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まさかここで我が黒魔術師の幼馴染が真価を発揮するなんて思わなかった…その壱

 前回のあらすじ、

 俺と忍も調査に加わる。

(もうあらすじ要らなくない?)

 ホテルから遺跡までは特別なことなどなかったので遺跡から物語を始めよう。


「さて、じゃあ行こうか!」

 などと言って忍が隊列を無視して我が道を突っ切ろうとしていた。

「ちょい待て、バカ」

 襟元を掴んで静止する。

「ぎゅぇ!?」

 何やら変な声を出してもがき苦しんでいる。

 滑稽、滑稽。


「なにするの!?」

「むしろお前がなんだ?なぜ1人で行動しようとしてる?今回はお前が一番重要なのになんで」

「え?なんでって……あれ?なんで皆さんそっちに行ってるの?」

 なんかムカついたので頭を軽く殴る。


「痛い!」

「もう良い、お前が方向音痴だってことは知ってるから対策は考える」

 と言い、用意していた犬用の首輪とリードを忍につけた。


「ミコト、なんでボクにこんなのを付けるの?というかなんでこんなの用意してるの?」

「お前が迷子にならないように以前から用意していたからだ。これだけで2つの疑問は解消するな」

「ボクはこういうプレイは許容範囲外なんだけど?」

「これはプレイじゃないから我慢しろ」

「そうか、イヤだって言ってる女の子に無理矢理やるのがミコトの趣味なんだ」

「……もうそれで良いから行くぞ」

 リードを強引に引っ張り、忍を物理的に移動させる。

「ぅぐゅ~、こ、これ意外に苦しいんだけど……」

 そんなことを言っているが知らない。

 興味がない、お前に振り回される展開だけは勘弁だ。


 忍に俺の後ろをただ付いて来させ、俺は調査隊の最後尾で歩く。

 しかし、未開の地だけあって草が邪魔だ。

 そんな雑草を先頭の人たちが刈ってくれる。

 移動が楽で便利だ。仕事熱心な調査員に拍手したいね。



「ドルルルルルゥゥゥゥゥーーーー!!!」

 昨日聞いた強烈な咆哮がまた耳を貫く。

 上空を見上げてみるとバカデカい怪鳥が飛んでいた。

 え?何アレ?プテラノドンくらい大きくないですか?

 おまけにダチョウみたいに羽毛まみれで見るからにキモイ。

 巨大な始祖鳥って感じ?


 鳥はインコとかのような小鳥以外無理なんだよな。

 インコかわいいよインコ。


 怪鳥は俺達人間を無視して咆哮だけで飛び去っていった。

「……し、忍さんや、あれは何なんだろうかね?」

「……さぁねぇ……とりあえずRPGによくある聖水か何かないのかな?」

「有ったらなぁ……お前こそ、そういうエンカウント率を下げるような黒魔術とかはないのか?こういう時こそお前のダメステータスくらい役に立てろよ」

「そんな便利な魔術があるならボクだって教えて欲しいよ。真夏の虫さされがなくなるだけでも良いからさ」

 虫さされがなくなる魔術か……。

 マラリア対策に編み出されてもおかしくないな。

 日本なら蚊取り線香があるからそんなの要らないだろうけど。



「ところで、ミコト。調査隊の人たちとはぐれてるみたいだけど良いの?」

「は?」

 忍の言葉を確認すると、本当に調査隊の人間とはぐれていた。


「どうしようか?」

「どうしよっか?」

 絶体絶命。

 どうすんの俺?どうすんの?


 忍の首輪を外して俺はとりあえず泣きたくなった。

「ミコト、とりあえず狼煙でも上げない?」

「ナイスアイデアだ!」

 俺はそれを採用するために森の中に向かおうとするのだが、なぜか忍は俺の後を付いてこずに謎の方へ歩いていた。


「お、おい!?何処へ向かっているんだ?」

「え?あ、あれ?なんでミコトはそっちに居るの?」

 今日のこいつはいつも以上に頭がおかしいらしい。風邪でも引いてるのか?と思いデコを触るが別に平常に思われる。


「お前、なんかオカシイぞ?大丈夫か?」

「外との気温差で気分が悪くなったのかもしれない……でも、なんかこの遺跡って変じゃない?」

「全てが変だと思うがな。古代の怪鳥が飛んでて怖いし」

「やっぱりここはボクの予想通り古代の世界が進化せずにそのまま存在してるんだよ」

「やめろって、その理論なら恐竜とか居てもおかしくないから」


「ギョギョギョギョェワーーーー!!!!」

 また昨日聞いた未知の生物の咆哮が聞こえてくる。

 先ほどの怪鳥にビビったため本能的に逃げる。

 声の主がどんな生物なのかと思い、見てみると生物図鑑には載っていないような形容しがたい形状の魔獣がそこには居た。


 俺の貧困な語彙で頑張って説明すると、その肌は馬や牛のような革で覆われていて、ティラノサウルスのような二足歩行、そしてオオサンショウウオのように妙な粘液を体表から出している。ダメ押しに頭から巨大な角が生えていた。


 その魔獣としか思えない化け物を俺は呼吸を止めて見過ごしていた。

 なんだったのだろうか?アレは……。

 先日のカオルーン公爵とのポーカーなんかに比べたらこの状況は命の危険が非常に強い。

 狼煙?そんなものを使えばあの化け物に見つかるかもしれない。

 調査隊の人たちは生きてるのだろうか?生きてると信じよう。


「忍、とりあえずここから逃げよう」

「逃げるって遺跡の外まで?」

「それは調査隊と合流できないと確信した時だ。とりあえず安全そうな洞窟か何か、あんな化け物が居なさそうな所へ行こう」

「OK、異論はないよ」



 先程の化け物から逃げ、俺と忍は都合良く近くに存在した洞窟内に逃げ込んだ。

 助かった……。

 しかし、油断はできない。

 この洞窟にも化け物が住み着いているかもしれない。


 警戒している俺を無視して忍が洞窟の中に進もうとしていた。

「ちょい待て、お前には学習能力がないのか?なぜ直進したがる?」

「え?むしろなんでミコトは進まないの?洞窟に入ったのはその場しのぎなの?」

「そうじゃないが洞窟が安全な保証がどこにある?少しは危険予知しろよ」

「でもここには生物は居ないと思うよ?」

「そう思う根拠は?」


 俺の質問を聞いた忍は返答をせず、壁をペタペタと触りだし、土を手で払った。

 すると、どうだろうか。そこには真っ黒の謎の物質が露出してきた。


「これじゃ不十分かな?」

「残念ながら不十分だ、この洞窟が遺跡外部と同様の超素材で作られたとして危険がない理由にはならないだろ」

「けど、外よりは安全じゃない?」

 確かに一理ある。

 あんな化け物が闊歩している外よりも人が住んでたかもしれない洞窟の方がマシだろう。


「わかった、だが注意しろよ?」

「もちろん、ボクだって死にたくはないよ」


 持ってきたマッチで拾った木の棒に火を灯し内部を進んでいく。

 忍の予想が当たったのか生物らしきモノはおらず、おまけに死骸すら見当たらない。どうやら生物は全く存在していないようだ。安心安全。


 やがて行き止まりにあたる。

 この洞窟には出口が1つしかないらしい。


 俺が壁にもたれかかり休憩しようとするが、忍は先程のように壁を触りだす。


「どうした?」

「いや、お化け屋敷みたいに隠し通路とかないかなと思って」

「そんなのが都合良くあるわけ……」

 『ない』と言おうとしたら、忍が忍者のように壁に半回転して消えた。

「忍!?」

「あ、何?」

 何事もなかったように忍が壁を回転させて顔を出してくる。


「はぁ……驚かすなよ。てっきり壁に擬態した化け物に食われたのかと思ったぞ」

「心配させてごめんごめん、でもこっちの方に道が続いてるみたいだよ」

 その言葉を聞き、俺もその隠し通路に入る。

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