第004話〜ヨ……シ……ヨ〜
「こちらラウンジとなっておりますっ方々でご歓談なさったりご飲食なさる際には是非ご利用くださいませっ」
コロナちゃんに続いて階段を下りると真っ赤な絨毯が目に入る。照明は一様ではなく、薄暗いエリアと明るいエリアを故意に生み出しているようだ。遠くを見るに、滅茶広大な円の外周がラウンジになっているのだろう。そういえば岩塊から下りて来た階段の端もなぞると円を形作っていたような……。まぁゲームと言ったら円だよな(偏見)。摺鉢で例えれば口縁にログイン時の岩塊があり、木組みの建つ階段が胴、底にカウンター群があって、ラウンジはさらにその下へ潜った高台の外側といった感じか。
(多分)窓を隔てた向こう側に星が見えている。いや、星の存在を疑っているわけではない。光の反射とか屈折とかが無さ過ぎて存在を確信出来ないんだがあるよな?窓。絨毯にも端っこあるし。風もないし、何かしらの仕切りはある気がするんだが……ん?この角度で星しか見えないってどういう理屈だ?……まぁそれは置いといて、
「ね、ねぇコロナちゃん?コロナちゃんが元気なのはいいことだと思うけど、ここではもう少し声量を落とした方がいいんじゃないかな?ほら、他の利用者?もいるわけだし……」
「ご安心くださいっここ何故か騒いでも気になさる方々がいらっしゃらないんですよっ」
何故かって……そして騒いでる自覚はあるのかコロナちゃん。
確かにすぐ隣とはいえ俺にはこれほど騒……賑々しく聞こえているのに、ぽつぽつあるソファに腰掛けたり寝転がった(多分きっと)プレイヤー達はこちらに意識さえ……いや、意識はされてるみたいだな。まぁ、コロナちゃん型()の案内役に慣れっこなのかも知れんが。
そんなプレイヤー達の様子をガン見しない程度に窺ってみると……。
なんか浮いてるんだが、あれはタブレット……いや最初の小部屋で目にしたパネルか?まぁ俺もゲーミングチェアにもたれながらモニターの位置もうちょいどうにかならんものか考えたことはある。あれなら寝転がりながらでも首が疲れなさそうだ。
そういえばインフルエンサー曰く『GGS内での配信可。その視聴も勿論可。さらに現実世界の動画も視聴可。なのに現実世界への直接配信は不可(血涙)』だとか。
まぁインフルエンサーなら配信して広告収入なんぼなわけだしな。今まで確立してきた配信形態もあるだろうに、イラストレーターを手配してまで畑違いな事に手を出しているのは何かしらGGSに新しい可能性を感じてるってことなんだろうか……。いや今時のAIならそれくらい描いてくれそうか?なら大した手間は無いかも知れん。
確か礼状には二次創作的な活動を妨げないみたいな事も書かれていたような……。滅茶寛容。広告費みたいなものかも知れんが。
あ、で。やっぱり俺以外に緋袴の連れがいないのおかしいよな?統計学?的にも。
なんて事を考えていると、
「ルシア様こちらへどうぞっ」
多分ラウンジで囲まれた内側エリアに向かう通路の入口でコロナちゃんが促してくれている。応じて向かうと、両側に防音性能高そうな両開きの扉が。
その一つを無造作に押し開けるコロナちゃんに内心慄くが、中には誰もいなかった。良かった現場()に遭遇しなくて。いや、何も残念とか思ってないし?全く。少ししか。……。
「こちらがルシア様のモニター兼シミュレータルームとなりますっ」
おぉ、ここがインフルエンサー曰く“神様ムーブ”を楽しめるとこか。なんかオフィスっぽいな。滅茶殺風景だが。ん?今“俺の”って言ったかコロナちゃん?
「え……っと?コロナちゃん、“私の”ルームってどういうこと?」
「はいっこちらはルシア様専用のルームとなっておりましてっルシア様がお招きにならない限り他の方々がいらっしゃることはありませんっ」
「入口に表札も何も無かったみたいだけどセキュリティとかは……」
「ああっ!えっとっ!一二三兄……警備統括は方々の波動を読み取る機能があるとか申しておりましたっ!」
……う〜ん、認証機能と割り振り転送機能ってことかな?まぁ今時普通……なのか?よく分からんが……、
「なるほど?そういうことなんだ。ありがとうコロナちゃん」
五六七、二三四、一二三と来たら間を埋めるのはミヨコさんとヨ……シ……ヨゴロウくんか?俺は未だ見えぬ二人を空想しながらルームを見分して……回るまでもないな。え、このデスクとチェアのみの作業スペースってその内カスタマイズ出来るよな?家具とか壁紙とか配布されたり購入できたりするよな?
などと考えていると、
「ルシア様こちらにお座りくださいっご説明させていただきますっ」
コロナちゃんから席へと促される。まぁきっと大丈夫だ気にすることじゃない。
どれどれ見た目からして高級チェアだが実際は……すご。最高級やん。知らんけど。
「まずこちらではグランド・グラウンドを窃……ご視察いただくことが出来ますっ!」
横に立ったコロナちゃんがマウスを操作してモニター上の青い丸をクリックすると、黒い背景に白く雲懸かった青い惑星の全景が現れ、更にホイールを回すと拡大していく。
「この視聴ポイントはオフセットがグランド・グラウンドの中心基準となっておりましてグランド・グラウンドを見失うことがないんですっ」
ドヤ顔雰囲気のコロナちゃんを感じながら、それはむしろ普通では?と思いつつ馬鹿正直に指摘したりはせずに、
「あーうんスゴいね。開発の人達が頑張ってくれたんだろうね」
「お分かりいただけますかルシア様っ⁉︎もう自転公転どころか宇宙全体での動きも関数化しなきゃって皆廃人になりながらAI導入してようやく完成したんですよっ!」
……?今何か違和感が……と思考が像を結ぶ前にコロナちゃんが別のアイコンをクリックして、
「そしてこちらが宇宙シミュレータになりますっ!」
と、展開した画面にはゲームアプリのようにデカデカと『Sim Verse』の文字が……ってまんまやん。
そんなセンスはさておき、
「こっちもコロナちゃん達が頑張ってくれたのかな?」
「はいっ!あ、いえっ!確かに私共が初め担当しておりましたが方々の行幸に間に合わなそうと主様が出張っ……出娑……お骨折りくださりっ!即座に組み終えてしまわれましたっ!」
アルジサマすご。
「まぁ……作れと言われて作れるシロモノではないよね」
「ですよねっ⁉︎全く主様の頭の中は一体どうなってるのか……あ、ルシア様今のは聞かなかったことに……」
「うん二三四お姉……案内統括さんには黙ってるね」
「いや二三四姉だけじゃなくてですねっ⁉︎」
「ふふ。それじゃあシミュレータの説明をお願いできるかな?」
「……はいっ!ではご説明致しますっ!」
うっかり残念コロナちゃんとの掛け合いも楽しいけど、弄ってばかりも何だしな。




