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【未完】二人の時空間転移者 〜DOUBle Travelers~ 第1版  作者: ダブトラ企画。
二年生篇 PART-1
3/23

第1話 いつかみた日々

よろしくお願いします。


作文:けん

 時に、系歴百二十七年。四月。



 チャイムが鳴り響き、海条学園の午前中は終わった。クラス委員が号令を掛けると、二年C組の生徒は眠たそうに起き上がる。


(すすむ)、左から帰ろう」


 教室を出るなり、折笠悠平は小さな声で言った。袖まくりをした白とオレンジのジャージは、悠平が午後からの『選択科目』で選択する『機関技術研究科』のグループカラーだ。そこから、やや筋肉質な腕がのぞいており、髪型や身長、容姿に一年前からの大きな変化はない。


「嫌だよ。そっちは三年生の教室の前を通るだろ?」


 この隣の幼馴染は、いかにも嫌そうに返答する。山崎(やまざき)(すすむ)が選択している戦術科は、なかなか上下関係が厳しいので、多くの下級生は先輩と校内で出会うことを避ける傾向にある。


「今日はこっちの気分なんだよ」


 乗り気じゃない将を半ば強引に引っ張り、教室を出て左方向へ向かって歩き出す悠平。だが、気分でこっちを選んだのではない。


 移動教室で人のいない三年D組の教室を過ぎ、休憩でざわつく三年E組の教室の前を通り過ぎる。将が案の定先輩に絡まれている間、悠平はチラと中を覗いた。そう、一番の目的はその人。その女子高生は、隣の男子生徒と談笑している。


 俺と話しているときより、なんだか、楽しそう……



「なら、旗艦は体当たりで潰せば問題ないな」

「そんなのアリかよ!?」



 悠平は心の中で舌打ちをし、先輩に絡まれている将を置いて、妙な早歩きでその場を去った。後ろから将の呼び止める声がするが、そんなものは苛立った悠平の耳には入らない。


 長身で黒髪、ポニーテール。一年前と何も変わらない女子高生。悠平にとっては居候先の家族であるので、本来は姉のようなものであるが、彼の気持ちはそうではない。

 彼女の胸には『海条学園高等専門学校 戦術科-A 杉谷香奈』と書かれた名札が掛けられていた。



 折笠、どうして声かけてくれないの……?



--------------------------------------------------


「だーかーらー、ちょっとでも嫉妬すりゃそれは恋だ、ってのに」


 悠平は頭をコンコンと小突かれる。目の前には、うんざりしたように腰に手を当てて立つ女子生徒。


「そんなもんですかねぇ」


 ボーッと考え込む悠平。


「それが、人間ってもんよ」


 悠平の所属する機関技術研究科の一つ上の先輩、吉岡(よしおか)ミナには、よく相談に乗ってもらう。いつも上から目線で面倒そうな対応だが、案外相談に乗りたがっているような節もある。


「あ、そうだ、吉岡さん。今度、試作機の設計図をチェックしてもらっていいですか。飛ぶやつ」


 吉岡ミナは、物理シミュレート能力を持つ能力者である。この能力を持つ者は、科学者が考えたアイデアを実現すればどうなるか、シミュレートすることができる。その代償として、自分で創造的なアイデアを考え出すことが出来ない、というデメリットもあるが。


「私が暇ならね。じゃあ、また」


 そう言って自分の研究室へ去っていくミナに、悠平は軽く一礼をした。



「……ゆう、こんなところにいたのですか?」


 悠平の背後から声がした。


 ゆう。俺をこんな呼び方で呼ぶのは、多分この世でたった一人だけ。


「オーケストラの集まり。忘れてないですよね? ね?」


 松崎(まつざき)佑莉(ゆり)。去年の軍事演習大会では通信士を務めていた。あの時は眼鏡をかけていたが、最近高い金を出して能力者に視力をなおしてもらったらしく、眼鏡はいらなくなったとかなんとか。将と同じく、悠平が本土日本に住んでいたころからの友達であるので、幼馴染と言っていいかもしれない。


「例の作詞作曲の打ち合わせ、まだだけど」


「あれ?今日だっけ?」


 佑莉はあきれた表情になった。それくらい覚えときなさいよ、と言われ、悠平はえへへ、と笑う。


 彼女に引っ張られるように、B校舎の講堂ホールへと向かった。折笠悠平は、部活はオーケストラ部、通称『海条学園交響楽団』に所属している。今度の総合音楽コンクールのテーマは『鎮魂』であるので、海条は合唱部とのコラボで鎮魂歌を発表、というわけだ。



--------------------------------------------------


「――で、風見さんによる原詞のドイツ語翻訳は誰に頼もう?」


「この学校でドイツ語が話せるといったら……赤碕(あささき)(しょう)? いや、相原(あいはら)さんもか」


 ここでも悠平は香奈と一緒だ。

 オーケストラ部の部長は神崎レイナ、副部長が香奈。それはちょうど、軍事演習大会とは逆の関係である。


「原詞見せてもらってもいい?」


 オーケストラ部で打ち合わせをするとき、悠平は決まって香奈の隣へ座る。悠平はこの企画で、レイナとともに作曲を担当しているので大体の雰囲気を掴んでおかなければならない。


 話によれば、原詞は随分と『奇抜な』内容にしてあるらしいけど。



 ~君へのうた、たたえる歌~


 作詞:風見明日香


 海の向こうで眠る魂よ


 遠ざかる海の彼方 君は聞こえているか


 ああ、永遠に眠れ 君を讃えよう


 そして、我々は決して 君のことを忘れない


 1.

 ある朝 日が昇ると、月は沈んだという


 空を鳥が舞う そこに、二つの流れ星


 太陽が空を照らす 気づく者はいなかった


 2.

 ある夜 星空の中に 鳥が落ちたという


 闇に囲まれた そこに、希望の光


 たどり着いた先 星は輝き続ける


 3.

 ある日 月と太陽は消えた


 空から鳥は消え 希望はなかった


 儚い夢のスキマ それでも宇宙は変わらない



 そう 君がくれた希望


 明日への道を 照らしてる


 讃えよう 讃えよう


 そして、我々は君のことを決して忘れない。



 *こんなので、どうですか? あすか



--------------------------------------------------


「難しいね。曲作りとして、壮大な方が良いかもね。香奈はどう思う?」

「弦楽器多めの編成がいいと思うんだ。壮大というより、余韻を持たせる感じでゆっくり」「ゆっくり?」


 レイナと香奈はきちんと打ち合わせを重ねているが、悠平は、椅子へ力なくもたれかかっていた。なんでだろう、考えが浮かばない。


 詞から、何か妙なものを感じたせいかもしれない。それとも、実力不足かな。


 というかそもそも、風見明日香って誰だっけ?



つづく

2話は僕の相方、きすけくんが今作品初作文です!

とても良い作品に仕上がっています!

次回もよろしくお願いします!

(けん)


次回:第二話『旧校舎図書室』

作文:きすけ



〜改稿メモ〜


9/13:第二話次回予告、つけてみました。

9/15:サブタイトル変更テスト

9/29:改行入れただけです。

10/31:パート分け演出変更

11/9:微調整、後書き編集

11/19:文章校正

12/7:文章を調整、ポエムも少しだけいじりましたが内容は変わっていません。改稿メモを前書きへ移転しました。

〜2014〜

3/31:推敲

5/20:推敲

11/9:推敲

〜2015〜

2/7:リニューアル

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