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バカとポンコツのせいで酷い人生になるかと思っていたけど、ようやくツキがやってきたようだ。その参

 前回のあらすじ、

 俺の完全な作戦が成功して1147万の勝ち!笑いが止まらなねえぜ!

「やった……。やった!やったんだ!凄いよ、ミコト!やっぱり君は最高だ!信じなくてごめん、でも本当に凄い!」

 忍が飛び跳ねて喜ぶ。

 褒めろ!褒めろ!もっと存分に褒めろ!

 声が枯れるくらいに褒めてくれ!


「さ、帰るか。予定通り1000万が倍になって帰ってきたし。今回は皆で豪華な飯をを食べようか」

 テーブルに出されたワインとつまみのチーズを頬張りながらVIPルームを出ようとした、のだがカオルーン公爵が何か言いたそうにこっちを見ている。


「ま、待て。貴様はイカサマを使ったな?」

「イカサマ?これは驚愕です。いったい私がどのようなイカサマをしたと?」

「だ、だが、あんな所で1000万も賭ける人間が居るわけが……」

「さっきも言ったはずだ!負けると思ったのなら降りればよかったはずだ!負け犬にもう用は無い、とっとと消えろ!」

 目障りなブタに言いたい事を言う。

 同じ空気を吸うのも嫌だ!金払わないなら失せろ!

 ……なんか援助交際してる女子みたいなセリフだな……。


「まだだ、まだ終われない。こちらは300万ダラーをチャージする。だからもう1回だ」

 300万ねぇ……。

 こいつからまだまだ貪るのも悪くない。

 ま、ミシェルさえ居れば俺に負ける要素は存在しない。

 ミシェルの方をチラ見してると頭をうんうんと縦に振っている。

 どうやら「問題ない」と言っているようだ。


「そうですか、今の失言を許していただけるならこちらもやらせてもらいましょう」

「ナイス!」

 今度こそカモから金を奪ってやろうとしているのか?

 それともまだ俺を肉奴隷にする夢でも見ているのだろうか?


 人の夢と書いて儚いと言うんだよな。

 悲しいけど、これ真実なのよね。



「こちらは黄色を1枚上乗せだ!」

「ドロップ」


「こちらは黄色を2枚!」

「ドロップ」


「黄色1枚と青7枚」

「ドロップ」


 俺はまさかの3試合連続の降参ドロップした。

 理由はもちろん、勝てないからである。

 こちらはワンペア、ブタ、ワンペアとクソみたいな役しかなくて困る。対する相手はフラッシュ、ストレート、フォーカードとどう見てもイカサマしてるだろとしか思えない役だった。

 さきほど逃げておけば良かったのかもしれないな。

 ……あぁかったるい。


「貴様!ナメているのか!」

「勝てない勝負をする必要があるのですか?ポーカーとはそういうゲームのはずです」

「ぐぬぬ……」

 オッサンのぐぬぬなんて需要ねえよ!

 とはいえなぜ切れているのだろうか?

 1度も俺からむしり取れないからか?


「次は私でしたよね。黒でお願いします」

 ルーレットが黒を示す。今度は俺が親か。

 山札をシャッフルして、カードを配る。


「ワシは2枚チェンジ」

「私は1枚」

 公爵と俺がそれぞれ手札のカードを交換する。

 えっと……俺の役はフルハウスか。

 で?相手はツーペア。やっとマトモに攻められる。


「黄色を2枚」

 ようやく行動を起こした俺を見て少し警戒しているのか、相手はこっちを睨み付けている。だが相手が何を思っていようが俺には関係ない。


「ならこちらは黄色を1枚上乗せしよう」

 自信があるようだ、まさかツーペアの分際でフルハウスの俺にブラフをかけて来ているのか。

 無駄無駄無駄ァ!無駄の極地!!


「ならこちらはさらに赤を9枚上乗せで勝負」

 俺がフルハウスをテーブルに展開するとエロ公爵はこの世の終わりのような顔をしてきた。

「悪いな、公爵。2度目の敗北だ」

「き、貴様ー!!」

 エロ公爵が文句を言いたそうに憤慨しているが、こちらはもうこのオッサンと同じ空気を吸っておく理由が無い。

 えっと?第一ラウンドで1147万ダラーを手に入れて、今315万ダラーだから計1462万ダラーになる。

 ホント、チートとかしてると人生を頑張ろうとか思わなくなるな。

 チート、ダメ絶対。

 はい、お前()が言うな。


「ミコト、愛してるよ♪」

 忍が頬にキスをしてきた。現金な奴だな。

 だけど、俺も気分が良いから許す。

「今日は儲からせてもらったよ。愛してるぜ~」

 ウキウキ気分でVIPルームを出ようと思ったのだが、まだ文句がありそうな目で(以下略。


「た、頼む。あ、あと1回。あと1回だけお願いだ。ワシにも意地がある。だから!」

 タメ息しか出ないわ。

 俺にとっては有難いが、ここまで人は醜くなれるのか?

 いや、こっちからすればカモがまた現れたってな感じなんだけどな。


「……では、公爵様。今回はいくらチャージするつもりです?」

「貴様の持ち金と同じ2500万をチャージしよう」

 ほぅ?どうやらここから一発逆転でもするつもりらしい。

 大丈夫だ、ミシェルが居る。

 ミシェルもまだまだやれるらしい。


 それに2500万まで手に入れば4000万も手に入る。

 駄メイド(ポンコツ)が消費した半分近くが帰ってくる計算になる。

 やったね、ミコトちゃん。お金が増えるよ♪


「では、これがラストですよ?」

「良いだろう」

 なぜか知らないが公爵が不適に笑ったような気がした。

 気のせいか?それとも最後のチャンスができたことが嬉しいのか?


「ワシは赤で」

 俺がルーレットに玉を投げて、公爵が選んだ赤に止まる。

 公爵が今まで通りに山札をシャッフルして配る。配られたカードを見て俺が2枚チェンジし、公爵が3枚チェンジした。

 こっちの役はブタね……。

 さて、いつも通りミシェルに相手の聞くかな。

 ……ん?「公爵はすり替えでロイヤルストレートフラッシュ?」

 ……ほほぉ~。このタイミングで?なるほどそういう作戦なのか。


(忍、あれだ。下克上が入った)

(! 了解)

 忍に小声で合図を出し、忍が準備をしだす。


 つまり、こういうことである。

 今まで俺が勝とうが負けようが公爵にとってはどうでも良かったのだろう。今までの過程を帳消しにするような一発逆転する必殺技を使ってしまえば良い。一発逆転の必殺技、それが「すり替えによるロイヤルストレートフラッシュ」なわけだ。今までの全ては茶番であり、最終ラウンドで有り金全てを賭け、そしてロイヤルストレートフラッシュで勝利する。すると、今まで負けたことなど関係なく、全額帰ってくる上に相手の持ち金も同時に消えるという究極奥義。


 俺達が公爵は雑魚だと思わせることに成功したのなら、それは公爵の勝ちである。なぜなら、俺は公爵がすり替えをした所を確認できていない。確認できていないのだから事前にそれの対策を取ることはふぼ不可能であったはずだ、ミシェルが居なければの話だけど。

 しかし、俺は公爵がすり替えをしてくる可能性は十分有ったと思っていたので当然対策を取っているわけ。


「白を2枚で」

 と俺が開始早々に虚勢を張る。

 因みに覚えているだろうか?

 俺の役はブタ、つまり最弱なのだ。

 これに2000万もかけてブラフをするバカがこの世に居るだろうか?相手がイカサマを使っていると知らなければする奴なんて居るわけない。


「ならワシは残り全額、つまり黄色5枚を上乗せしよう」

 やはり来た!ここでドロップするわけないですよね♪

 ばーか!!

 お前は俺にわざわざお金を貢ぐためだけに戦っているんだって。


「コール、では勝負です」

 俺は手札を見せる。

 無秩序に散乱しているブタがぶぅぶぅと醜く鳴く。


「ははは!小娘、覚悟はできているか?こちらはロイヤルストレートフラッシュ!!つまりワシの勝ちだ!!」

 先ほどと変わって、今度は公爵が高笑いしている。

 それで良い。それで良いのだ。おそらく公爵は俺が絶望しているのだと思っているのだろう。けれども、そんなわけが無い。


 そして、俺の期待通りに公爵の高笑いをかき消すような爆音がVIPルームで鳴り響いた。


「!!!?な、なんだ!?今の音は!?」

 公爵が慌てふためいている中、俺はそっと山札に手を伸ばした。

 ……しかし、このオッサンは見るたびに滑稽で愉快だな。

 最後に憤死でもしてくれればありがたい。


「公爵様!ご無事ですか!」

「な、なんだ!騒々しい!いったい何の騒ぎだ!?」

「……え?俺達は公爵様たちがいるその部屋から聞いたのですが?」

 ゴロツキ共がVIPルームに入ってきた。

 いいぞ、その調子で時間を稼いでくれたまえ。


「何を言ってるんだ……」

 公爵が訳が分からない、と言いたそうに混乱しているようだ。

 ネタバラシはしてやらないが一応説明しておくか。


「心配ない、今のはこいつの屁だ」

「はぁ!?ミコト!何言ってるのさ!」

 俺の発言に度肝を抜いた忍の腹部を肘打ちして黙らせる。

「こいつは奇病で、えっと……たしか『揮発性アルモミアンベンガルモアップ』だったかな?そんな感じの名前の病で突然さっきみたいな大音量の放屁をしてしまうのだ」

 化学の教科書に載ってそうな言葉を適当に繋げて勝手に新しい病気を捏造してみる。

 因みに『アルモニアン(ブレス)ベンガル(息継ぎ)モアップ』という感じで発音してくれ。しないでも構わんが。


 無論、そんな奇病は存在しない。

 さっきの爆音はスマホに入っていた『映画で使われるSE集』なるモノを最大出力で再生したのだ。


「そうなのか……おい!?なぜ貴様は山札に触っている!?」

「は? 何か問題が?」

 エロ公爵は俺が山札のカードを触っているのにようやく気づいたようであった。

 問題あるよな。だってここには……。

「い、いや、そこには……」

 公爵がしどろもどろになっていく。


「ふぅ……。さて、忍くん。私の役を教えてくれるかな?」

「醜い醜いブタでございます」

「その通りだ、対する公爵様の役は何かな?」

「いと美しき見事なスペードのロイヤルストレートフラッシュでございます」


「あれれ~?おかしいなぁ。なんで山札の中にスペードのAもKもQもJもオマケに10もあるのにロイヤルストレートフラッシュが作ることができるのかなぁ?」

「ぅぎぎ!?」

「ねぇ?公爵様?これはどういうことか説明してくれませんか?」

 ハゲデブは白目を剥いている。

 本当に醜いな、ここまで醜いと救いようが無い。

 後数千万奪いたいなぁ、と俺は調子に乗っている。


「いやぁ~、それは……。そ、そうだ!貴様等がワシをハメようと謀ったのだ!そうにちがいな……」

 『い』とデブ公爵が言い終わる前に俺はテーブルの上に思いっきり乗りあがり変態の胸倉を掴んだ。

「調子ぶっこいてんじゃねえぞ!このデブハゲが!これ以上の言い訳が通用するとでも思ってんのか!!」

「ひっ!」

 思いっきり脅迫してきた俺に公爵は恐怖しているようだ。


「テメェは負けたんだよ!この俺に!だからとっとと往生しやがれ!!このビチグソがッ!!」

「おい、貴様。あまり調子に乗るんじゃ……」

 ボディガードの男が俺の方にゆっくりと近づいてきた。

 無論、こういうガチムチゴリマッチョが俺の相手をしてくることも想定済みだったので秘密兵器を使わせてもらおう。


 ポケットに隠していた秘密の黒いアレでボルテック!!

「グワァァァアアア!!」

 聞くに堪えない悲痛な叫びを放ち、ガチムチは倒れた。


「き、貴様……何をした?」

「別に、気絶してもらっただけだ」

「な、何を言っている?ただ触れただけで人間が気絶するわけが……」

 するんだなぁ~、これが。

 この圧倒的威力のスタンガンを使えば!!




 テッテレー! 秘密道具、スタンガン~。

 説明しなくても良いくらいに有名なあの超絶威力のスタンガン。

 非殺傷のため我等が現代社会では女性が催涙スプレーと共に持ち歩いていることで有名!

 催涙スプレーで相手の目を潰してからのダメ押しスタンガンのコンボを食らって平然とできるような人間はおそらく空想の人物だけであるぅ!

 そしてスタンガンの一番の見所は何と言っても強力な電気ショックで大男すらもノックアウツッ!

 あなたを性犯罪者から守ってくれること間違いなしぃ!

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 詳しくはウェブで、けんさくけんさくぅ~♪

 (イメージCV『ブルァ』でお馴染みのあのお方)


「さて、話を戻そうじゃねえか。公爵様、アンタはイカサマを使った。極めて単純で非常に破壊力がある『すり替え』ってやつをだ。なぁ? そうだろ?」

 俺はビリリとスタンガンで脅してみせる。

「は、はははい……」

「だよなぁ?じゃあ、この約4000万ダラーはどうなると思う?」

「ふ、不正に手に入れた金なので今回の件はノーカンと言う事に……」

「あ!舐めてんのか!!テメェの粗末なエノキを握りつぶすぞ!!コラァ!!」

「フヒィー!も、申し訳ありません。こ、今回のことは貴方様の勝利ということで手を打たせて頂きます。な、なにとぞよしなに……」

 滑稽な公爵様が土下座に近い行為をして俺に詫びを入れてくる。

 それで良い、お前は醜くて滑稽なのが愉快極まりないわ。

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