幼なじみの黒魔術にしぶしぶ付き合ったら理解できないことが次々に起きてしまった。
「ミコトー!!日曜の朝から遊びに来たよー!!」
とある月のとある週の日曜日の午前7時、俺の幼馴染(女)がこんな朝早くから俺の部屋に突撃してきた。
彼女は忍。たまの休みに人の部屋に無理矢理入ってくるようなフランクというか気さくというかデリカシーがないようなそんな少女。親友である。けれど恋人ではない。ここ、重要だからね?
そんな幼馴染が日曜の朝から俺の部屋に来る理由はだいたい察している。
それはこいつの趣味が黒魔術だから。
勉強が大嫌いな忍は超常現象などに中学生の頃に興味を持ち、それ以来このように日曜の朝から俺の部屋にやって来て、俺の休みを破壊するのだ。
ザ・ピースブレイカー忍。不評ながらも公開中。
興行収入0円の問題作!
などと言う冗談は置いといて忍の相手をしてやらねばならない。
しなければとても大変な展開になってしまうだろう。
「……おはよ、そしておやすみ……」
「ちょ!?ちょちょっと!!なんでこんな可愛い女の子が部屋に来たのにそんなに冷たいの?」
「お前が俺の部屋にやって来ても青春が始まるようなイベントが起こらないからだよ。少しは恋愛に興味を持てよ……」
「恋愛?なにそれ?そんなのに力入れてるのは『皆がヤってるから私も』なバカ女達でしょ?あいつらは男をブランドバックか何かと勘違いしてるんだよ。ボクは君をそういう目で見たくない。純粋にこの『友情』を大切にしたいんだ」
などと聞こえは良いがようは都合が良い遊び友達が欲しいということなのだ。
うん、それはそれで良いだろう。
日曜の朝にアポ無しで突撃するような幼馴染じゃなければ俺も喜ぶんだけどな。
だって親友だもん。
親友から恋人へのクラスチェンジイベントはないみたいだけど俺はこいつに恋してないから問題ない。
「ま、いいけど。どうせこのままじゃ何言ってもお前はきっと出て行かないんだろ?とっととやりたいことやって二度寝させてくれ。昨日(正確には今日)は2時に寝たんだから」
「全く、ちゃんと早寝早起きしないとダメだよ」
め!と子供を叱るお母さんみたいに怒られる。
なぜだろう、早寝早起きをしていない学生なんていっぱい居るだろ。
今はSNSとかで友達と一日中繋がってるんだし。
メールや電話で夜更かしなんて珍しい話ではないはず。
「さてと、お寝坊さんは無視してこちらも作業させてもらいましょうか」
我が物顔で俺の部屋にチョークで変な魔法陣を書き出した。
誰が消すのかね?この魔法陣。
いや、俺以外に居ませんね。知ってた知ってた。
魔法陣を書き終わった忍はなんだか摩訶不思議な呪文と変な踊りをしだして最終的に『ぱぱらかぽぽん!』と言って〆た。
乙女が何やってるんだろう……。
バカな子ほど可愛いって言うけど、ここまでバカだと哀れに思う。
こいつと結婚する男が可愛そうだ。
俺の可能性?
いや、こいつに異性と認識されてるか危ういし。
…………ん?なんだろう?
気のせいかもしれないけどなんか熱くないか?
……気のせい?いや、間違いなく蒸し暑くなって来てる……。
熱くて暑い、非常に不愉快です。
「ミコト、なんだかこの部屋蒸し暑くない?ボク汗かいてきたよ」
ふぃ~っと胸元をパタパタさせる。健康的な鎖骨がちろちろと見える。
エロかわいい、が、その程度で欲情はしません。
もうちょっとサービスが欲しいです。
最近の若者はもう少し過激なモノを好むのですよ。
「お前もか、なんだろうかね?この蒸し暑さ」
「ちょっと換気するよ。窓開けたらちょっとは涼しくなるかも」
「お、頼むわ」
忍が換気するために窓を開ける。
そして俺は目の前の風景が信じられなかった。
俺の窓からは隣に建っているマンションが見えるはずだ。
見えるはずなのに……。
カポーーーン。
マンションが見えるはずなのになぜかそこは湯気が充満した大浴場であった。
おまけに沢山の裸の女性が2.30人……え?なにこれ?
「キャーーーー!!変質者よーー!!」
悲鳴と共に桶やシャンプーボトルが投げられ、クリーンヒット!
顔面に直撃!効果は抜群だ!!
HPが0になった俺は眠るように倒れた。
気を取り戻すと、四肢の自由を奪われていることに気付いた。
どうやら簀巻きにされてるようだ。
……簀巻き?
簀巻きなんてマンガでしか見たことないわ。
「はろはろ、お目覚め?」
俺と同様に簀巻きにされてる忍を見つけた。
しかし、こいつは随分と元気そうに見える。
俺とは違い、気を失っていなかったらしい。
「……おはよ」
なにやら声が高くなってきている気がするが気のせいだろう。
「実はかなりヤバイ事態になって来てる……」
「そりゃ簀巻きにされてる状況よりもヤバイ状況ってのはそうそう思い浮かばないけど?」
「コントしている余裕は無いんだ、実は……」
ピカっと照明が俺の目を襲う。うわっ!まぶし!
「目が覚めたか、変態よ」
妙に気迫が篭った声で誰かがこちらを変態扱いしてる。
心外だ、俺は至って平均的である。
忍を変人というならまだ分かるが。
眩んでいた目が回復するとそこにはアラブ諸国の成金が好みそうな真っ赤なドレスを着ている、年は30前後、髪の毛はくすんだ金色をしている女性が偉そうに座っていた。
ガキ大将でもここまで偉そうにはするまい。
威圧している、こちらを冷たい眼光で威圧している。
「何かようですか?」
「端的に訊こう。貴様等は何者だ?」
女性の質問の意味が分からず忍を見てしまった。
「……真面目に答えてくれ。これ以上、今のボクには発言権がない」
忍は脂汗を流しながら答える。
しかし、その目は泳いでいた。
花瓶を割ったことがバレて言い訳を考えている子供ような目をしている。
「さぁ?何者なんでしょうね?自分ではただの学生だと思いますが……」
こういう場所では相手に主導権を取られないように強気で行かなければいけないと聞いた事がある気がする。
「貴様!女王陛下になんという発言を!!」
「……は?」
野太い声で俺は怒鳴られた。
女性の周りに剣などで武装した中世の騎士のような格好をした男が居たことに気づく。
どうやら俺を怒鳴ったのはそこにいる男なのだろう。
忍を方を見てみると目で「ら、らしいよ?」と語っている。
い、意味がわからねぇ……。
えっと?朝起きると幼馴染が部屋に突撃してきたと思ったら簀巻きにされて女王に尋問されてる?
なにこれ?この状況って夢なんでしょ?
起きたと思った今が実は夢でその内覚めるんだろ?
知ってる知ってる。
この間、そんな感じの夢見たから今日も同じようなことなのだろう。
「ふざけるでないぞ?小娘」
女王様(仮)は俺の発言にご立腹らしい。
……はて?小娘?俺のことじゃなかったのか?
忍は何かおかしなことをしていたかなと思い彼女の方を見たが。
「貴様だ、貴様。小娘、名を名乗れ」
…………???
まさかとは思うけど俺?
驚いたわ、まさかこの年で性別を間違えられるとは思わなかった。
こいつどうかしてるぜ、と俺は気づかれない程度に嘲笑する。
「自分のことを言っているのですか?申し上げ難いですが自分は男なのですが?」
「男?何を言っている?どうみても女ではないか?」
……はぁ?さすがにそれはないっしょ?
「衛兵、鏡を持って来い」
などと女王らしい人が衛兵とやらに命令して鏡を持って来させ、兵が俺の顔を映す。
そこには女子が居た。
ボーイッシュな感じと言うべきか、俺に似てる妹が居たらこんな感じなんじゃないかなと思うような少女が居た。
それだけならまだしも、その少女は俺と左右非対称に動く。
鏡だから当然……というか、俺?俺がこの娘?
「ミコト、なんかごめん。気付いたら君、女の子になってたよ」
……………………っふっざけんじゃねぇぞ!!このバカが!!




