AnswerTheMetal
記憶を失い彷徨う御堂烈。
烈を追う怪人。
烈は思い出すメタルヒーローの記憶ー
夕闇迫る奥多摩の山中、薄暗いトンネルから飛び出してくるチャコールグレーのコートを着た男。
黒い髪に深く刻まれた皺からは四十半ばに見える。
「はぁ、はぁ……。」
息を切らし、赤く錆びた線路の上を走る男。
何かから逃げているのだろう、男が幾度も後ろを振り返る。
疲れの見える足がもつれ、背中からドスンと線路に尻餅をつく男。
チャコールグレーのコートに線路の砂が纏わり付く。
そこに、現れる全身が灰色の人ならざる者。
右手を上げ、ゆっくりと男に近づく灰色の怪人。
「ククク……お待ちなさい。」
慌てて立ち上がり、怪人から逃げる男を光が照らす。
キィィィィン!!ライトを照らし近づく紺色の列車。
赤錆びた線路を跨ぎ、必死に怪人から逃げる男。
ガタン、ガタン、ガタン——
男と怪人の間を轟音を鳴らし、走り抜ける紺色の列車。
走り抜ける列車を前に怪人が男に叫ぶ。
「お待ちなさい、御堂烈。いや、メタルヒーロー!!」
走り抜ける紺色の列車を背に烈が呟いた。
「俺がメタルヒーロー?」
列車が通り過ぎた。
その瞬間、怪人を照らす白く眩い光。
その醜い灰色の右手で目を覆う怪人。
そこに現れる漆黒のメタルヒーロー、オーダー。
怪人から思わず声が漏れる。
「おお……。」
怪人に殴りかかるオーダー。
キィィィィン――
二人の左右を紺色の列車が行き交う。
列車から漏れる光が二人を照らす。
ドスッという鈍い音と共にオーダーの渾身の一撃が怪人の顔面に決まると、赤錆びた線路に背中から倒れる怪人。
ドスッ、ドスッ、ドスッ——
線路に倒れた怪人にパンチを浴びせるオーダー。
線路に怪人を殴る鈍い音だけが響く。
キィィィィンと音を鳴らし、そこにやってくる紺色の列車。
怪人の首を鉄の塊が無慈悲に引き裂く、失った首から赤い血を流す怪人を見ると変身が解けるオーダー。
一人彷徨うように赤錆びた線路を歩く烈。
烈の目に飛び込むオレンジ色の暖かな街の光。
線路を滑り降りると、烈が街を目指し薄暗い道路を歩く。
重い足を引きずり、右手で頭を抱え呟いた。
(思い出せない……。俺は……俺はメタルヒーローなのか……。)
そこに現れる部下を連れたモスグリーンの新たな怪人。
怪人達を見ると声を震わせ叫ぶ御堂烈。
「お前らは何者なんだ!!何故、俺をつけ狙う!!」
怪人が静かに答えた——
私達のことを、お忘れで?我が総統――
混乱し右手で頭を抱え下を向く烈。
(俺が総統……。)
――烈の脳裏に浮かぶ過去の記憶。
チカチカとライトが揺れる、灰色のコンクリートの部屋。
「辞めるんだ兄さん!!」
オーダーとは違う、白銀のメタルヒーローが問う。
黒き右手を震わせ拳をグッと握り締めると、振り返り怒りに満ちた低い声で答えるオーダー。
「弟よ。お前も見てきただろう、権力を笠に着て女、子供を食い物にする人間達を。」
両手を広げ、否定するように首を横に振る白銀の戦士。
「兄さん、僕達は正義のヒーローだ!!兄さんが国を滅ぼすなら止めなければならない。」
そう言うとオーダーに殴りかかる白銀の戦士。
交錯する白銀と漆黒の拳――
白銀の戦士の拳がオーダーの側頭部を掠めると、オーダーの側頭部からバチバチッと黄色い火花が飛び散った。
側頭部にダメージを受けオーダーがグラつく。
その瞬間だった——
部屋に響くドスッという鈍い音。
白銀の拳と同時に繰り出されたオーダーの漆黒の拳が無慈悲に白銀の戦士の腹を突き破った。
「兄さん……。」
オーダーが拳を引き抜くと、ズルリと倒れる白銀の戦士。
仰向けに倒れた白銀の戦士から流れた赤い血が灰色のコンクリートを赤く染めてゆく。
変身を解いた烈が立ちすくむ。
(俺は誰なんだ、俺は何をしている……。)
血に汚れた右手で頭を抱える烈――
混乱し下を向いていた烈が口角を上げる。
「俺が弟を……俺は……。ククク……思い出したぞ。俺が正義だ。」
握り締めた右手を見ながら叫ぶ烈。
「俺は総統にして、この国を正すメタルヒーロー、オーダーだ!!」
モスグリーンの怪人が引き裂かれたような口元を緩め言う。
「思い出されましたか、我が総統。」
「この国の愚民共に、我らが正義を教えてやろう。付いてこい。」
怪人を見るとチャコールグレーのコートをひるがえし烈が振り返った。
タタタタタン。タタタタタン——
国会内に銃声が響く、89式小銃を乱射し国会議員を襲う怪人達。
「やめてくれーっ!!」
パニックの中、国会内に響く悲鳴。
鼻水を垂らし許しを請う者――
秘書を身代わりに自らのみ助かろうとする者――
次々にその醜悪な姿を晒し、絶命してゆく国会議員達。
モスグリーンの怪人が烈に報告する。
「総統、他の部隊がNHKを含むオールドメディアを占拠した模様です。」
「そうか……もう、戻れぬな……。」
一人、日本刀を持った烈が血にまみれた真っ赤な通路を歩く。
カツ、カツ、カツと真っ赤に濡れたジョンロブの靴音をゆっくり鳴らし烈がゆく。
「ここが、総理の部屋か。」
そう呟くと烈は総理の部屋の扉を開いた。
女性の総理が烈を見ると、椅子から立ち上がり微笑み話しかける。
「話し合いま――。」
話しかけようとした女性総理に烈の右手の日本刀が牙を剥いた。
女性総理の遺体を押し退けると、総理の椅子に深く腰を下ろし大声で笑う烈。
「ククク……殺せ、殺すがいい。愚民共に正義を教えてやるがいい。」
モスグリーンの怪人が部屋の扉を開いた。
「総統、TV中継の準備が出来ました。」
烈が日の丸を背に演説する。
全日本人に告ぐ——
数年後――
荒廃した東京の街を一人歩く、短い黒髪にブレザーを着た高校生とおぼしき少年。
その左手にはシルバーの時計が巻かれている。
「父さん、俺、御堂誠が伯父さんを止めてみせる。」
少年が口を固く結ぶと、左手のシルバーの時計に手をかけた。
ChangeAnswerの文字がシルバーの時計に青く浮かぶ。
少年の体を白銀のスーツが包み込んだ。
白銀に鮮やかなブルーのラインが入ったスーツのメタルヒーローが姿を現す。
「この、アンサーが変えてみせる。伯父さんの歪んだ正義を。」
一人ゆっくり国会に向かって歩み始める白銀の新メタルヒーロー、アンサー。
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