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女王さまのおかげで北方への旅、そして……何かが始まったようだ。その肆

 前回のあらすじ、

 忍が飲尿に挑戦するも挫折する。

 ホテルを出て20分くらいして遺跡の前の駐屯地に到着。

 駐屯地に到着するころには忍の顔が空気によって乾燥していた。

 パッサパサだな。潤い?何それ?状態である。


「カ、カッカッキゥ」

 口の中まで乾燥してしまったのか何言ってるのか分からない。

 俺のせいじゃない。

 尿を口の中に含むだけで軽蔑に値するのにそれを噴射したからな。


 駐屯地に居た調査員にもてなしの紅茶を貰い、それでウガイをさせる。

 お茶に含まれているカテキンには殺菌作用があるそうで、お茶でウガイをするのは効果的らしい。

 しかし、勉強不足の俺は紅茶でも良いのかは知らん。

 たぶん大丈夫、たぶんな。


「……はぁ……はぁ……。な、何するのさ!口の中も肌も乾燥しちゃってるよ!!」

「そうだな、尿が綺麗に取れて良かったじゃないか」

 綺麗になったかは知らない、マシになったのだろう。

 近寄りたくはないがな。

 掃除していない汚いトイレって入るのすら嫌だろ?

 あのアンモニア臭って俺は大嫌いだ。


「ほれ、顔を洗って来い。雪をろ過して煮沸しているから原理的には綺麗な水のはずだから」

「言われなくてもそうするよ!でもね、普通はこれじゃすまないよ?」

「は?なんで」

「女の子は化粧をするんだから、顔を水で洗ったら落ちるじゃないか」

 知らん、というかお前って化粧してたの?昔からそんなに顔が変わってないけど?あれか?ナチュラルメイクってヤツ?ナチュラルすぎて分からねえわ。


 忍が顔を洗いに行っている間に俺は遺跡の調査報告書を読む。

 俺は作成しておいた五十音表を使って文字を読んでいく。

 えっと……『この遺跡はかなり古代から存在していると推測されているが、古代の技術とは思えないほど優れた技術で建てられている。内部に入ることもできない上、壁に穴を開けることも我々には不可能である。唯一の手がかりは正面の門のような入り口に古代語で書かれている文章だけと思われる』

 とのことらしい。

 全然調査は開始されていない、

 というよりも俺達異世界人が頼りだそうな。

 進歩?ダメです。

 しかし、優れた技術ってのが気になる。

 壁に穴をあけられないって強化装甲でも使ってるのかね?それも長い間風化しない超素材って俺達の世界にだって存在しないような?


「ようこそ、ミコト様。到着して早々で申し訳ないのですが作業を開始して頂けるとありがたいのですが?」

 調査隊の隊長らしき人がわざわざ敬語でこちらに接してくる。

「少し待ってくれ。今回の件にはあっちのバカが頑張ってくれることになっているからあいつの準備ができたらだ」

 紅茶を飲んでリラックスしながら隊長さんに返事をする。


「バカとは向こうで足湯に浸かって幸せそうな顔をしている方のことですか?」

「……靴を履かせて簀巻きにでもして遺跡の方まで運んでくれ」

 恥ずかしい、あれが俺の相方ということが非常に恥ずかしい。



 件の遺跡に徒歩で向かい、10分ほどで到着。

 馬車と合わせて30分か、これならホテルに帰れそうで安心。

「ミコト様、こちらが異世界の技術で作られたと思われる遺跡になります」

 案内された遺跡に着いたのだが、見た感じの感想は優れた技術で作られているとは思えない。エジプトのピラミッド、カンボジアのアンコールワット、スペインのサグラダファミリアとかそんな感じに風化されているように見える。


「……これの壁に穴を開けあれないと言うのは本当なのか?とてもじゃないが信じられないのだけど?」

「表面は粘土や鉱石で構成されているのです。鉱石等は補強のためなのか、偽装のためなのかは分かりませんが、鉱石の奥に未知の材質が使われておりまして穴はもちろん、傷をつけることすら出来ていません」

 はぁー、想像以上になんか凄いことになってるっぽいな。


 とりあえず話に聞いていた古代語とやらが書かれていた門に近づく。

 門には俺の予想通りアルファベットで書かれていた。

 しかし、文法や単語から判断してこれは英語ではない。

 つまり俺には読むことはできない。

 本当ならここでスマホの機械翻訳に頼るつもりだったのだが、何語か分からないと使い道がない。

 仕方がないので忍に任せる。

「忍、読めるか?」

「え~っと、これはたぶんドイツ語だね。発音は分からないけど読めるよ」

 なら話は早い。

「今からこいつがここに書いてある文章を読み上げる。それを報告書に書けるように誰かメモしてくれないか?」

「了解しました」

 敬礼して俺に従ってくれる調査員さん。

 部下を顎で使うクソ上司の気分が分かった気がする。


「えぇ……『この文章を読んでいる者へ。君達はおそらく我々と同じ異世界人であると思われる』」

 おぉ、やはり俺達みたいにこの世界にやってきた奴がいるのか。

「『我々が生きていた時代からどれだけ時間が経ったのかは分からない。しかし、内部に入りたいのならここに書いてあることを実行して欲しい』」

 あらら、「ひらけゴマ」でも言えば良いのかと思ってたがそんなに甘くないらしい。

 RPGのお使いイベントみたいなのは遠慮したいです。

 けど、滞在期間が長ければそれだけで金がもらえるから楽ならそれでも良いですよ。

 むしろお願いしたいです。


「『右に大股で5歩移動してくれ』」

 本当にRPGみたいだな。大股で5歩ね。

 1,2,3,4,5で5歩だな。


「『次にブリッジしてくれ』」

 今の俺は手袋つけてないんだけど……。

 ほいっと。うわぁ……冷たてぇ……。


「『そこで『チョニメシダカェヴァリルン』と大声で発声してくれ』」

 チョニメシダカェヴァリルン!!

 何の呪文だよ、これは……。


「ええっと、『けれど、今までのはフェイクだからそれをしても何もならない。だから発声とかをしても何も起こらないから発声しなくても良いよ』」

 ……何これ?なんでそんなフェイクを書いたの?

 英語の文章題での部分訳した奴を懲らしめる為の引っ掛け問題か……。

 恥ずかしい……。

 ブリッジをやめて起き上がると何人かの調査員さんと目が合う。

 忍に八つ当たりしたかった。とび蹴りをしたかった。


「『本当にして欲しいのは扉に手を当ててロシア語で100までの間に存在する素数を数えてもらうことである』……だってさ」

 ……なんでドイツ語で書かれた文章なのに指令内容がロシア語で100まで数えることなのかね?

 えっと、素数は1と自分自身以外に正の約数を持たない自然数で、1でない数のことだから……2,3,5,7,11,13,17,19,23,29,31,37,41,43,47,53,59,61,67,71,73,79,83,89,97,101……。

 あ、100までだから97までか。


 忍が入り口の門、改め扉に手を当てて2~97までをロシア語で数えて言った。

 忍が言い終わるとギュインギュインと内部で機械音が鳴り響いて扉が物音を立てて開いた。

 内部を恐る恐る覗いてみると、どういう原理かは理解できないが南国のような緑色の大草原が広っている。



「ドルルルルルゥゥゥゥゥーーーー!!!」

「ギョギョギョギョェワーーーー!!!!」

 何やら不気味なモンスターの咆哮が鳴り響いていた。

 まさか恐竜でも居るのか?

 はっはっは、まさかな。


「おぉ~、冒険の予感♪」

「あぁ、本当だな……」

 まさか、雪国で草原を冒険することになるとは……。

 どうやら俺の奇妙な冒険が今から始まってしまうようだ。

 始まんな!何も始まんな!

 だが遅い。この仕事を請けたときから始まっ(てい)たのだろう……。

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