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異世界帰還RTA:レイドイベント、録画したアニメ、待ってる猫のために秒速で世界を救って帰ることにした。  作者: イチジク浣腸


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3/5

図書館での発見と絶望

 【万能解析】のおかげで、薬草採取は拍子抜けするほどスムーズだった。

 どこに生えているかはもちろん、摘み取るべき最適な時間から、鮮度を保つ保存法まで、すべてが手に取るように理解できたからだ。

 わずか三時間で、三件分の依頼を完了。

 報酬として受け取ったのは、銀貨一枚と銅貨四十枚。ポケットの中で、それらがチャリ、と硬い音を立てて擦れ合う。

 銀貨一枚が銅貨百枚だから、計百四十枚。

 一番安いワンプレート料理が銅貨十枚。……合わせて十四食分か。

「よし。これで数日は、食いつなげるな……」

 自分に言い聞かせるように、低く呟いた。

 まずは街の食堂に寄り、焼きたてのパンと熱いスープで空腹を満たす。それから午後の予定を消化するため、ルーンへイム図書館へと足を向けた。

 図書館は思ったより立派だった。蔵書は5000冊以上ありそうだ。

「魔法理論の本を……」

 司書に案内してもらい、魔法関連の書籍を片っ端から読み始める。

【万能解析】のおかげで、どんな本でも一度見れば内容を完全に理解できる。速読どころか、ページをめくるだけで知識が頭に入ってくる。

『魔法基礎理論 習得完了』

『属性魔法初級 習得完了』

『魔力操作法 習得完了』

 二時間で五十冊を読破した。周囲の学者らしき人々が、驚愕の面持ちでこちらを見ている。

「まあ、そらそうだよな……」

 少しばかり四面楚歌を感じながらも、本を読み漁り続けた。

 そして、ある本を手に取った瞬間。

『空間魔法概論』

 これだ! 世界間移動に関係ありそうな本!

 ページをめくる。

『空間魔法とは、空間そのものを操作する高等魔法である。テレポート、次元倉庫、そして――異世界転移もこの分野に含まれる』

 来た!

『異世界転移は、通常「召喚」という形で発動される。異世界から人や物を呼び寄せる魔法だ。しかし、この魔法には重大で致命的な欠陥がある』

 欠陥……?

『召喚魔法は「一方通行」である。召喚された者が元の世界に戻る方法は、理論上存在しない』

 ページを持つ手が震えた。

「嘘だろ……」

『過去300年間、異世界から召喚された人間は記録上47名。そのうち、元の世界に帰還できた者は0名である』

 俺の【万能解析】が、この情報の真偽を判定する。

『情報信頼度:98%』

 ほぼ確実に、これが真実だ。

「じゃあ、俺の解析は……」

 慌てて【万能解析】の進捗を確認する。

『帰還方法解析進捗:15%

 解析内容:召喚魔法の逆演算による理論的帰還方法の構築

 成功率:現時点で0.003%』

 0.003%……

 つまり、ほぼ不可能ってことか。

 足がガクガク小鹿のように震えた。

 本を持つ手に力が入らない。

「帰れない……? 俺、もう帰れないのか……?」

 月曜のプレゼン。週末のレイドイベント。録画したアニメ。部屋で待ってる猫。

 全部、もう二度と会えない。

 図書館の椅子に座り込む。頭が真っ白になった。

「あの、大丈夫ですか?」

 声をかけてきたのは、眼鏡をかけた少女だった。年は十八歳くらいか。学者風のローブを着ている。

「……平気です」

「顔色が悪いですよ。もしかして、異世界転移の本を読んで……」

 彼女の目が、俺が読んでいた本のタイトルを見る。

「あなた、異世界人なんですか?」

 否定する気力もなく、俺は黙って力無く頷いた。

 少女は悲しそうな目で俺を見た。

「そう、ですか……お気の毒に」

「あんた、知ってるのか。帰れないってこと」

「ええ。私、魔法学者の卵なんです。召喚魔法については研究してます。でも……その……」

 彼女は言葉を濁した。

「帰る方法はないってことだな」

「……はい」

 沈黙。

 しばらくして、少女が口を開いた。

「でも、あなたのスキルは【万能解析】ですよね? 噂を聞きました」

「ああ、そうだけど」

「それなら……もしかしたら、あなたなら」

 彼女の目に、わずかな希望の光が宿った。

「今まで誰も成し遂げられなかったことを、成し遂げられるかもしれない。破天荒な偉業を。」

「……マジで?マジか?大マジ⁈」

「可能性は限りなく低いです。でも、ゼロじゃない。【万能解析】は伝説のスキル。理論上不可能を可能にする力です」

 俺は立ち上がった。

 そうだ。まだ諦めるのは早い。

 0.003%でも、ゼロじゃない。

 0じゃないなら可能性はあるってことだ。

「あんた、名前は?」

「エリス。エリス・ノートンです」

「俺は佐藤健太。エリス、力を貸してくれ。俺、絶対に帰りたいんだ」

 エリスは微笑んだ。

「はい。私も、召喚者が帰れる方法を見つけたいんです。一緒に研究しましょうね」

 こうして俺は、異世界で初めての協力者を得た。

 帰還成功率0.003%。

 でも俺は諦めない。

 絶対に、家に帰る‼︎

書き終えて、思いました。「コイツ、立ち直り早すぎないか?」と。

絶望のどん底に突き落としたはずが、数行後にはもう前を向いている……。勿論、作者のミスではなく。どうやら私の手を離れて勝手に鋼のメンタルと言うスキルを手に入れてしまったようですね。この切り替えの早さ、私にも少し分けてほしいくらいです。


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