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9-夢
「綺麗だね」
香苗が空に咲く花を見上げ、微笑んだ。
わたしは、
「そうだね」
と返す。
空は今や輝きを取り戻している。花火という光だ。
瞬く光は黒を濃紺まで薄め、そして再び闇を戻す。
それでも――綺麗だった。
「ほら――怖くない」
「そうだね。怖くない」
太陽は半分だけになってしまったけれど、それでもきっともう大丈夫。
だって、暗闇の中には外敵も幽霊もいないんだもの。
「ねえ香苗」
「うん」
暗闇の中にはね――。
「光しかないんだよ」
そうだね、と香苗が優しく笑う。
だから――。
もう大丈夫。




