第8話 警告
今回も、よろしくお願いします。
作文:きすけ
文章監督:けん
〜改稿メモ〜
10/27 第九話次回予告、つけました。
10/31 パート分け演出変更
12/7 改稿メモを前書きへ移転
1. ~警告~
悠平の奴、まだ帰ってないみたいだな。
登校IDのパネルが置かれた生徒玄関入口。この学校では、生徒の登校状況はID付き生徒証明書と指紋認証の二重構造で管理されている。校内の要所には登校状況を示したパネルがあり、真広の居る生徒玄関はその一つだ。
音楽室の灯りが点いているところを見ると、あそこかな。
時に系歴百二十七年。四月。今日は少し雲がかった昼間であったが、夕方からは晴れ間がのぞき、好天となっている。真広は赤崎愛結に呼びだされ、まだ学校にいた。
しかし愛結のやつ、遅いな。
真広は再び、三階の音楽室を見上げた。
あそこで時間でも潰すか。愛結の仕事だっていつになるかわからないし。ってか、あいつどこにいるんだ。呼び出すなら場所くらい指定しろよ。
真広はため息をついて、中庭を渡り、文化部校舎へと向かった。階段を何段も上がり、三階にたどり着く。
しまった。香奈さんも一緒か。考えてみればそりゃそうか。
悠平はピアノが弾けない。それなのに今、この部屋から美しい音色が聞こえるということは、杉谷香奈もこの場にいるのに違いない。そう真広は思い、一瞬入るのを躊躇した。
ちょうど真広が一歩、扉へと近づいた時である。
「おーい!」
まるでタイミングを見計らったかのように、愛結が駆けてきた。
「待たせて悪かった」
「――すげえタイミングで来たな」
そもそもなぜここが分かったのか。
真広に対し、そうか?と愛結は笑う。この男子生徒が音楽室に入るのを止め、廊下を歩き出すと、愛結もそれに倣った。
「で? 用事ってなんだよ」
「単刀直入に言おうか」
二人はちょうど、文化部校舎と防衛部校舎を繋ぐ、渡り廊下へと差し掛かろうとしていた。
「もうあの事件を追い掛けるのは、止めろ。それだけだ」
愛結のその言葉を聞き、真広は立ち止まった。一瞬目をつむり、渡り廊下から外を見渡す真広。
「やっぱりそれか」
愛結に呆れるのが半分、またあのことを思い出し、心穏やかでないのが半分。そう思いつつ、
「――大切な父さんと母さんを殺されてんだ、どんな手をつかってでも犯人に復讐する」
と続けた。
「あいつには、まだ言ってないのか」
「姉貴に言うわけねえだろ……世間様一般的には事故だからな」
真広は胸で煮えたぎるものを感じた。この事を思い出した時、いつも感じるこの感情。
絶対に……!
愛結は立ち去って行く男子生徒の後姿を見つめ、表情を落とした。
つづく
次回も、よろしくお願いします。
(けん)