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幽霊少女の共犯者のおかげで一発逆転のチャンス到来!?その弐

 前回のあらすじ、

 賭けポーカーを企てて一攫千金を狙う。

「ご主人様、もう朝でございますが?」

 朝の日差しが部屋に差し込み、ベッドで寝ていた俺を襲う。

 そして、駄メイドことメイドのパティが俺を起こしに来る。

「あ?もうそんな時間……え?俺はいつの間に寝たんだ?」

「その件ですか。昨夜、湯船で転倒し鼻を強打し鼻血を出して気絶していたので応急処置をして、服を着せベッドに運んでおきました」

 ……あぁ、思い出してきた。

 昨日は確かミシェルを押し倒そうとしたんだけど……鼻血を出して気絶か……最悪だなぁ。

 慣れないことはするもんじゃないな。


 しかし、慣れない事をしないと永遠に独り身だぞ?

 大丈夫じゃないな、それは由々しき問題だ。



「すでに朝食は出来ております」

「……ご苦労様」

「恐縮です」

 一通りの事務的会話を済ませてパティが部屋から出て行く。

 ……まったく、家事に関しては文句がないんだけど……なぜ長所と短所が大きすぎるんだろうか……。

 プラスマイナス0なんだよ。



「おはよ~」

 ハムエッグをはむはむと食べながら挨拶をしてくる忍をスルーして俺は席に着く。

「あれ?なぜかナチュラルにスルーされた?ボク、何か怒らせるようなことした?」

「いや、なんとなくだ。特に意味はない」

「なら良いけど……ところで、何時に出かけるの?」

「出かけるって何処に?」

「寝惚けてるの?賭けポーカーで一攫千金するんでしょ?」

 そういえばそうだった。完全に呆けている。

 朝は嫌いだ。頭が回らないからな。

 低血圧だからと聞くがそうなのだろうか?


 鉄分を多く摂取すれば寝起きも良くなるのだろうか?

 よし!肉を食べようぜ!肉!



「てなわけで作戦会議である!」

「唐突だね」

「唐突ですね」

(楽しそうだね)

 俺のセリフに忍、パティ、ミシェルが同様の感想を述べる。

 なぜなのかね?今、賭けポーカーの話してなかった?

 パティとミシェルはともかく、お前は唐突と言うな、忍!


「主旨は『戦いに行くのではない、殺しに行くのだ』である」

「気分はまるで殺し屋なのかな」

 忍が俺の言葉にちゃちゃを入れる。

 面倒くさいな。

 こいつは非参加にしたいが、パティよりも忍の方が使えそうだから忍を使う。ここまで愉快な道化は珍しいだろうから。


「念のため、申し上げておきますが、賭けポーカーで身を滅ぼした人間は平民、貴族共に数え切れないほど居られます。その辺り、十分にご注意ください」

「無問題だ。今述べただろ?殺しに行くんだ。負ける心配をしながら殺しに行く馬鹿が居るか?」

「では、そろそろその策というのを教えてもらえますか?」

 良かろう、俺のパーフェクトプランはこうである!


 俺は数分かけて2人に策を説明した。

 けれど、パティは絶句し、忍は顔が青ざめている。

「意義あり!意義あり!!無理でしょ!昨日の1件があったからそりゃ勝てると思ってたけど、大博打じゃない!?」

 忍が激情的に非難してくる。

「負ける要素がないんだから賭け金は高ければ高いほど良いだろ?」

「だからなんでそんなに強気なの!?相手が力づくで襲ってきたらどうするの!?ミコトって特別ケンカが強いわけがないじゃんか!!」

「そのためにアレを取り返してきたんだけど?」

「……あぁ~」

 どうやら納得してくれたらしい。理解が早くて助かる。


「ご主人様、言われた通り、賭けポーカーをしている酒場は見つけてきました」

「見つけられなかったら話にならないぞ?」

 俺に活動報告してきたパティに皮肉を言う。

 見つけてくれないと俺の下準備が全て水の泡である。


「しかしそこに頻繁に出没しているらしいカオルーン公爵はかなり悪い噂が流れておりますが、本当に大丈夫なんですか?」

「悪い噂とは?」

「『イカサマの帝王』とか『口止め料で都合の悪いことを揉み消している』とか。

 一番の気分を害したもので『ポーカーで滅ぼした何人もの女性を肉奴隷として自宅の地下に閉じ込めている』というのもありました」

 おいおい……。最初の方はまだ分かる。

 だが、最後の方はどうなのかね?

 地下で繰り広げられている酒池肉林の宴。

 羨ま……ゲフンゲフン、けしからんクソヤロウだ!!


 しかし、肉奴隷か……夢があ……いや、なんでもない。何も考えていないぞ?


「み、ミコト?止めない?ボク、怖くなってきたよ?そういうヤクザみたいな人達に自ら近づくべきじゃないと思うよ」

「そうだな、ここが日本だったらお前の意見を聞くんだけど、俺たちには金がいる。もっと金がいるんだ。だから例え死地だと分かっていても、罠だと分かっていても攻めないといけない」

 そして、願わくば肉ど……いや、なんでもない。


「た、確かに異世界に飛ばしたのはボクのせいかもだけど、そんな命かける必要は……」

「……俺はな、お前にこんな世界に勝手に連れてこられたんだ。ぶっちゃけ、本気でお前を憎んでいる。だから最初、ここに来た時にお前に八つ当たりで蹴りを入れた。(加減はしてたが)

 だがな、お前の言うように『この世界を楽しむべき』なんだろうさ。だからこそ、俺はこの世界でハーレ……」

「ハーレ?」

 いかん、いかん。妄想が暴走してしまっていた。

 最近の俺は駄目だな。なんというか頭の中が腐ってる。

 ……溜まってるのか?

 このままだと逆セクハラで興奮してしまうような未来が来るかもしれない。それは駄目だ。駄目駄目だ。

 男とかそういう性別の次元じゃなくてその展開は人として駄目だと思う。


「なんでもない、噛んだだけだ。『噛みまみた』ってやつだな」

「そう?」

 疑問符が生まれていた。

 ……付き合いが長いから今の俺が噛んでないと思ってるぞ?


「ともかく、この世界で暮らすのだから生活水準には妥協したくない。こんな立派な屋敷が手に入ったんだ。それを失う必要がどこにある?」

「いや、だから命をかける理由には……」

 どうやらまだ納得してもらえないらしい。

 仕方ない、面倒だけどちゃんと説得しないとな。


「あのな、お前は後何年生きてられると思ってるんだ?」

「へ? いや、そりゃ今20才だから60年くらいは……?」


「パティ、この国の平均寿命は?」

「だいたい45才くらいです」

「はへ!?」

 俺の質問に答えたパティの言葉を聞いた忍が素っ頓狂な声で驚愕する。

 やっぱりな。技術が進んでないのだからそんなもんだろ。


「分かったか?俺たちはもう人生の半分くらいは生きたことになる。なら、どうする?まだのんきに時間を浪費するか?そんなくらいなら日本で奴隷のように働いてた方がマシだろさ」


「やだー! 死にたくないー!」

 俺だって死にたくないさ。

 俺みたいに物語の主人公が異世界に召喚されたりするのってどうなんだろうかね?あれか?魔法使いって白髭のじいさんのイメージだからか?

 それとも現代でもガンや事故で早死にしてしまったりするから構わんのかね?


「大丈夫です。お嬢様、基本的には50弱ですが、医師や薬に頼れば老齢まで長生きできるかもしれません。もちろん、お金が必要ですが」

 あ、医学はそれなりにちゃんとしてるのね。

 でも、金か。結局金か。どっちにしても金が要るな。


「というわけだ。忍、お前はどうしたい?

 このまま現代社会人以下の生活しか送れない平民同様の生活を送って短命な人生を送るのか、それとも危険を承知で虎の穴を攻めて長生きしながら悠々自適に暮らすのか。好きなほうを選べ」

「その選択肢なら、もちろん後者だよ」

 ですよね~。




「お嬢様、カモミールティーです」

「ありがと」

 ミコトがミシェルとインチキの練習をしている中、ボクは心拍数を少しでも減らすためにパティに精神安定の効果があるカモミールでハーブティーを作ってもらった。

 ……まだ、作戦開始前だって言うのに心臓がドックドク言ってるよ。


「お嬢様、失礼を承知で質問してよろしいでしょうか?」

「何かな?」

「ご主人様は本当に役に立つのですか?」

「たぶんね……たぶん」

 『虎穴に入らずんば虎子を得ず』とは言うけど、心境的にはドラゴンの巣からタマゴを盗んでるような気分……。

 あれ?なぜか今の表現だと難易度が低い気がするなぁ?

「……私はこの仕事を気に入っています。ご主人様は人としては嫌いですが、雇用主としては非常に良い人物だと思っております。ゆえにあのように早まった行動はやめてもらいたいのです」

「う~ん、ミコトはああ見えてというか見たまんまというか頑固者だからね」

「しかしながら……」

 そりゃね。ボクだってできることなら平和的に生きていたい。

 平和的にミコトと適当にふざけあって遊んでいたい。

 けど、この事態に陥ったのは誰の責任なんだって話になってしまう。


「パティ、自分のことを棚にあげての説教になっちゃうけど、ミコトがあんなに辛い目にあってるのはボクと君のせいなんだよ?パティが女王に騙されずに9000万も使わなかったらもうちょっとゆっくり生きられたかもだし」

「それは……その通りなのですが……」

「大丈夫。ボクはミコトを信じているから」

 今回ばかりは不安で仕方ないけどミコトと一緒ならきっとなんでも解決できる気がする。

 ……違うか。ミコトならなんでも解決できる気がする、があってるかな。

 ミコトは最善手を選択するわけではないけど、最悪の結果にだけはならないってボクはそんな気がするんだ。

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