バカとポンコツのせいで酷い人生になるかと思っていたけど、ようやくツキがやってきたようだ。その壱
前回のあらすじ、
変態公爵をぶっ倒して金を手に入れようぜ!!
「メェエエイク、アッッップゥ!!」
出発前に忍とパティに盛大に化粧をお願いした。
今回は俺が女だという要素を存分に活かしたいと思っている。なのだが、なぜか忍のテンションが上がり数時間も時間をかけて丁寧に化粧をさせられた。
……女ってのはこんなに時間をかけてるのか?
大変だな。男なんて全然時間かけないし、かける奴だって多分髪のセットくらいだろ?
しかし、数時間もかけただけあり、顔は立派になっている。
素肌の微妙な色むら、毛穴、その他諸々がする前と後では異なっている。
眉毛や睫毛もいじられ、アイラインや口紅とそこまでする必要あるのか?と思えるくらいに丁寧にメイクされた。
「どうかな、ミコト。可愛いと思わない?」
「……認めたくはないが、今回ばかりはこの仕上げに高評価を付けておく。「化粧」とはよく言ったものだな。「化けて粧す」って。英語でも「メイクアップ」、「作り上げる」だからな」
「ま、まぁ……そ、そうだよね」
俺の「化粧」という概念の感想に苦笑するしかない忍であった。
というか、なんで男が化粧するのはあんなに変な風潮なのかね?
もっと広めたほうが良いんじゃないか?
あんな鳥の巣みたいなパーマをかけて「僕イケメン! フゥー!」みたいなのじゃなくてさ。メンズコスメ使った方が顔良くなる気がする。
関係ないけど、なんで髪の毛いじっただけでイケメンになれるのかね?
イケメンって「イケてる面」の略だろ?
なんで「イケてるメンズ」の略みたいになったんだろうか?
イケメンって単数形だろ?だったら「イケマン」じゃないか?
もしもイケメンが「イケてるメンズ」って用法が正しいならロッ○マンもパッ○マンもボン○ーマンもビー○マンもウル○ラマンも全部メンじゃねえか? イケマンじゃ語呂悪いからってバカな広め方でもしたのか?
「客観的に見て、顔面偏差値は高いと思われます」
(良いと思うよぉ~)
パティとミシェルにも褒められた。
べ、別にこんな女装を褒められても嬉しくなんかないんだからね!
てなわけで、化粧を終え、先日買ったレザージャケット等を着用して賭けポーカーをしている酒場へ向かった。
パティの案内で件の酒場に到着。パティはここで馬の見張りをしてもらう。
早速入ってみたはいいが、酒臭い。非常に酒臭い。臭いが服に染み付いたらどうしようかと思うくらいに酒臭い。
「いらっしゃいませ~♪」
場所に似合わない可愛い店員が水を持ってきてくれた。
もろタイプです!今がプライベートだったらお近づきになりたいです!
そんな勇気ないチキンですけどね……。
「ワインとそれに合うおつまみを」
「かしこまり~♪」
るんるん気分で店員さんはキッチン(?)の方に戻っていった。
……しかし、居心地の悪い場所だ。
いや、浮いてるんだろうな。
貴族様が出没するような酒場だと聞いたからそれなりに仕上げてきたのに、周りはゴロツキばっかりだ。
ゲロ以下の臭いがぷんぷんするぜー!
「み、ミコト?やっぱり帰らない?こんな怖いお兄さんたちが居るような場所はボクたちが来るような場所じゃないよ」
「『ミコト様』な?でも帰るわけないだろ。せめて10万くらい負けないと帰るつもりはない」
「損失が10万で済めば良いけど……」
なぜ、忍に俺を様付けで呼ばせたのかと言うと、今の忍は設定上は俺のメイドだからだ。パティのメイド服を忍に着せて、俺をミコト様と呼ばせるだけなんだがそれだけで良い。十分だと思う。
「お待たせしました~♪ワインとチーズでぇす」
さっきの店員さんがワインとチーズを持ってきてくれる。グラスが2つということは俺と忍の2人で飲んでくれと言う事なのだろう。
「おい、小娘。来る店を間違えてるんじゃねぇか? あぁん?」
ワインを飲もうとしていると赤のモヒカン野郎がこちらにガン飛ばしてきた。
秘密兵器で返り討ちにしてやろうと思ったのだが、
今の俺はおしゃれな女の子 (はぁと)
丁重に席に戻ってもらわなければならない。
「寝言は寝て言いなさい。ゾウリムシ風情が。そのション便くさい顔を洗って出直して来いや」
中指を立てて罵詈雑言を無意識に発していた。
しまった!本音が漏れてしまった!
「んだと!このクソガキが!」
マジギレさせてしまった。ここは
「ファッキュー! サノバビッチ!」くらいにしておくべきだったか。
本気で殴りかかってきたモヒカンの右ストレートを華麗に避けるとモヒカンは無様にテーブルとキスをする。
おぉー、こんなバカな展開、リアルで初めてめて見た。
アメリカのコメディドラマかって。
ドンガラガッシャンと騒音を立てたモヒカンに周りのゴロツキがこちらを見てくる。
「あ、あははは。面白い御方……」
作り笑いをするしかない……。
あぁ、なんかゲームオーバーな気がするぞ?
デッドエンドだけはやめて下さいよ?
お礼参りだけはやめて下さいよ?
「……なんだ? 騒々しい……」
奥の部屋からビール腹でハゲという救いようのないオッサンがこっちからやってきた。
「カオルーン公爵様!いえ、こちらの小娘がディックを……」
ディック(おそらくモヒカンのこと)を心配しているらしきゴロツキがカオルーン公爵とやらに説明する。
公爵ということは奥の部屋はVIPルームか何かなのだろう。
……ん?カオルーン公爵?
「ミコト様、カオルーン公爵ってパティが言ってた人じゃない?」
そうか、こいつが肉奴隷を地下に監禁しているクソヤローか。
よし!
「あなた様がカオルーン公爵様ですか。風の噂でお聞きしましたがここで賭けポーカーをしているそうですが私にもやらせてはいただけないでしょうか?」
精一杯淑女らしい口調で接してみる。
自分の声とは思えないほど綺麗な声である。
あれ?何この気持ち?もしかして、自惚れ?
「なに?貴様が」
俺の言葉を聞いた公爵が俺の体を舐め回すように見てきた。
正直言って気持ち悪い。虫唾が走る。
俺が男だからだろうか?
その点キャバ嬢とかすげぇよな。
最後まで営業スマイルだもん。
「……まぁ良いだろう。相手をしてやる。ただし、条件が2つだけある」
「なんでしょうか?」
「開始してからはどちらかが金銭的に負けるまでは終了しない。そしてもしも貴様が負けた時はワシの家で夜を過ごしてもらおうか」
『夜』と言う単語に吐き気がしてきた。
ここで言う夜とはただの夜ではなく性的な意味での夜なのだろう。
ふっざけんじゃねえよ!!ぶちのめしてやろうか!!と激怒したのだが、ここで自分を偽らなければならない。
さっきみたいなミスはこれからは許されない。
「私如きで公爵様のお相手が務まるかは分かりませんが、もしも私が公爵様に敗北したときはお相手させてもらいます」
直球で返した俺の言葉を聞いて公爵は気持ち悪くニタァっと笑った。
本気で顔を殴りたい!
こいつがッ、泣くまで!殴るのをやめたくない!
「……小娘、貴様の覚悟は理解した。こちらへ来い」
ハゲデブのエロ公爵に連れられて俺と忍はVIPルームに入った。
遂に始まる。俺のパーフェクトプランが。
おまけに相手は俺のことをネギをしょったカモだと思っている上に自分から逃げられない金網デスマッチを挑んできた。
後悔しろよ。
カモだと思っていた奴が実は空腹で機嫌が悪い肉食獣だったことをな。




