第2話 旧校舎図書室
今回も、よろしくお願いします。
作文・台詞監修:きすけ
文章監督・演出・投稿:けん
なぁ明日香。
「どうしてあんな歌詞を書いたんだ?」
1. ~旧校舎図書室~
時に系歴百二十七年四月。
夕暮れ。
海条学園の旧校舎。
その図書室には二人の女子がいた。一人は机の上に座り込み、夕焼けがかる外の景色を眺めている。肩にかかるかかからないかのショートヘアで、女子制服の袖を肘の上までまくっていた。スカートは短めで、ややサバサバとした感じのボーイッシュな女子高生、だ。
「愛結……どうしてそれを?」
明日香と呼ばれたもう一人の女子高生は、そのボーイッシュが座る机の椅子に腰掛けていた。同じようなショートヘアに、この学園には似合わない妙なメイド服を着ている。ティーポットで自ら注いだ紅茶を飲んでおり、不思議な雰囲気を醸し出していた。
「杉谷香奈に聞いた」
メイド服の風見明日香は紅茶を飲み干し、
「――あの歌詞は、折笠悠平に伝えるべき事を書き記したもの」
と、派手なメイド服とは裏腹に落ち着いた、単調な声で答えた。
「ラブレターか?」
――でも、明日香の能力なら、思いを伝える前に結果がわかりそうなものだけどな。
さっき愛結と呼ばれた女子高生は呆れた口調でなげかける。
「そうだけど、そうじゃない……私は伝えなきゃ、いけない、ことが、あるの」
明日香は突然に声を震わせた。
いつも淡々としている明日香が、こんな表情を見せることは滅多にない。愛結は、並々ならぬ何かをこの風見に感じていた。
「どういうことだ?」
「あの人は……悠平は、もう、だめなの。このままじゃ……もう……だから……」
今にも泣き出しそうなその声を聞き、愛結は慌てた。ここから先を彼女に言わせてしまうと、この風見明日香を監視・保護する立場である私は、契約違反となってしまう。
愛結は、明日香を胸元へ引き寄せた。
「もう、これ以上何も言うな」
風見明日香は、未来と現在、そして過去の自分と記憶を共有し、全てを知ることができる。
だが、この世には知らない方が良いこともあるのだ。
明日香。
私がそれを聞く必要はない。
「例え、この先に何が待っているとしても、私は明日香の見たような未来など考えず、自分の望む未来を歩む。これは約束だ」
だから、余計な心配をするな。
愛結は明るくまっすぐな笑顔で、瞳を潤ませた明日香の頭を撫でた。二人の間を静かな時間が流れる。外は夕暮れ。烏が二羽、羽ばたく。
「うん……信じてる」
頭に乗った愛結の右手を優しく見つめ、明日香も笑顔で返した。夕焼けはまだ鮮やかな赤色を残している。夕陽そのものは既に沈みかけているのであろうが。
「ねぇ、愛結」
もしさっきあなたが
私を止めなかったとしても
「私、もう未来のことなんか、話さないからね?」
ここから出られない私をずっと
守ってくれてるあなたを
「裏切ったりなんか、できない」
だけど、あの人は、特別なの。
旧校舎の古い図書室。
そこには、名前も、著者も、そして内容さえも、誰も知らない本が置かれているという。
それは
この学校の歴史であり
風見のみる歴史であり
そして
明日から訪れる歴史であった。
つづく
いかがでしたでしょうか。
僕はこの展開、好きです 笑
どころがどっこい…というところも含めて、今後に深みのある回だったと思います。
次回も、よろしくお願いします!
(けん)
改稿メモ〜
9/13:第三話次回予告追加
9/15:サブタイトル変更テスト
9/29:ほぼ何も変わってません。
10/31:パート分け演出変更
12/7:台詞を若干調整しましたが、ストーリーに変更はありません。
12/18:第三話サブタイトル変更に伴い、次回予告を変更、また、予告自体も作り直しました。
〜2014〜
3/31:推敲
5/20:推敲
〜2015〜
1/10:冒頭