俺は俺達のおかげで良い酒が飲める、勝利の美酒とはこういうことなのだろう。
前回のあらすじ、
クソファッキンジジィのエロ公爵をぶっ倒す。
「……ご主人様、何回数え直しても数え間違いではないと思われます」
「本当だな?本当に4000万ダラーもあるんだな?」
「はい、正確には3962万ダラーですが」
「本当なんだな?」
「……ミコト、くどいよ」
念入りにパティに確認する俺に忍が突っ込む。
おいおい、このポンコツに金を任せたくないんだよ。
いや、そりゃ10万ごとに束にして、それを100万ごとに重ねて、さらに1000万ごとに箱に入れてるから間違えようがないはずなんだろうけど。
「とりあえず祝宴といこうか!」
駄メイドを信じて金の計算は一時停止して、俺は本日の大勝利を記念しての祝宴を開いた。
「「(乾杯!!)」」
お礼参りを恐れ、俺達は酒場で酒や肴を買い取って屋敷に戻って改めて飲み直している。
「ぷはぁー!自分の金で飲まない酒は美味しいねぇ~♪」
「ホントだよね♪いやはや、本当に勝つなんて凄いよ。てっきりイカサマされて負けるのかと思ってた」
「お前はそれを気にしていたのか。だけど、イカサマされたと分かればどれだけでも対処法は存在する。だから杞憂なんだってばぁ」
(気分良いね♪これでわたしの願いも少しは叶ったよ)
「それは良かった。これで俺達も金のことを心配して生きていかなくて良いし♪」
えっと?4000万ダラーあるだろ?
となると、残りの人生が後40年あるとしても大丈夫なわけだ。
あれ?まだ足りない?
ま、ここからは地道に何かを模索するかな?
女王をぎゃふんと言わせるための何かを思いつかないとだし。
(ところで女王様はどっやって倒すの?)
そうだな……。
何か良さそうな秘密道具があれば国民的アニメの映画みたいにスカッとする展開はないかな?でも戦闘は却下だ。俺には一騎当千の戦闘力なんてない。
戦闘開始早々に死んでいくモブキャラCくらいの人間だよ、俺って奴は。
つまり相手が土下座して俺に協力を扇ぐようなくらいに喉から手が出るほど欲しがるような物があればありがたい。
……ないよな?ないんだな、これが。
日本とこの異世界(名称不明)とを自由に行き来出きれるのならこちらにかなり上下関係で強くなれるだろう。
薬学の参考書だけでも交渉材料としては最強のカードかもしれん。
ま、妄想は妄想であって現実ではない。
誰かが言ってた気がするが『空想と現実ははっきり区別しろ』って。
あれだな、『この作品はフィクションです。実在するいろいろなこととは関係ありません』と多くの作品で釘打つのと同じだな。
『こんなことは現実ではありえねぇよ?あるとしても夢でしかないぞ?待ってるだけで手に入るほど人生はイージーモードではない。ご都合展開が許されないないなんだってヴぁ!勘違いするなよ?最近の作品が人気なのは腐った現実から逃避するためであり癒し系が人気なのは皆疲れているからなんだ』って。
……しかし、なんかミシェルとこう、羨ましい男女の会話ってのが出来てない気がする……。
くそッ!これがモテない男って奴か!俺の天使(複数の意味で)とのエンディングを作りたい!フラグを立てたい!
けど、どうしてだ?見えないぞ!エンディングが見えない!
「女王って結構強敵なのか?」
(賢王としてはかなり有能で武術家としてもかなりの腕がするらしく、唯一の欠点は短気というくらいらしいけど実際は冷たくて熱い魔女に近いという噂)
冷たくて熱いってどういうことよ?
何それ、ドライアイス?ドライアイスなの?
二酸化炭素の固体なの?保冷材としても有能そうだな。
マジメな話、大変そうだなぁ。
しかし、そんな賢いのか?
俺にエロ本朗読を強要した辺り、あそこのバカとポンコツと同様のボンクラだと思ってた。
略してBBPだな。BBP! BBP!
(これと言った趣味趣向もないらしいし、極めてつまらない人生を送っているそうな……。わたしには良い案が浮かばないよ)
……いや、俺にだって浮かばないよ……。
ダメだ、これで打ち止めだ。
完全敗北!
「ほ、ほら、パティ。今日くらい無礼講で行こうじゃないか。飲みたまえ飲みたまえ」
ミシェルとの会話が終わってしまったのでパティに話を振る。
いつも礼儀なんて無い気がするが、細かいことは気にしない、気にしない。
「今回、私は何もしていないのですが?」
「気にしないでいいよ。本人が飲めって言ってるんだから。ボクたちの国だと民族上の礼儀として飲めと言われた場合は基本的に飲まないといけないんだ」
忍もパティに飲め飲めと促す。
日本では「俺の酒が飲めないのか!」って流れすらあるからな。
「俺のお稲荷さんが食べられないってか?」と言ってくる男には要注意しとけ。それは下ネタだ。言われたときは「そのような粗末な物は頂くわけにはいきません」と謹んで遠慮しておこう。
相手のプライドはズタボロになるから。
女が胸にコンプレックスを抱いているのと同様に、男も自分のイチモツの大きさにはコンプレックスを抱いているのだ。
しかし、女の場合は相手が巨乳好きか貧乳好きかをリサーチできるだろうし、豊胸手術やパッドを入れられるかもだが、男の場合はそれができない。
アレにもシリコンを入れられるらしいが、入れてしまうと常にフル勃起となり街中でもテントを張ってしまうらしい。
街中でフル勃起って怖いな。可愛い女性に白い目で見られるぞ?
今の時代、ナンパはともかく、女性に道を尋ねただけで通報される世の中、フル勃起なら逮捕されるかも。公然猥褻とかで。
「そうだったのですか。それは失礼しました。では少しだけ」
と俺達の世界の作法を守ってパティがグラスに手を取りごくごくと勢い良く飲みだした。一気飲みは急性アルコール中毒になるらしいからほどほどにな?
数分後。
「だぁかぁらぁ~、ご主人様はもうちょっとしゃんとしなきゃらめだとおもうのれるよ?」
なぜかパティに説教されている。
どうやら絡み酒のタイプらしい。
いや、無礼講とは言いましたけど、駄メイドに説教されるなんてどういうことなんですかね?俺ってばバカだからわかんないってばさ。
「ま、まぁまぁ、その辺りでどうかな?」
「……お嬢らまがそう申しゃれるのにゃらば……」
忍に制止させられたパティはしぶしぶ説教を止めた。
「そ、そうだよ。一応、こんなんでも雇い主だしさ」
「……お嬢様」
「ん?どうかした?」
「チューしましょ」
「はぃ?」
唐突にじゅぽじゅぽと音を立ててキスをしだした。
テンポが速すぎて何がなんだか理解できなかった。
超能力でも使われて過程がふっ飛ばされたのかと錯覚してしまう。
『女帝はこのパトリシア(パティの本名)だ!』みたいな。
「ん……じゅぷじゅぷ……はふ……くちゅくちゅ……ちゅるちゅりゅぅ~♥れろれろ……れろろ……んんぅ……はむっちゅう。きゅちゅうぅ……んきゅぅ~♪」
忍とパティがかなりの時間キスしている。
フレンチではない、舌を相手の舌に絡ませるディープキスをしている。
パティの方は酔っているからか無意識なのだろうけど、忍の方は目を見開いてこの状況を理解しようとしていたのだが、次第に目がトロ~ンとしてきている。キスで感じているようだ。
やがてディープキスを止めてパティが溜まった涎をごくりと飲み込む。
「はぁ……はぁ……ボ、ボク……初めてなのに感じちゃった……♥」
……こ、こいつ、実は俺よりも変態なんじゃないか?
さすがに無理矢理ヤられたら感じるよりも怖いだろ?
レイプされて感じる?AVの見すぎじゃないかね?
もしくはそれ系のエロゲをやりすぎてるのか。
因みに秘部が濡れるのは挿れやすくするという潤滑剤的なためであり、性的興奮のためではないらしい。一種の条件反射ということだな。
理科の授業で習っただろ?
梅干を見ると唾液が出てくる、みたいなの。
「さて、ではご主人様もしましょうか♪」
……え? パティさんや。本気ですか?
と、言いたくなったのだけど、俺の気持ちを無視してパティは強引にキスをしてきた。唇と唇が触れる瞬間、俺の中に衝撃が走りこだまする。
……おいおい、ファーストキスがこんな逆レイプみたいな?
いや、逆レイプはまだ良い。
こんな体になってしまったのだ。
男に奪われなかったことだけは幸運だったのかもしれない。だがしかし、酒臭いのはダメだろ?こんなロマンチックも何も無い酔った拍子ってのはダメだろ?
ヤリサーと呼ばれるサークルの新人歓迎コンパでよく女性がヤリチンに性的な意味でヤられると聞くが本当なのだろうか?
もしも俺がゲイにお持ち帰りされた後で準レイプされたら迷うことなく警察に通報するね。
体から始まる恋? 有ってたまるか!!
などと思考停止した脳で考えていた。
引き剥がすことを忘れていたのは久しぶりに訪れた超イベントに脳が対応できていなかったからだ。これに反射で対応できるようになりたい。
まだ思考の域だ。こんなだから俺はまだ旧人類なのだろうな。
『思考と反射の融合』という領域まで加速したい。
「っぶはぁ! ……何をする!」
「え?チューですよ? チュー」
力づくで引き離す。
パティの唇から唾液が白い糸を引いていた。
エロいんだけど!エロいんだけど何かが激しく間違っている!!
(ふふふ、これからは毎日が楽しくなりそう♪)
ミシェルが楽しそうに笑いながら酒を飲んでいた。
いや、楽しいだけなら俺も大賛成なんですけどね……。
お願いだから普通の展開だけにしてくださいよ?




