女王様のせいで古代遺跡攻略が始まりそうである。前編
前回までのあらすじ、
幼なじみの黒魔術に付き合ったら女にさせられた挙げ句、異世界に飛ばされてしまう。その後、所持金1000万を担保にしてポーカーでエロ公爵から約3000万を搾り取った。勝因は幽霊少女のサイン。そして女王様となんだかんだあって北国の遺跡に旅行に来たと思ったら、なぜか遺跡の中は謎の大草原であった。
「というわけでただいま戻ったよ、パティ」
「お帰りなさいませ、お嬢様、ご主人様」
なにが『というわけで』なのかは分からないが、忍がパティに向かって帰宅の挨拶をし、パティが帰宅した俺達に紅茶で持て成してくれる。
「遺跡の調査というのは案外簡単だったのですか?まだ夕食の前ですけど」
「その逆さ。大変そうだから出直してきたわけ」
「と、言いますと?」
「ボクらが暮らしていた世界以上の超科学の文明の異世界人があの遺跡を作ってたんだけど、その中がまた異世界につながってたんだ」
「え?ご主人様たちが暮らしていた世界にですか?」
俺達が暮らしてた世界?
そこに繋がってたなら俺はここに帰ってきてないぞ?
強がってるけど、俺はホームシックなんだ。
コンビニのスナック菓子やファーストフード店のジャンクフードが恋しい。
特にハンバーガーが食べたいです♪
「いや、ボクらの世界じゃないよ。未知の世界かな?ボクの予想だとアレは古代だ。古代人が古代のままあそこで暮らしているんじゃないかな?」
おいおい、その理論はオカシイだろ?
さすがはバカ。外国語以外はバツバツのバツのだけはある。
「忍、よく考えろ。あそこは遺跡なんだ。遺跡の内部があんな大草原ってのはどう考えてもオカシイ。質量保存の法則って知ってるか?」
質量保存の法則を知らないバカは居ないだろうが、念のために説明しておこう。
質量保存の法則とは「化学反応の前と後で物質の総質量は変化しない」という化学の法則である。簡単に言うと氷が水になった時、体積は変わっても質量自体は変わらないってこと。
1gの氷が溶けても1gの水にしかにならないように。
この場合の質量保存の法則とは水瓶に入る水はその水瓶の容量以上には入らないってことと同じである。地球上の空間には無は基本的に存在せず空気が存在する。
だから何も入っていない水瓶にも実は空気が入っているということなのだ。
まとめると『水瓶+空気+水』の量は絶対に変わらないということなのである。
付いて来てる?それともこの考え間違ってる?あってるよね?
よし!合ってるということにしよう!
俺以上に化学に詳しい奴の苦情は請ける。
だが俺未満にしか化学を理解してない奴の苦情は受け付けない。
「そりゃ質量保存の法則くらい知ってるけど、内部が大草原だったんだよ?目で見たことを信じないで何を信じるの?」
「目の錯覚とかあるだろ?それか俺達が理解できないような超技術で空間を広げている」
「空間を広げる?そんなことができるの?」
「さぁな?少なくとも俺達の常識は超えている。が、SFなんかじゃ空間歪曲だの湾曲だので四次元空間に広げている作品も多いぞ」
「……そこまで言うなら、さぞミコトはご立派な推測があるんだね」
いや、俺だってあんなのは信じられない。
けど、俺の身の回りには黒魔術師や幽霊が居るんだ。
今更オーバーテクノロジーの古代人が居ても不思議じゃない。
とはいえ、仮説がないわけでもない。
「忍、お前はあの古代語をドイツ語だって言ったよな?」
「うん、そうだよ?あ、ミコト、信用してないならドイツ語教えようか?スマホにドイツ語の辞書入ってる?」
勉強会は謹んで遠慮させてもらう。
「あれが本当にドイツ語ならあの古代人は俺達の世界の人間だと推察できるだろ?」
「……まぁ、そうなるね」
「ドイツ語の歴史なんて知らないが、俺達の世界であんなデカい遺跡を作っておきながら、尚且つ傷がつけられないような超素材を使用し、門には音声入力を使用している。これらから考えて、古代人は俺達よりもずっと未来の人間であると推理できるんじゃないか?」
「超文明を持った未来人がこの世界にやってきたけど、あまりにも太古だったから自分達で遺跡を作ってそこで暮らしてたってこと?」
「俺の推測はそうだ。俺達にすら理解できない超科学を持っていたことも未来人の一言で片付けられる」
「その仮説が正しいとして、ならどのくらい未来なんだろう?」
「少なく見積もっても100年は先だろうな。俺の勝手な予想だけど300以上な気がするな」
「300!?そ、そんなに?」
「だって空間を大きくしてるんだぞ?原理すら分からない。それにおそらく疑似太陽も存在するんだろうし」
あそこは南国の草原みたいだった。
ただのライトではあそこまで広くは照らせないだろう。
というよりも天井が存在していたようには見えない。
空があった気がする。
……そもそも空って何だ?
やばい、空の定義が分からん。
そうだ!スマホを使おう!
えっと……「空、地上の上部に存在する空間。または天」
役に立たん……。小学生だってその程度は理解してるさ。
(ふわぁ~~。あれ、2人ともおかえり~。早かったんだね)
あくびをしながら俺のマイエンジェル「ミシェル」が挨拶してくる。
あくびしてるところがソウキュート!!加点99点!!
「まぁね、本格的な調査は明日以降の予定だって。でも、ボクらがわざわざ赴く必要はないからホテルでゆっくりしてていいってさ」
ゆっくりしたくないな。
ここでゆっくりしててもお金はもらえそうにない。滞在期間中は無条件で1日2万ダラーが貰えるわけじゃない、ちゃんと報告書を書かないとダメなのだ。
つまり、仕事をして初めてお金がもらえるわけである。
ゆっくりしている分の滞在費はもちろん国費が使われるのだが、それは俺の分だけ。BPの分は俺が払う……けどまぁ、今回は俺は遺跡に行っただけ。
それだけで2万ダラー貰っているから忍が100万ダラーを稼いだと考えれば、忍に払わせれば良いだけである。
(大変じゃなかった?)
「というよりも往復の方が辛かったかな?特に馬車から降りて遺跡に向かうまで。乙女に山道は辛いよ」
お前は馬車の方が辛かっただろ?まさか車内で放尿するとは思わなかったさ。さすがにそこら辺の話をミシェルにはしないのか。こいつにもちゃんと羞恥心はあるらしい。
良かった良かった、お兄さん安心。(同い年だけど)
せめて俺や他の調査員さんの前でも恥らってもらえると有り難い。
(あ、あっちにパティさんが作ったフルーツポンチがあったよ?)
「おぉう♪」
忍はミシェルと共にフルーツポンチを取りにキッチンへ向かった。
……そういえばパティはどうした?気づいたら消えてたな。
「忍、パティは何処へ行った?」
「ご主人様、何か用ですか?」
いきなり後ろからパティに声をかけられてビクッとなってしまう。
「おわ!びっくりした」
「申し訳ありません。それで、何か用ですか?」
「いや、用と言うほどではないが、何してたのか気になってな」
「ご主人様とお嬢様のコートを暖炉の近くに移しておきました。余計でしたか?」
おや、相変わらず気が利く。
本当に出来るところと出来ないところの差が酷い。
とりあえず、金のこと以外は色々と使えるんだよなぁ。
あと、俺に対する扱いが雑ってところも。
それはたぶん俺がこいつの好感度を全く上げていないからだろう。
上げる気ないから仕方ないか、キラッ☆




