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正義が人を壊すとき、俺は選ぶしかなかった  作者: 慈架太子


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第2章:違和感

教国は、優しかった。

少なくとも、最初はそう見えた。


陽光の差し込む部屋。

温かい食事。

穏やかな笑顔。


否定されない日々。

肯定され続ける存在。


それは――救いだった。


だが。


その“優しさ”は、選別されていた。


静かな部屋だった。


石壁に囲まれた講義室。

規律だけが支配する空間。


白衣の教官が、淡々と口を開く。


「十人の村がある」


「その中に一人、確実に全員を殺す者がいる」


「排除するか」


沈黙。


「排除しなければ、十人が死ぬ」


答えは、最初から決まっている。


「……排除します」


教官は頷く。


「正しい」


そして続ける。


「では、その者が“まだ何もしていない”場合はどうする」


空気が張り詰める。


「証拠はない。だが確率は極めて高い」


「排除するか」


迷いは許されない。


「……排除します」


教官は静かに言う。


「正義とは何か」


「被害を最小化することだ」


「感情ではない。倫理でもない」


「結果だ」


一歩、踏み出す。


「一人を救って九人を失う者は善ではない」


「ただの無能だ」


空気が凍る。


「覚えておけ」


「迷いは、死を増やす」


「選ばないことは、罪だ」


アリアは、理解した。


「……なら」


「一人を切ればいい」


教官は即座に否定する。


「違う」


「“十人が生きる可能性が最大になるから”だ」


「正義は確定ではない」


「最適化だ」


「そして――」


「最適化の過程で失われたものに、価値はない」


その瞬間。


アリアの中で何かが固定された。


迷いは、ノイズ。

躊躇は、害悪。


正義とは。


排除である


教国は、彼女を肯定し続けた。


人を裁くたびに褒められ。

人を切り捨てるたびに崇められ。


彼女の中から、“迷い”が消えていく。


残ったのは――


硬く、冷たい、透明な「正しさ」。


そして。


戦場で、アストラ・ノクスを見た。


そこにいたのは。


“悪”ではなかった。


その瞬間。


教国の正義は、崩れた。


だが。


アリアは、止まらなかった。


「……何も変わってない」


焼けた世界。


争い続ける人間。


「人は、また同じことをする」


ならば。


「私は、やる」


教えは捨てない。


むしろ。


完成させる


「祈りで救えないなら」


「裁きで終わらせる」


その目に、迷いはない。


「神が決める?」


「違う」


「私が決める」


純白の光が広がる。


それは癒しではない。


統制。


停止。


排除。


その日。


少女は死んだ。


生まれたのは――


裁定者ジャッジメント

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