幼馴染の黒魔術のせいで女にさせられただけじゃなく俺はとんでもない目にあってしまった。
前回のあらすじ!
日曜の朝起きると幼馴染が部屋に突撃して黒魔術を行った。と思ったら、何故か部屋の隣が大浴場になっている。大浴場に居た全裸の女性を不可抗力で見てしまい、変態というレッテルを貼られ簀巻きにされてしまう。そのことを女王に尋問されていたのだが、いつの間にか俺は女になってしまっていたようである。
「何が『ごめん』だ!どんな理屈があれば俺が女になるんだよ!」
「い、いや~。……ぼ、ボクもこんなことになるとは思って無かったよ……。ボクだってまさか黒魔術が成功するなんて思ってなかったんだ……」
「思ってないのにやったのか!このバカが!!黒魔術ってどんな意味か分かってんのか?災いをもたらす魔術って意味なんだぞ?その結果がこれか!!なんで俺が女にならないといけないんだよ!俺だって男だ!人並に性欲はあるんだぞ!!これじゃあ、まともな恋愛ができねぇじゃねぇか!!」
「……せ、責任は取るよ……」
忍が若干頬を紅く染めて言う。だが、そんなことに惑わされるわけが無い!こいつは責任を取るつもりなんて最初からないはずである。
「この状況で言うセリフがそれか!!」
「……謝罪と言い訳以外の言葉が思い浮かばないんだ……」
「このバカがー!!」
俺は極限の怒りのせいで絶叫してしまう。
「貴様等、我々を無視してなにを……」
女王(?)が無視されたことが不満らしくこちらに文句を言ってくるが、正直、女王のことなどどうでも良い。
「やかましい!何が女王だ!てめぇみたいなクソ金髪ババァが女王なわけ……」
『ねぇだろが!』と言おうとした瞬間に剣が飛んできた。
「……初回だ、今の言葉は大目に見ておいてやろう。次は無いぞ、小娘?」
絶句である。……怖い、目の前には大魔王が座っている。恐怖のあまり怒りも何処かへ吹き飛んでしまったようだ。
「……じょ、女王陛下。ぶ、無礼をお詫びします」
「よろしい、ではもう一度訊こう。貴様等は何者だ?」
再度女王(らしい女)が質問してくる。
「と、当方はただの日本の学生です。それ以上のことはただの個人事情にしかなりませんが」
こんなクソ金髪ババァが女王になっているような国だ。どう考えてもここは日本ではない。何がどうなったのかは理解できないが後払いでも何でも良いから日本に返してください。
「『にほん』?何処だ?そんな街は知らぬぞ?おい、誰か知ってる奴はいるか?『にほん』とやらを」
女王が周りの兵に質問したが誰一人知らないらしい。
なんだ?この違和感は。
「陛下、陛下は日本語を話しているではありませんか?」
「『にほんご』?何を言っている。我々はそんな言語を知らないが?」
……やっべ、ここまでのカルト集団だとは思ってなかった。
けれども変に怒らせるとまた剣が飛んでくるかもしれない。
今度は首と胴が繋がっているか分からない……。
「……まぁよい、では質問を変えよう。貴様等はいつの間に我が城の浴場にあんなものを作ったのだ?」
「あんなものとは?」
「貴様等の秘密基地だ」
はて?なんのことやら?
だが、悩んでいる暇は無いようだ。また剣が(省略。
「君の自室のことを言っているらしいよ、ミコト」
忍の言葉で理解した。
黒魔術のせいで自室の横に大浴場が出現したと思ったが、実際はその逆で、こちらが出現したと言うことらしい。
ぶっちゃけその辺りはどっちでもいいんですけどね。
しかし、何をどう説明したらいいのかさっぱりである。とりあえず、全て1から説明してみよう。
「失礼ながら少々お時間をください。ありのまま体験したことを話させていただきます。」
……い……いや……体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……。ありのまま今起こった事を話すぜ!
というわけで、さっき起こったことを全力で説明した。のだが、女王()は薄目でこちらをバカにしているし、兵士も呆れているようだ。
「な……何を言っているのかわからないと思いますが、俺も何をされたのかわからなかった…」
俺だって混乱している、だから俺だってこの状況に付いていけていない。
俺のことを信じていないのかまた剣が飛んできた。
「!? い、いいいいいや、本当です!! 本当なんです!! ふざけてなんていません!!」
「ふむ、そのあわてようはウソではないようだな。これ以上は拷問しても聞きだせそうにない」
どうやら信じてくれたらしい。良かった良かった。
というわけで解放してくださいな。
「おい、誰かあの汚らわしい書物を持って来い」
女王が家来に何かを持ってくるように命令した。
何を持ってくるのかと思ったら、親にも見せられない秘密のコレクション、エロマンガがそこには積まれていた。
「ぎゃーーーー!!!!」
「貴様! うるさいぞ!」
エロマンガが見つかって狂乱してしまってる俺を兵士が怒鳴る、がそれで大人しくなるほど俺の精神力は高くはない。
だってそうだろ?隣には同い年の幼馴染(♀)が……。
「あ、ミコトの趣味は知ってるからボクは大丈夫だよ?軽蔑?しないしない」
「うぎゃーーー!!」
いつの間にか俺の性癖がバレていたらしい。
ちょっと!!人の部屋の引き出しとかベットの下とか見ちゃダメ、ダメ絶対。
「この本は処分したいのだが、これに書かれている言語は我々が使っている物とは全く異なる。これが貴様の言う『にほんご』というのならば貴様が本当に『にほん』とやらから来た事の証明にもなるだろう」
だからって、なんでよりによってエロマンガをチョイスしてたんだよ!!
もっとマトモな本があっただろ!
高校の参考書とか生物図鑑とかそういうの!
「読んでみろ」
「……はい?」
「これに書いてある文章を読んでみろ、と言ったのだ」
つまり女王様は俺にエロマンガの文章を読むように言っているらしい。
……つまりセクハラだな。
これが現代社会なら逆セクハラで訴えられるのだが、残念ながらここは日本じゃない(らしい)から訴えられない。
簀巻き状態を解かれて積まれているエロマンガの元へ向かう。
兵士(♂)にエロ本を手渡されて「このページを読むように」と催促され、ページを見てみると行為の真っ最中。つまりキノコと貝がドッキングしていると言うか、おしべとめしべが受粉していると言うか……。
とにかく人前で読むような内容ではないと断言できる。
こんなものを公衆の面前で朗読していしまえば変態、いや公序良俗を犯した性犯罪者として逮捕されるに違いない。
「どうした? 早く読め」
もはや読む以外の選択肢は存在しないらしい。
力になってくれないと分かっているが忍の方を見てみるも「ガ・ン・バ」と言っているようだ。……もうね、死にたい気分ですよ。
え~、こほん。
「しゅ、しゅごいよぉぉ♪こんなに気持ち良いの初めてだよぉ♪も、もっと突いて♥もっと奥にどぴゅどぴゅぅっておち○ぽミルク出して♥……あっ♥そう♪そうだよ、ふぁぁ♥もっと、もっともぉっと……!あっ……!ん……んぅ~♪ら、らめぇー!頭おかしくなっちゃうぅ~~♥」
俺がこの文章を言い終わった後、空気が死んでいた。沈黙や静寂というよりは虚無に等しい。息すらも聞こえない。
「……予想はしていたが、そこまで酷かったのか……」
女王がやってしまったと言うニュアンスで溜息する。手渡しした兵士も「セクハラしてやったぜ!」という達成感よりも申し訳無さの方が強いらしい。
「……ま、まぁ……これで貴様等が本当に『にほん』と言う所から来たと認めても良いだろう。こんな内容を読むということは洗練されたスパイではなさそうだ」
セクハラをしたのはそういう狙いだったのか……。
でも、もはやそんなのどうでもいい。そして激しく死にたい……。