頼りになるからミコトは流石だ。
「で?何処に死体があったんだ?」
隠し通路に入ったミコトがボクに確認してきた。
「こ、ここここのずうっと向こうだよ。3分くらい歩いた先にある」
「3分もあるのかよ……。どうして偉い奴ってバカデカくしたがるんだろうかね?バカと煙は高いところが好きってのと同じなのかな?」
「どうでも良いよ!そんなことよりここから早く逃げようよ!なんでガイコツを探そうとしてるの!?」
「さっきは『お化けでも出てきそう』って言ってたくせに……」
「そ、そりゃ出ると思ってなかったからだよ!出ると分かってたらあんなこと言わないに決まってるじゃないか!」
マジ泣きである。
もはや感情を爆発させるだけ。
いや、だって本物の死体を見て平常を保っている人間の方が頭のネジが飛んでるんじゃない?
「お前、ここから逃げてこれからどうやって生きていくつもりなんだ?折角、女王の厚意でこんな屋敷貰えたんだ。無駄には出来ないだろ?」
「そ、そそそれは……」
言葉に詰まる。何もいえない。
野宿は嫌だ。激しく嫌だ。
けど、お化け屋敷も嫌だ。
「そんなに分かりやすく狼狽するなよ。大丈夫だ。ガイコツは生者じゃないから襲ってこないって」
ミコトは能天気な感じで隠し通路を歩いていく。
……頼もしいけど、できることなら安全が保障されている遊園地でこういう展開になりたかったなぁ……。
遊園地は楽しい。遊園地に行きたい。
……ダメだ。今は完全にダメなモードだ。
ボクはこの死に満ちた空間が吐き気がするほど不愉快だったからミコトの腕にしがみ付く。
「はぁ……」
なぜかミコトが溜息を吐いた。
「な、なに……?」
「なんでこんな甘い展開になるのにお前なのかね……。ちっとも良い空気にならない、興奮しない俺も悪いのかもしれないが、非常に残念だ」
「ちょっと!!ボクも女の子なんだよ!そういうデリカシーの無い発言は……」
「おっ、これが白骨死体か」
「!!!?」
ミコトがガイコツを屈んで観察しだし、ガイコツに気付いたボクは無様に尻餅をついてしまう。
いや、なんでそんなにガイコツを見ても動じないの!?
頭オカシイんじゃないの!?
「あぁ……やっぱりそういうこと。大丈夫、やっぱりこの隠し通路は安全だ」
「な、ななんあんあ何言ってるの!?分かるように言ってよ!」
「お前は勘違いしている。おそらくこれは白骨死体じゃなくてただの焼死体だ。肉が灰にまるまで燃やされた焼死体だな」
えっと……どゆこと?
「俺の推理はこの屋敷の前の住人か誰かが人を焼殺した際にこの隠し通路に捨てたってとこか?それ以上は素人の俺には分からないし、そもそもこの推理が合ってるかすら分からないけど」
「だ、だとして、だからどうしたの?その推理が当たっていたとして」
「どうもしない。少なくともここには化物は居ないと思う」
と言ってミコトは立ち上がり隠し通路を進んでいった。
……え?まだここ進んでくの?
なんで男の子ってこういうのを探索したがるの?
……もう引き返そうよ。
ガイコツを見つけてから数分歩くとやっと行き止まりになった。
も、もう良いじゃん?
もう帰ろうよ。もうこの世界やだよぉ……。
ここは異世界ですか?いいえ、地獄です。
「……なんかつまらないな。もっとこう……お宝はないのか?期待はずれだな」
じゃ、じゃあ、もう帰ろうか?
と言いたかったけど、ミコトは満足してないらしく適当に物色し始めた。
なんで!?なんでそんなに頑張るの!? だから帰ろうよ!
教えてよ、ミコト。
ボク後何回、同じようなセリフを言えばいいの!!
「あ?なんだこれ?」
何か巨大な物に被せているボロボロの風呂敷っぽいものをミコトは見つけたようでそれをポイっと捲った。その巨大な物の正体は大量の金塊だった。
「インゴット!!」
金色に光り輝くそれにミコトが飛びついた。
「金の延べ棒がひぃふぅみぃ……うひょ~♪たまんねぇ~♪延べ棒1つで4000万円くらいだろ?
それがひぃふぅみぃ……ヒャッホー!サイコーだぜ!」
金塊を見て狂乱歓喜しだした。
……ミコト?もしかしてこの隠し通路にやってきたのはボクが泣いてたからじゃなくてこういうのを期待してたから?
これがボクの親友か……。
この程度の友情がボクらの友情か……。
うん、知ってた知ってた。
「見ろよ、忍!これだけあれば満足な生活が出来るかもだぞ!もしかしたら生涯安泰かも!!」
「よ、良かったね。こういうのなんて言うのかな?『棚から牡丹餅』?」
「いや、これは不幸中の幸いだろ……」
冷めた顔で返された……。
どうやらミコトにとってはこの展開はまだまだ不幸らしい。
いや、ボクもこんな世界から帰りたくなってきたよ……。
なんで異世界渡航なんてやっちゃったんだろうか……。
ここに焼死体が隠されていたってことは「いわくつき物件」ってことだよね?
ねぇ?そんな屋敷に住むの?
ごめん、無理……泣きたい……。
ぜっっったいに!お化けとか出ないで!!
どうも、作者の田野中小春です。
この作品で『小説家になろう』に投稿した作品も4作品目になってます。
この作品はノリと勢いで作り始めたため展開が非常に遅い仕様となっております。仕様です。仕様なのです。誰がなんと言おうとも仕様なのです。
そろそろ準レギュラーを登場させたいとは思っていますがなかなか上手くいかないようですね。現在の願いは「表現力が欲しい」。
(あ、女王様は準レギュラーではありませんよ?予定ですが)
他の投稿作品とベクトルが違うため比較できませんが、それらよりは人気が出てきているようです。お気に入り登録が毎日増えていっているのですが、評価はまだ1件のみ……。欲が出てくると評価されたいという欲求が出てきますね。
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