7-夢
ドン――と大きな大きな音が鳴った。
空が、妖しく怖い空が、一瞬だけ発光する。
――花火だ。
濃紺色に、大きな花が咲いていた。
わたしは立ち止まり、じっとその花が散るまで空を見上げた。
肩で息をしている。ちょっとだけ、疲れた。
――お婆ちゃんも見てるかな。
そうだ。早くいかないと。
祖母は一人で暮らしているのだ。きっと今ごろ怖くて震えているに違いない。
怖くて怖くて。
一人で怯えている。
行かなければ。わたしが、
――助けるんだ。
もう、誰かに助けられてばかりじゃいけない。
――あの人みたいに、わたしだって誰かを助けなきゃ。
あの人――?
誰だっけ?
わからないけど、今は行かなければ。
わたしは再び駆ける。
どろりと溶けた街。赤に支配された街。
太陽が落ちた街。
不思議と暑くはなく、熱くもなかった。ただ柔らかい。地面が道が雰囲気が――柔らかい。
気を抜くと、溶けたアスファルトに呑み込まれそうだった。
これから――。
――どうなるんだろう。
半分だけの太陽。半分が落ちた街。溶けて蕩けて崩れた街。
どうにでも――なるか。
母から連絡があった。祖母はもう避難所についたらしい。父も今しがたついたそうだ。
――ああ良かった。
これでみんな揃った。
みんながいるなら――どうにでもなるさ。
怖いけど。
みんながいるなら、大丈夫。
未来のことなんか、考えなくて良い。今のことを“確り考えれば”良いのだ。今を確かに生きれば良いだけだ。
きっと、ね。
ドン――ともう一発花火が開いた。