幼なじみの黒魔術のおかげで異世界にやって来たが、古代人の黒魔術のおかげで俺はグッドエンドを迎えられそうだ。後編
前回のあらすじ、
未知のモンスターが生息している古代遺跡から脱出しホテルに帰還する。
「ダナー、お前はこれから部屋から出てこの部屋に入ろうとしてきた奴をこの部屋に入らないように警備していろ」
「了解」
「あ、あとこの部屋の会話が聞こえてきても無視するか忘れろ」
「了解」
ダナーは俺の指示をちゃんと聞いて部屋を出て行った。
ここまで言うとおりだと逆に気持ち悪いな。
いつも「えぇ~?」とか「不愉快ですがご随意のままに」とか言われてるからな。
……あれ?俺の人生って酷くね?
というよりも女ってこんなに酷い生き物なの?
そりゃ独身を貫こうと思う男が増えるわ。
俺だって相手が居ないから恋に恋してるけど、女全員が全員忍みたいな変人ばっかりと悟ってしまったらきっとホモと思われるくらいに女に興味が無くなっていたのかもしれない。
その展開だけは回避できてよかった。
ミシェル、愛してるぜ。
「というわけで作戦会議である」
「唐突だね」
「唐突ですね」
(楽しそうだね)
俺のセリフに忍、パティ、ミシェルが同様の感想を述べる。
はて、なぜだろうか?
デジャビュった。
まぁいい、細かいことは置いておこう。
とりあえず2人には俺達があの遺跡でどんな目にあったかを知ってもらう。
「ず、随分と酷い目にあったようですね……」
(幽霊のわたしが言うのはおかしいかもだけど、正直信じられないよ)
まぁ、予想通りの反応だ。
特にパティは信じてないっぽいがさっきのアレがあるから信じてくれるのも時間の問題だろう。
「ところでミコト、何を話し合うの?」
「俺が、いや俺達がこの世界に勝つための作戦についてだ」
俺の言葉を聞いた3人が首を傾けて???と疑問符を頭の上に作っていた。
ミシェルの方のかわいらしさは異常だ。カメラがないのが悔やまれる。
BP?あ、問題外です。蚊帳の外って感じ。
「ご主人様、もう少し理解できるように言ってもらえると有難いのですが?」
仕方ないな、1から説明してやる。
「俺はこの世界が嫌いだ。電気も嗜好品もない不便な世界、忍のせいで向こうの世界の家族や友人と無理矢理別れてしまった(が、ぶっちゃけ未練はない)それを除いても奴隷のように女王にこき使われるし、飯は美味いがレパートリーは少ないし、移動手段はサンダーボルト(馬)くらいだから飼育を強いられるし」
「サンダーボルトの世話は私の仕事ではありませんか……」
「ダメだよ、パティ。揚げ足取りしちゃ。こういう時の男には言わせたいだけ言わせて上げるの。で、言いたいことを言い終わった後で理詰めで責めるんだ」
忍、お前は理詰めなんてできるのか?それに驚きなんだが?
「だがしかし、俺達は手に入れた。この世界で神にもなれそうな力を。錬金術という究極的な技術を」
(言い方がまるで御伽噺の魔王さまだね)
「ホントホント、極悪非道だ」
こいつらは黙ってくれないのかね?特に忍。
萎えてきたな、結論だけ述べるか。聴衆も退屈そうだし。
「ようするにだ、俺達はこの国で永遠の絶頂を手に入れられるんだよ」
「ではさっさと手に入れれば良いではありませんか?」
パティがごもっともなことを言って来た。
「しかし、この絶頂を保つには女王達にこの錬金術の存在をバレてはいけない、バレた場合は戦争だ」
ダナーが居るから真正面からは殺されないとしても屋敷に火炎瓶とかを投げ込まれても困る。
(じゃあどうするの?)
「それを考えようってわけさ」
ミシェルの質問に答える。
「とりあえず金を手に入れることが先決だ。ミシェル、貴族様ってのはだいたいどれくらい持ってるも飲んだ?」
(パパの財産は50億ダラーくらいだと記憶してるけど?)
…………50億……?
俺が必死になってエロ公爵から3000万も奪ったのに貴族様はその100倍以上の財産を持ってるのか?貴族主義って最悪だな。民主主義で良かった。
しかし、どうだ?
1億ダラーも手に入れれば勝てると思ったが(冷静になればクリストフォード家の埋蔵金の1割が1億なんだよな)50億ってどのくらいだ?
えっと、金の延べ棒6本で1億だから6×50で300本必要なわけだ。
延べ棒は10日で1本作れるわけだから300本作るには3000日、つまり約8年。
……なんか短いような気がするな、日本なら40年近く働かなくちゃいけないから。
けれど8年後に貴族1人程度の収入が手に入る。
8年でたった1人分だ。
俺の人生が80歳で終わりだとしても残り60年でたった7人か8人分程度。
全然足りない……。
女王にギャフンと言わせるのは難しい。
俺はあのボンクラババァに「ぐぬぬ……」と言わせたいだけなのだ。
やっぱり勝つための手段を選んでる余裕はないのか?
「お金が必要ならば事業を始めてはどうでしょうか?」
パティが意外なことを言い出した。
「貴族様たちは何も生まれた時から貴族になることが出来たわけではありません。皆、なんらかの成功をした故に現在の地位を手に入れました。それはあのカオルーン公爵も例外ではありません」
「ほぅ……?つまり仕事を始めて金を民衆から搾取してしまえと?」
「言い方が悪いですがそうなります」
「けどさ、パティ。この国の平均年収は100万ダラーでしょ?庶民相手に何かやってもダメだし、ミコトは貴族達向けの商売をするつもりはないと思うよ?」
パティと俺の会話に忍が割り込んだ。
確かに貴族相手の商売をするのは気が引ける。
かといって民衆は金を持っていない。
……民衆?そうか!民衆だ!!
「民衆が金を手に入れられれば良いんだ!」
「は?どういうこと?」
俺の閃きに忍が聞き返す。
いいだろう、この天才の考えを教えてやる。
「この世界は物資等の大量生産がまだ可能じゃない、洋服も食料も。だが、俺達の世界はテレビで紹介するくらい機械機械で便利になってきている。ならばどうする?」
「量産しやすいような機械を庶民に売りつけるの?」
「その通りだ、ダナーは銃を大量に持っていた。これはおそらく3Dプリンターの上位互換的な物を持っているのだろう。ならば便利な機械やその他の便利グッズを作らせて民衆に格安で売り付ければ俺達も楽になるかもしれない。食料問題と同時に金が手に入る。これで遊んで暮らしていけるぞ」
出世払いとかにすれば買ってくれる人も多いかもしれない。
それで十分だ、すぐに利益を求めるからダメなんだ。
よく言うだろ?『果報は寝て待て』とか『千里の道も一歩から』とか『塵も積もれば山となる』とか。
「ふふふ、民衆が金を手に入れれば相対的に貴族の権利も小さくなるかもしれない。そうなれば民衆から支持を手に入れた俺がこれまた相対的に権利が大きくなる。権利だけでなく資産も大きくなる。一石二鳥じゃないか。そうなれば俺は勝てる、女王にぎゃふんと言わせられる……。くっくっく、待っていろよ。最後に笑うのはこのミコト様よ」
(悪役だね)
「悪役ですね」
「こりゃバッドエンドになっちゃうかもね」
ミシェル、パティ、忍が三者三様の感想を述べる。
バッドエンド?なるわけないだろ。
こりゃグッドエンドルートさ。
ハッピーエンドにはならない、俺が男に戻れない限り。




