第6話 編入準備
今回もよろしくお願いします。
作文:きすけ
文章監督:けん
時に、系歴百二十七年、四月。
1. ~編入準備~
ハワイ奪還作戦が発表されたその日の夜、家族の二人増えた神崎家では、彼女らの編入手続きの準備をしていた。もちろん、海条学園にである。
「結局私は、ずっとここなのね」
真広によって少しずつ埋められていく編入手続き用紙を見つめ、ぼんやりとフレイが言った。
「嫌なら出てっても良いんだぜ」
「そんなこと言ってないわよ」
真広は二人分の用紙へと書き込みを続ける。途中、難しい書類の表現に顔をしかめながら。
本来ならば、これは両親のする仕事である。戦時の世の中、両親が死に、こんな状況になっている家庭も多い。真広はうるさい親がいなくて楽だ、と強がって言うが、親のいない家庭というのはかなり大変なのである。
「――住所はウチでいいし、あらかた書くことは書いた。あとは……」
真広は用紙の最後のページを開いた。
【質問1:編入生徒は能力者ですか。】
【はい/いいえ】
【『はい』の方は質問2へお進みください。】
【質問2:編入生徒の能力とそのランクを以下の欄に記入してください。】
この世界の能力者には、能力ランクというものがある。能力の強さ、優秀さでランク付けをする、というシステムだ。ランクは低い順に『D(能力者の家系における無能力者)→C→B→A→S』まである。
例えば火の能力者だとする。CやBの能力者は『マッチ』や『木』など、燃える物質を手にしなければ火を出すことができないし、火も小さい。それに比べAとSは、何も持たずとも強力な火を出すことが可能なのだ。
特にSランクの能力者は特別で、火、水、地、風、光、闇、の六つしかなく、もちろんSランク能力者も6人しかこの世に存在しない。
また、Sランク能力者の能力は、覚醒すると世界を滅ぼす事ができるほど、能力としては強力なものを持っているが、それを使いこなせた者は未だにいなかった。
無能力者とは言わずもがな。レイナのような、能力者の家系で生まれた能力を持たぬ人のことだ。これも世界では珍しい。
「お前の能力はなんだ?」
「私は火を使えるわ」
フレイは掌で火の玉を浮かせながら真広の質問に答える。
「すげーな。何も使わずに。ランクは?」
「わかんない」
「まあ、これならA以上だろ。家燃やすなよ」
半ば感心しながら、そしてわかんないと答えたフレイに溜息をつきながら、真広は用紙に記入した。
「次は七海、能力教えろ」
「……わかんない」
「――は? お前もかよ」
「私……能力わかんない」
「もういいから」
七海は弱い困ったような表情で真広を見つめている。
「――じゃあ仕方ねえ、能力無しにしとこう」
レイナが居たら止めただろうが、今は外出中。こういう時は慎重にと、大人なら分かったはずだ。
真広は何事もなかったかのように『いいえ』に丸をつけた。
つづく
プロローグらしさ満載の第六話でした。
脚本に関する修正は他の話に比べて格段に少ないです。
(けん)
次回は悠平側ストーリーです。
よろしくお願いします。