バカとポンコツのせいで酷い人生になるかと思っていたけど、ようやくツキがやってきたようだ。その弐
前回のあらすじ、
化粧をして酒場にやって来たのだが、エロくてデブくてハゲという三拍子揃ったダメ公爵と賭けポーカーすることに成功する。
VIPルームに入ると妖艶な服を着たボンキュッボンな女性が2人とサイズが明らかに小さいだろと言いたくなるインナーにデニム生地のベストを着たボディーガードらしき男が1人の計3名が居た。
「ルールはジョーカーを除いた52枚で行うが、親はそこにあるルーレットで交互に決めることになっている。これはここでのローカルルールのようなものだ」
「構いませんわ。親の決め方くらいなんだってよろしいですわ」
テメェがルーレットでもイカサマしないならな!
「では、最初の親を決めよう。ワシが玉を投げる。だから貴様が赤か黒かを選ぶが良い」
別にルーレットなんてイカサマされない限りはどっちが出るかなんて五分五分だろ?
なら気分で選んでも結果は同じ、神のみぞ知るってな。
「では黒で」
「よし、では行くぞ」
公爵が玉をルーレットに投げる。
ルーレットの縁を何周かしたのちに玉は黒に止まった。
どうやら、ルーレットにはイカサマはされてないらしい。
もしくはわざとこちらに譲ったのかも。
「では親は私ですわね」
卓上の山札を取り、リフルシャッフルをしてみせる。
「む?」
リフルシャッフル、これだけでは判らないかもしれないが、よくカードマジックなどてマジシャンが使うあの観客に魅せるためのシャッフルである。これがまた難しく、小学生の頃に憧れて真似をするのだが失敗してカードを痛めてしまうんだよな。
十分にシャッフルした俺がぱぱっとカードを配る。
我ながら素晴らしい手捌きである。見蕩れるな。
「2枚チェンジ」
公爵がチェンジを希望したので2枚をささっとカードを投げ、滑らせて配る。
「私は1枚チェンジ」
カードを俺と公爵の間に置いて、山札から1枚引く。
「言い忘れていたが、チップの種類は4種類。赤は1万ダラー、青は10万ダラー、黄色は100万ダラー、そして白が1000万ダラー。つまり1万ダラー未満はこのポーカーではカウントされない。そして参加料は赤のチップ1枚。さて、貴様はいくらで戦うつもりだ?」
「1000万ダラー」
「!!!?話が違うじゃないかミコト!?500万じゃなかったの?」
忍が騒ぎだしたので顔に軽く裏拳をして黙らせる。
「失礼、まだ躾ができていなくてお恥ずかしい所を」
「……仲が良いのか?」
従者と主の関係には思えなかったのか、公爵が質問する。
ここでバカ正直に答える必要はない。
相手が油断してもらえると有り難い。
「えぇ、それなりに。公私ともに」
ここでの公私の『私』とはプライベート、つまり夜の相手と言うことだ。
分かっていると思うが、忍とそういう関係になる予定は無い。
天変地異でも起こらない限りないだろう。
よく言うじゃないか、幼馴染とのフラグは立たないって。これは心理学的にも理由があるらしい。親や姉妹に発情しないのと同じだ。
「ほぅ……そういえば名を訊いてなかったな。何と申す?」
さて、どうしようか?
偽名を名乗った方が良いだろうけどそれをすんなりと言えるほど俺には詐欺師の才能はない。しょうがないから本名で良いか。
「姓は早川、名はミコト。どうぞお好きに御呼びください、公爵様」
「ミコト・ハヤカワ……?ハヤカワ家とは聞かぬ貴族だ」
そりゃそうだろ、ハヤカワ家なんてねえし。
「ではハヤカワよ。確認するが、貴様はチップを1000枚チャージする。そして、このワシに負けた時は夜を共にするのだな」
「えぇ、もちろんですわ。敗北の暁にはセ○クスだろうとイマ○チオだろうとSMだろうとレズプレイだろうとスカ○ロだろうと公爵様のお望みのままに」
遠回しにこのオッサンに付き合う必要はない。
だって負ける未来はないからな!
でもレズプレイには興味あります!激しくあります!
そういう未来はありませんか?
「では参加料を」
公爵が赤のチップを1枚払う。俺も同じく赤のチップを1枚払う。
「では手始めに黄色を1枚」
黄色?初っぱなから100万とは攻めるな
「ずいぶんと先走るのですね」
「この程度、普通なのだよ。それとも、臆したかな?お嬢ちゃん」
「いえまさか、少々、呆気に取られてしまっただけですわ……」
ここで俺はこのVIPルームに居る6人の他の存在しないはずの7人目の人間であるミシェルを見る。彼女は手をくねくねとしてこちらにサインを送っている。
そう、ポーカーの必勝法とはこれ、ミシェルに対戦相手の手札を教えてもらうことだったのだ。
ポーカーとは端的に言えば相手よりも良い役を作るゲーム。
そして自分の役が相手に負けていると思えば降りても良い。
ゆえに自分の手の内がバレてはいけない。
そのためにポーカーフェイスなんて言葉があるのだから。
しかしミシェルのおかげで相手の役はこっちに筒抜け。
だからこそ、俺が負ける要素はない。
えっと……公爵は6と9のツーペア。こちらは5のスリーカード。
つまり俺の勝ちだ。
すでに相手は100万ダラーを払っているから100万ダラーが手に入るのは確定。
ならば強気に攻めても良いだろうか?それともチマチマと行くべきか?
とりあえず150くらいに上乗せしてみるか。
「では青を5枚上乗せで」
「良いだろう、勝負だ。こちらは6と9のツーペア」
予想通りの役でありがたい!
「ごめんなさい、こちらはスリーカードなの」
支払った150万ダラーの倍の300万ダラーがこちらにやって来る。
たった一瞬で150万ダラーの利益。やっぱギャンブルって最高だな!
ベガスとか行ってみたかったぜ!
あそこは男の夢が詰っているらしいからな!
本物のストリップってのを見てみたかった。
変態?上等よ!男が変態で何が悪い!
「では次だ。今回はそちらが玉を投げてくれ。そしてワシは赤に賭ける」
親を決めるためのルーレットが回り始め、俺が玉を投げる。そしてルーレットは赤を示す。
「親はワシだな」
山札を取り、公爵は普通にシャッフルをする。そしてゆっくりと配る。
「こちらはノーチェンジ。貴様はどうだ?」
「……3枚チェンジ」
俺は山札から3枚引いたが、出た役は5と8のツーペア。
さてさて、公爵は……ストレートフラッシュ?
おいおい、このオッサンは正気か?もうイカサマを仕込んできたか?
何をされたのか全く分からなかったが、おそらくボトムディール(山札の底に強い役を揃え、自分にその役が揃うように自分にだけ底から配るイカサマのこと)でも使ったのだろう……。
ここは相手に不振に思われない程度で逃げた方が良さそうだな。
「私は赤を3枚」
「黄色を5枚上乗せだ」
マジか?マジで勝負に来たのか?
素人だから分かんないけどそんなにあからさまに強がれば気付くんじゃないか?それとも上級者はブラフと深読みするのか?
「ドロップです」
「そうか、意外と弱気なのだな」
公爵が俺を挑発してくるのだが、そんなことには乗らない。
挑発と分かっているからトサカに来ない。
「勇気と無謀は違いますよ。それに知っていますか?ポーカーの必勝法を」
「ポーカーの必勝法?そんなものがあるなら聞いてみたいものだ」
「簡単です。相手よりも弱い時は潔く降り、相手よりも強い時は大金を賭けて攻めれば良いだけのことです」
「そんなものが分かれば確かに勝てるな、分かれば」
バーカ!こっちは分かってるんだよ!
今のうちにエロい妄想を楽しんでおくんだな!!
おそらく奴の頭の中ではこんなことになっていたのだろう。
『……あっ♥ち、違う……か、感じてなんか……ふぁぁ♥……申し訳ありません、公爵さま。私の下品な雌孔に公爵様の熱くて太くて硬い肉棒を本能のままに挿れてください……』
『そうか、そうか、やっと素直になりおったか』
『……は、はい、もう我慢できないんです……。お願いですから犯して……♪わ、私に本当の快楽を教えてください……♥』
とかか?
……自分で考えて死にたくなった。
だって今の俺が言ってるんだぜ?
おいおい、自分の顔に惚れてないノンケの俺はこの女になった顔を見ても全く興奮しない。
……あれ?ノンケだったらこの顔に惚れた方が良いのか?
違うだろ、それは妹や母親に欲情するようなものだぞ?
「では、次は順番的に私がルーレットを選ぶ番ですね。黒でお願いします」
とりあえずゲームを再開しよう。
うん、別にオッサンと会話なんかしたくない。
俺も一応女ってことになってるから金貰いたいな。
水商売みたいに。今はレンタル彼女とか居るくらいだろ?
ルーレットが止まり、黒になる。今のところ、どちらも正解し続けているが、確率的に言えば12.5パーセント。あり得ないことではない。
「親は私ですね。では」
先ほど同様にリフルシャッフルをした。
「待て、ワシも山札を切ろう」
俺がイカサマをしているかもと思っているのだろう。
まぁ、別に良いだろ。親は配るだけなのだから。
山札を公爵に渡し、公爵が念入りにシャッフルする。気が済むまで混ぜた公爵が俺に返す。
ここで、イカサマをされてないかと疑いもう1度シャッフルするとダメだ、イタチゴッコになってしまう。
と言うわけで俺もセカンドディール(山札の上からではなく2番目から配る技のこと)を使わせてもらおう。
ぱぱっと、手際良く配る。ちなみにリフルシャッフルもセカンドディールもかなり難易度は高い。簡単にはできないだろうから習得にはそれなりの時間と労力が要るかもだぞ?
俺は子供の頃からこういうのが好きだから習得したけど、無論それなりの時間がかかった。
配り終え、俺は2枚チェンジし、公爵も2枚チェンジする。
今回の相手の役は6と10のフルハウス、こちらは……Aのフォーカード?
つまり今回は俺の勝ちになる。
「とりあえず黄色を3枚」
フルハウスにしては置きに来た感じがするな?
それならちょっと攻めてみるか。
「…………なら、こちらは白を1枚上乗せ」
「白!?」
白、1000万ダラーを躊躇無く賭けてみる。
これが無くなっても147万分のチップが俺にはある。
ここで負けたとしてもまだ戦える。
だから攻めたとしてもおかしくは無い。
頭は狂ってるかもだけどな。
「き、貴様!ワシの残りは1000万も無いのだぞ!」
「無いならチャージすれば良いではないですか?」
「な!?」
狼狽する姿が滑稽で面白い。まだまだ続けよう。
「良いですか、公爵様。こちらは財産のほぼ全てである1000万を賭けているのです。その上、このゲームに負ければあなたにこの体を支払う。さっきの行為以外にも野外だろうと尻舐めだろうと視姦だろうとなんでもやりましょう。こちらは遊びに来ているのでも接待に来ているのでもないのです。だったら、あなたもそれなりのものを賭けるべきではありませんか?」
「くッ!き、貴様!」
怒れ、怒れ。顔を真っ赤にして怒れば良いだろう。
それでも何も変わらんがな。
「さぁ、答えてください。賭けるのか?それとも降りるのか?どっちなんですか!」
強気に攻める。賭けてもらった方が俺としては都合が良いがそう簡単に乗ってはくれないのだろうか?
「……良いだろう、勝負だ!こちらはフルハウスだ!!」
「くはははは!こっちはフォーカードでございますよ」」
思い通りの展開になったことに歓喜して高笑いしてしまった。
悪いな、公爵。俺達の勝ちだ!!




