エロ公爵のせいで、もう女王戦だって?まさかの展開でトラウマスイッチが入らないか怖い……
前回のざっくりな感じのあらすじ、
ファーストキスの相手は酔っ払いだった件。
「ご主人様、朝でございます」
「あ、あぁ……もう朝か」
なにやらいろいろあった気がする。
俺は酒を1Lほど飲むと記憶が消えるタイプの人間だから……。
何があったっけ……?
あ、そうそう。確かエロ公爵に色々と酷い目にあったよな……キスされた気がする……。吐き気してきた。
俺、あんなエロオヤジにキスされたのか。
……あ?なんでキスされたんだ?
俺、勝ったよな?あのハゲデブに勝ったよな?
パティに訊けば何か分かる気がするが、
本能が訊くのはやめろと言っている。
「お客様が来ております。なるべく早く降りてきてください」
「……客?誰だ?」
「女王陛下の親衛隊の方です」
女王陛下の親衛隊?何のようだ?
寝室を出てリビングに入るとソファーに制服を着た親衛隊らしい人が座っていた。
「朝早くから失礼しています、ミコト様。実は貴方様に脱税の嫌疑がかけられています」
「脱税?なんのことだ?指示された分の税は納めたはず。言い忘れた分があるなら俺のせいじゃない。そっちの責任だ」
気分が悪い、なんで俺が朝っぱらからオッサンの相手をしないといけないんだ。
俺は20歳の男だ、百歩譲って朝から俺に会っても良いのは家族と女の子だけだ。忍は女だから許せたが、野郎だったら回れ右してもらっている。
朝から男同士のむさ苦しい友情はないべ。
旅行とかならそれなりに楽しいかもだけど。
「いえ、そうではありません。昨夜の件が公爵様より報告されたのですが、実は国で許可されている賭け事は1000万までで、それ以上の賭けをした場合はかけ金の1割を国に譲渡しなければならないのです」
「は!?この国の法は狂ってるんじゃないか!?」
公爵が告げ口したことよりもこの国の法に驚愕する。
パンツのことと言い、この国の法律はおかしい。
何かじゃなくて全てがおかしい。
いったい法務省とかは何をしているのだろうか?
頭沸いた爺さんが勤めてるのか?
とりあえずパンツの件から法改正しようか。
男の娘ってありだと思います!
あ、でもガタイの良い男が女装するのは無しな?
「そ、そう言われましても……」
「ぐだぐだとやかましい! 必殺の623パンチ!」
俺のアッパーカットが親衛隊さんの顎を思いっきり殴り飛ばした。
「おぉ!昇○コマンドだ!」
トーストを齧っていた忍が今の技の感想を言った。
説明しよう!
昇○コマンドとは世界的な格闘ゲームで有名の対空技のあの技のコマンドが右、下、右下となっているため、これをテンキー表記に略して623と略す。多くの格ゲーでは滞空技のコマンドがこうなっているのでしばしば昇○コマンドと呼ばれている。
加えて言うが、対空技には無敵時間が存在することが有るのでカウンターとして使えるが、スキも大きいので頼ってばかりでは危険である。
相手に『バカの一つ覚えだな』と嘲笑されても知らないぞ。
飛ばされた親衛隊が起き上がって文句に近いことを述べる。
「し、しかし、これは女王陛下の勅命ですのでこちらも簡単に引くわけには……」
「だったら女王にこう言っておけ!『文句があるなら直に文句を言いにこいや!!』ってな」
親衛隊に言い捨てて俺はリビングのトーストを齧って部屋を出て行った。
まったく、酷い朝だ。こんな日はマンガやゲームをして1日中楽しく過ごすのだが、現在進行形で没収されている。返してくれよ……。
スマホは電池が危ないから使いたくない。
もう既に18パーセントなのだ。
それともテニスコートでも作るか?
ダメだ、相手が居なかった、忍は球技が大嫌いだからな。
壁打ちはあんまし好きじゃない。
翌日の朝。
「さて、異世界人よ。文句があるから言いに来てやったぞ」
目を覚ますと、なぜか俺は先日のように簀巻きにされて女王の前に座っている。あれ?この状況にデジャヴを感じるんですけど?
これも全てエロ公爵が悪い。
悪いのは俺じゃない、公爵のせいだ。
と責任転嫁じゃ。
というか、ここは王城っぽい。
だったら『来てやった』じゃなくて『来てもらった』じゃないか。
言葉は正しく使いましょう。
……お前のことだよ、ギャル語!
「我々の国では、寝起きの後は洗顔と歯磨き、そして排泄が基本なのですが?」
「知らぬ、貴様が税を払えば良いだけの話だ。覚悟を決めたらどうだ?」
交渉の猶予なんてないらしい。
怖いわー、本当に冷たくて熱いな。
熱いと言うよりも痛い。
冷たくて痛い、普通にただの霜焼けですね。
もしくは凍傷。
けど、こっちにも言い分はある。
「女王陛下、気になっていたのですが、賭けの上限は1000万までと聞きましたが、白のチップが存在すると言うことは1000万を賭ける事は公式に認められているということですよね?」
まさか、白のチップの存在が否定されるとは思えない。
それまで否定されたらおとなしく1割払わないといけなくなる。
3000万手に入ったのだから払うのは300万?
十分に大金じゃねぇか!
金銭感覚がインフレを起こして麻痺ってるが、300万って3年分の給料、日本円だと2000万くらいじゃないか!
「そうだぞ?1000万まで賭ける事は許されている。だが、貴様が賭けたのは2000万と聞いた」
けど、実はあのハゲがさらに500万上乗せしたから2500万なんですがね。
「けど、こちらが試合で勝ったのは1000万だけなので払う必要はないはずなんですが?」
「は?どういうことだ?」
ゲームを知らないからその反応は仕方が無い。
「こちらは途中で白のチップを1枚、つまり1000万を賭け、そのゲームには勝った。そこだけは許可されている行為である。ここまでは良いですね」
「……あぁ、問題ないな」
よし!
とりあえずこの分の1割は払わなくて良いらしい。
やったぜ!
「そして云々あって最終ゲームで公爵がイカサマを使った、だから私は『罰として』2500万を公爵に払ってもらった。罰なのだから賭けではないのですよ」
この世界に譲与税なんて概念があるなら俺はそれを払わないといけないかもだけどさ。
「……そんな屁理屈がこの私に通用すると?」
ちっ!通用しないか。ならば仕方ない、往生するか……。
ってなるわけねえだろうが!!クソババァ!
なんで俺が何度もアンタに金を払わないといけないんだよ!
異世界ってのはこんなに暮らしにくいのか!
屋敷で平和に暮らさせろ!
「じゃあ、そういうそちらはどうなのですか?」
「何の話だ?」
「実は小耳に挟んだのですが、この国は強盗を雇い、貴族を殺害して、貴族の財産を手に入れているのだと」
ざわざわとしだしている。
そりゃ今後、自分が殺されるかもと思ったらそりゃ焦るよな。
「……なんだ?そのガセネタは。そんな証拠でもあるのか?」
「確かに証拠なんて無いですよ。けれど、そちらも先ほどの私の屁理屈を打ち壊すような証拠や論でもあるんですか?」
「……まぁ良い、今回は貴様の屁理屈を認めてやろう」
勝った!
ざまあみさらせ!クソババァっ!
ババァは大人しく介護でもされてろ!
「そもそもこの件に関してはオマケなのだ。たかが300万ダラー、貴様等のおかげで手に入った金塊の山に比べたら小さいもの。それにカオルーン公爵が勝手に使ってしまったに等しい上に、今から受けてもらう仕事を断られても困るから依頼料だと思えば妥当だろう」
オマケ……?
このババァ、俺から金を搾取したかっただけか?
そんなに財政難なのか?
それなら勝手に税金を上げて貴族から搾取しろよ!
カオルーン公爵なんて俺にボヴァっと大金を賭けられるほど金持ってるんだろ?アンタの権力で搾取しろよ!
「で、そのメインの仕事とは?」
むくれながら俺は詰問する。
「実は貴様が持っていた文献のある文字が北方のとある遺跡の文字と告示しているらしいのだ。しかし、文献の言語の文法は全然違うから読めないという。そこで貴様にはその遺跡へ行き、古代語の解析に協力してもらいたい」
文献ってのはおそらく参考書とかのことだろう。
つまり英語の教科書か参考書に書いてあったアルファベットだったのか、似ていたのか?
……これって朗報じゃね?
もしかしたらこの世界に俺達以外の人間が居たかもしれない。
……あれ?でも遺跡ってことはもう人間は死んでないか?
しゃーなしだな。
俺だって仕事はしないといけない。
日本だったとしても仕事はしないと生きていけない。
おまけに向こうじゃ拒否権の類も無い。
社畜にだけはなりたくなかったが、仕事からは逃げられない。
逆タマしたかった……。
男の夢だね、お金持ちのお嬢様と添い遂げるってのは。
幼馴染ルートなんて要りません!
「……報酬は?」
「やはり今の300万だけでは不満か……。滞在日数1日につき2万ダラー、無論毎日報告書は書いてもらうが不服ではないだろ。そして良い報告ができた場合は追加で100万出そう」
「乗った!!」
女王様は太っ腹であった。
こんな奴が強盗を雇い、ミシェル達を殺した?
……それは否定できないな、殺してもおかしくはないだろうさ。
いや、けれどミシェルの父のクリストフォード氏が強盗に襲われるくらいの恨みを買っていたという可能性もある。
……うん、バカだから考えるのをやめようかな。
嫌な想像はしたくない。
ふぇぇ……大人の世界は怖いよぉ……。
「なら、いろいろと自室から必要なものを持って行きたいのですが?」
「……必要なものだけ許可しよう。必要なものだけ」
ちっ!(と本日2度目の舌打ちです。)
このババァは本当に賢しいらしい。
俺が必需品のついでに嗜好品を持って帰ろうと思っていたのに!
いい加減、返してくれませんかね?俺の嗜好品の数々を。




