解析加速のための魔王討伐計画。魔王討伐は過程に過ぎず。
エリスの研究室――といっても彼女の自宅の一室だが――には、魔法陣の図面や古文書が山積みになっていた。
「で、帰還方法の解析を早める方法はあるのか?」
俺は単刀直入に聞いた。
エリスはノートを広げながら答える。
「あります。【万能解析】の性能を上げることです」
「性能を上げる?」
「ええ。スキルはレベルアップします。レベルが上がれば、解析速度も精度も向上するはずです」
なるほど。つまり俺が強くなれば、帰還できる可能性も上がるってことか。
「じゃあ、俺はレベル上げをすればいい?」
「それもありますが……もっと効率的な方法があります」
エリスは古文書の一ページを指さした。
「魔王討伐です」
「……は?」
「この世界には魔王がいます。討伐すれば莫大な経験値とスキルポイントが手に入る。それを使えば【万能解析】を一気にレベル10くらいまで上げられるかもしれません」
俺は頭を抱えた。
「ちょっと待て。俺、レベル1だぞ? 魔王とかムリゲーだろ。ドラ◯エの縛りプレイじゃあるまいし」
「通常はそうです。でも、あなたには【万能解析】がある」
エリスは興奮気味に続ける。
「魔王の弱点、攻略法、必要な装備、最適なパーティー編成……全部解析できるはずです。理論上は、レベル1でも魔王を倒せる」
「理論上って……」
「やってみる価値はあります。少なくとも、普通に冒険者として経験を積むより100倍早い」
確かに、ダラダラとスライム狩りしてる時間はない。帰還解析の進捗は今15%。このペースだと完了までまだ25日かかる。
でも魔王討伐が成功すれば……
『シミュレーション開始:魔王討伐による効果』
『予測結果:
•討伐成功時の経験値: LV1→LV45相当
•スキルポイント獲得: 約500pt
•【万能解析】をLV10まで強化可能
•強化後の帰還解析完了予測: 5日以内』
5日!
25日が5日になる!
「……やるしかないな」
「本当ですか!?」
エリスの目が輝いた。
「でも、準備は完璧にする。いきなり魔王城に突っ込むとか自殺行為だ」
「もちろんです! まずは魔王の情報を集めましょう」
俺は【万能解析】を起動。
『解析開始:現魔王に関する情報』
数秒後、情報が流れ込んできた。
『魔王:ザルゴス
種族:上級悪魔
レベル:???
居城:北方の絶望山脈
特性:闇属性無効、物理攻撃半減、魔法攻撃反射
弱点:聖属性、精神攻撃』
「聖属性と精神攻撃か……」
「聖属性なら、王都の大聖堂で聖剣を借りられるかもしれません。精神攻撃は……精神魔法使いを仲間にするしかないですね」
「パーティーを組むのか」
仲間を作ると帰るのが遅れる気がしていたが、魔王討伐となれば話は別だな。...仕方ない。
「最小限の人数で。信頼できるやつだけだ」
「わかりました。私の知り合いに、優秀な精神魔法使いがいます。紹介しますね」
エリスは嬉しそうに頷いた。
そして俺は、現実的な問題を口にした。
「で、魔王討伐って……国からの正式な依頼とかないの? 勝手に魔王倒しに行っていいのか?報酬とか」
「あ……」
エリスは固まった。
「実は、王国は魔王討伐を半ば諦めてるんです。過去50年で7つの討伐隊が全滅してるので」
「マジかよ」
「でも、討伐に成功すれば、国から莫大な報酬が出ます。領地とか爵位とか」
「いらねぇよ、そんなチープなモノ。」
俺が欲しいのはそんな報酬じゃない。家に帰るチケットだ。
最新アニメを観ることと比べたら雑魚すぎて話になんねーよ。
「とにかく、まずは情報収集と準備だ。エリス、魔王討伐に必要なものリストを作ってくれ」
「はい!」
こうして、レベル1の俺による魔王討伐計画が始動した。
普通に考えたら狂気の沙汰だ。
でも、俺にはどうしても帰らねばならぬ理由があるからな。
そして、それを可能にするチートスキルがある。
『帰還解析進捗:15%』
『新規目標:魔王討伐による解析加速』
『推定帰還可能日数:討伐成功時 7日以内』
やってやるよ。魔王? 世界の危機? 知るかそんなもん。
俺の今の敵は、『残業終わりで、異世界に召喚され、家に帰れない。というこの状況』そのものだ。
邪魔するやつは神だろうが魔王だろうが、全力で滅ぼしてやる!




