即帰宅希望なんだが
俺の名前は佐藤健太、32歳。都内のIT企業でプログラマーをやってる平凡なサラリーマンだ。
「はぁ……また残業か。帰ってアニメみたいよ」
金曜の夜、23時過ぎ。やっと仕事を終えて会社を出た瞬間、視界が真っ白になった。
気がつくと、見たこともない森の中。目の前には剣と魔法のファンタジー世界そのものな光景が広がっていた。
「……マジかよ」
俺は即座に理解した。これ、異世界転移ってやつだ。ネット小説で腐るほど見たパターン。
でも俺には魔王を倒す使命感も、この世界で無双したい願望も、美少女とハーレムを作りたいチープでテンプレな欲望も一切ない。
あるのはただ一つ。
「帰りてぇ……」
明日は待ちに詫びた土日。
昼まで寝て、録画したアニメ見て、夕方からネトゲのレイドイベントがあるんだ。それに来週月曜は重要なプレゼンがある。
俺は立ち上がって周囲を見渡した。
「とりあえず、人のいる場所を探すか」
幸い、遠くに煙が見える。集落か街があるはずだ。
歩き出して30分。獣道を進んでいると、茂みから巨大な狼――いや、狼というより熊サイズの怪物が飛び出してきた。
「うわっ!」
死を覚悟した瞬間、俺の手が勝手に動いた。いや、動いたというより、知識が脳内に流れ込んできた。
『スキル【分析】発動』
『対象:グレートウルフ LV23』
『弱点:雷属性、聴覚』
「分析……?」
混乱する間もなく、次の知識が流入する。
『チートスキル【万能解析】
•あらゆる事象を分析し、最適解を導く
•魔法、スキル、言語、技術を即座に習得可能
•異世界と元の世界の「理」を理解し、世界間移動の方法を解析できる』
「お、おお……!」
つまり、このスキルを使えば帰る方法が分かるってことか!
俺は目の前の狼から逃げながら、必死に思考を巡らせた。
『解析開始:この世界から元の世界への帰還方法』
『解析完了まで:推定720時間』
「30日!? 長っ!」
でも希望は見えた。一ヶ月この世界で生き延びれば、俺は家に帰れる。
そう思った瞬間、狼が飛びかかってきた。
「くそっ!」
咄嗟に拾った木の枝を振るう。その瞬間、また知識が流れ込む。
『スキル【剣術 LV1】習得』
『相手の動きから最適な戦闘パターンを解析』
気づけば俺は、まるで剣士のように木の枝で狼の急所を突いていた。狼は悲鳴を上げて逃げていく。
「すげぇ……このスキル、マジでチートだ」
でも俺の目的は無双することじゃない。
「よし、まずは街に行って情報収集。それから帰る方法の解析を進める。絶対に一ヶ月で帰ってやる!」
こうして俺の、異世界即帰宅チャレンジが始まった。




