第17話 次元の狭間に 【打ち切り】
折笠悠平側ストーリー最新話です!
作文:けん
7/9:相原さんの名前変更
1.〜混沌の海へ~
「うひゃー」
大地は恐怖を通り越して苦笑いをしていた。
――これが、マルツの主力艦隊か……
緑輝く次元空洞内の『海』には、マルツ海軍の主力艦隊がズラリと並び、観艦式か何かの類のようであった。
「重力反転を切りましょう」
レーダーに映る艦影を眺めながら、大輔が提案した。大輔はやや震えながら、レーダーパネルに手をかけていた。
「エンジンを切り自由落下すれば、敵には気付かれ難い筈です」
なるほど、と戦術科の男は頷く。
「よし。エンジン停止。重力反転解除を要請」
佑莉は簡単な信号電文を武蔵に送った。
要請は直ぐに承諾された。
落下、10秒前。
佑莉は次元空洞内の海を見た。見上げた。
この空間には緑色の光が満ちているが、マルツの艦隊が並ぶ海は、虹色の液体が更に混ざったような形容し難い色をしている。
――あそこへ……落ちるんだ。
カウントダウンは減り、次第に終わりへと近づいていく。
「システム、オフ!」
魔法陣に支えられていたあきつしまは、重力反転解除と共に、海へ向かって落ちた。
「艦体維持!」
フリーフォールばりの落下に、乗り組んだ4人は歯を食い縛る。戦術科の男・相原義和の指示に、大地は何とか応えようと、その顔を歪ませる。
「間もなく海面」
せめてもの抵抗と、バーニアを噴かせ魔法円のパラシュートを浮かべる<あきつしま>。そのスピードは徐々に収まり、あきつしまは混沌の海へと着水した。そして、この内火艇は、海を渡る船としての役割を取り戻した。
「旗艦を叩くか?」
そう言って相原は大地を見る。
「旗艦など構うな。全ての艦船の機関にダメージを与えて、この空洞から出させるんだ」
大地は舵を握った。
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2.〜生徒自身の決断~
「三英連合艦隊より入電。『我、敵艦隊を撃破。これより敵基地への上陸作戦開始、奪還行動へと移行する』とのことです」
リスクを冒したはずの八神の作戦は、予想に反して順調過ぎる結末を迎えようとしていた。三笠と英国の主力艦隊を連合した大艦隊の力で、マルツのハワイ連合艦隊は壊滅。ハワイ奪還は目前となった。
内火艇を次元空洞内へ押し込んでから、1時間が経つ。空洞内の重力反転を切って以降、内火艇との連絡はとれなくなっていたが、敵の攻撃は着実に減りつつある。武蔵はひたすらにその回避を続け、内火艇の報告、もしくは機関にダメージを負った敵艦が通常空間へ出現するのを待っていた。
「遅い」
八神は唸る。艦橋メンバーも、次第に苛立ちが募ってきた。
そのときのこと。
艦橋の扉が開くと、『山崎くん!?』というユイの驚いた声が響いた。彼女の声に、艦橋の皆も驚いて、扉を振り返る。
そこには、悠平に右肩を支えられた将の姿があった。
「山崎、無茶をするな!」
八神が将を制す。それに対し、口を開いたのは悠平の方だった。
「やらせて、あげてください。将は、この艦の戦術長です」
「しかし怪我人に指揮をとらせるわけには……」
たじろいだ八神をみて、将は歯を食い縛り、一歩前へ踏み出した。右肩を支える悠平の手をそっと外し、赤く染まった右足を床へ。
「できます。やらせてください」
その目は、誰もみたことのない目。将が、誰にも見せたことのない目。
懇願の思いを。決意を。
そして、
大好きな佑莉を守りたい。その気持ちを、目力に込めた。
「――席はある」八神が言う。
「だが、無理はするな」そう続ける。
八神は、視線を落とした。
「回避行動中止」すると、八神の声がやや震えた。唾を飲み、そして、大きく叫んだ。
「総員、戦闘配備!」
再び歪みだしたレーダー。そのうねりの中から、熱を帯びた光点がひとつ。ふたつ。みっつ。
軍人・八神は、それを見逃さない。
つづく
ありがとうございました。
『二人の時空間転移者 ~DOUBle Travelers~』、こちら側の一方的な事情ではありますが、リニューアルすることになりました。
ストーリーはそのままに、設定の半数を一新した改訂版を現在製作中です。
大変ご迷惑をおかけしますが、このページにある『二人の時空間転移者 ~DOUBle Travelers~』はここで打ち切りとさせてください。