第0章:輝かしき昼、夢幻の夜 (第1部)
【世界は再構築された――はずだった】
『8人の預言者』の戦いが終わり、世界は平穏を取り戻した。 誰もが幸福を享受し、悲劇など存在しない「完璧な世界」。
しかし、その完璧さこそが、最大の「バグ」だった。
前作から続く因縁、そして失われた記憶。 始まりはいつも、夢の中から。 現実と夢幻が混ざり合う、新たな物語の幕が上がる。
「これは、かつての英雄たちが忘れ去られた世界で、一人の少年が『心臓』を取り戻す物語。」
BGM: (Main Theme)
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新しい命、新しい息吹。俺の中で、新しい宇宙が生まれたような気がした。 俺の毎日は「完璧」だった。完璧な家族、完璧な学校、そして最高の友人たち。
セザール、ジューン、アリアナ、アルテミサ、ジャナ……。 みんな、そこにいた。
でも、何かが……「誰か」が足りない。この完璧な世界の中で、拭いきれない空虚感があった。 時折、俺を襲う「壊れた過去」のビジョン。眠っている間、誰かがそばにいないことに胸が騒ぐ。 闇の中から何かが俺を覗き込んでいるような気配を感じるが、目を向けてもそこには何もなかった。
俺の生活は、二つの顔を持っていた。 昼間の俺は、友人たちに囲まれ、幸福に満ち溢れた「光り輝く存在」。 だが、満月の夜。空の暗闇や街の隅々を眺めていると、意識の奥から何かが溢れ出す。 人影、記憶、誰かの声。暗闇の中で響く「何か」が、今の人生への疑いを加速させる。
夢の中で、青い瞳の少女が俺の精神を侵食する。 どこにでもあるような街、静まり返った路地、自宅の庭。 普通の学生である俺は、視線を上げ、その少女を見つめる。 彼女は工事途中の高い柱の上から、俺を覗き込んでいた。まるで「向こう側」から俺を監視しているように。月明かりと銀色の輝きの中で、彼女の時間だけが止まっているように見えた。
夢の中で、彼女は俺を捕らえる。 親友のように語りかけ、俺に謝罪する。 彼女は俺に**「水晶の心臓」を差し出し、自分は手の中で燃え尽き、風にさらわれる「灰の心臓」**を抱えていた。 彼女の瞳は共感に満ち、涙が頬を伝う。それは哀愁、後悔、そして強い郷愁の混ざった顔だった。
彼女の言葉が俺の心に届こうとするたび、制御不能な「重低音」が響き、その声をかき消した。 まるで、俺がその言葉を聞くことを許されていないかのように。 俺の意識が境界を超えようとするとき、運命によって禁じられた対話を封印する「強大な誰か」の気配。 その重苦しい響きは、街の騒音も、風も、鳥の声も、すべてを黙らせてしまう。
高層ビルの屋上で、彼女は俺に水晶の心臓を手渡した。
「――百万回の生が、過ぎ去った」
重厚な声が風と共に囁いた。 振り返っても誰もいない。地面には壊れた時計が落ちていた。それは完全に止まっている。 彼女の方を向くと、もう姿はなかった。ビルの屋上から身を乗り出すと、落下していく彼女が見えた。 最後の一瞬、視線が交差する。彼女は、微笑んでいた。 ……なぜ、こんなにも懐かしいんだろう?
彼女が叩きつけられた衝撃で、下にあった車が真っ二つにひしゃげ、人々が恐怖に凍り付いた。 だが、そこに彼女の姿はなく、代わりに数えきれないほどの「水晶の破片」が散らばっていた。 破片に映る自分の影。それは、背後から俺を狙う**「怪物の姿」**だった。 振り返ると、そこには彼女がいた。 後悔と涙に濡れた顔で俺を抱きしめ、強引にビルから突き落とす。 今度は俺が落ちる番だ。 アスファルトに叩きつけられた瞬間、俺たちはバラバラの水晶になって砕け散った。 その一つ一つの破片の中に、俺たちの欠片があった。愛、願い、あるいは……語られることのなかった言葉。
「――そこで、俺は飛び起きた」
部屋を出る。今日は月曜日、週末が終わり、学校へ行く日だ。 完璧な父親と、完璧な母親が俺を迎えた。 朝食を摂っていると、父が言った。
「ほら、新しい時計だ。欲しがっていたやつだよ。そのボロボロで動かない古い時計は、もう捨てなさい」
父が時計を取り上げようとしたとき、言いようのない不安が走り、俺はそれを拒んだ。
「父さん、大丈夫だ。これは持っておきたいんだ。俺にとって、大切な意味がある気がするから」 「ゲオ、過去の物に執着しすぎるのは良くないぞ。修理なら出してやろうか?」 「……いいんだ。気にしないで」
その時計は、あまりにも正確な時間を指して止まっていた。 『00:33』 時の中に打ち捨てられたその数字。時計が何かを訴えかけているようだ。 夢の中で聞いたあの声……「百万回の生が過ぎ去った」という囁きが、耳の奥に残っている。
学校へ向かう道中。親友たちに会えば、この違和感も消えるはずだ。 それでも、彼らの間に大きな「空白」があるように感じてしまう。 記憶の底で、知らないはずのシルエットが浮かび、一瞬で消える。忘れ去られた過去の亡霊たち。
セザール、ジューン、アルテミサ、ジャナ、アリアナ。 みんな大好きな友達だ。でも、俺の記憶にはノイズが走る。
シルエット1: 彼女は、誰だ?
シルエット2: 彼は、誰だ?
シルエット3: ……なぜ、この最後の一人は、これほどまでに胸を締め付けるのか。
今の友人たちの隣に、その人影たちがいたような感覚。でも、俺はその人影を知らない。 知っているはずの誰かが、世界から没収されている。
学校へ急ぐ途中、白い百合の花が咲く家の前で足が止まった。 百合の花びらがふわりと浮き上がり、俺の目を奪う。そこは、空き家だった。 一瞬、黒い影が見えた気がした。「……気のせいか」 でも、その瞬間、俺は思い出した。
(ここには、誰かが住んでいたはずだ)
確信がある。この家は空き家などではなかった。 ここには知り合いが住んでいた。だが、なぜ思い出せない? 名前を、顔を、思い出そうとするたび、頭に霧がかかる。
……ダメだ。記憶が何度も「没収」されていく。 考えても無駄だ。遅刻する前に、学校へ行かなきゃ。
【即興の狂気】
正直に言おう。本来、私は一本の物語を完成させるのに九ヶ月の時間をかける人間だ。 三ヶ月ごとに読み返し、修正し、また読み返す。即興なんてありえない。 公開を考えるのは、最低でも半年は練り込んでから……。それが私の「伝統」であり、「誇り」だった。
だが、今回は違った。
私の頭は「中二病」全開の状態だった。 ある一曲のメロディが脳内で鳴り響き、それを忘れたくなくて、ずっと口笛を吹き、鼻歌を歌っていた。 その旋律こそが、この続編にふさわしい「魂」だと確信していたからだ。
そんな「中二病」の真っ只中。 半分しか書けていない原稿と、未完成の旋律を、ある友人が偶然耳にした。 彼は私が書き殴った断片を読み、こう言った。
「……これ、今すぐ出しちゃえば?」
私は凍りついた。 狂気と間抜けさが混ざり合ったような笑みを浮かべて、彼を見つめることしかできなかった。
彼は笑い、私も笑った。
私:「……いや、そんなことするわけないだろ」
すると、彼は私の言葉を遮ってこう言った。
「……度胸がねぇな」
私:「いや、そういう問題じゃなくてだな……」
「……度胸がねぇ」
……。
私たちはしばらく、サイコパスのような笑い声を上げ続けた。
「……やっぱり、度胸がねぇんだな」
……。 ……。
ああ、いいだろう。度胸ならある。 やってやろうじゃねぇか!!
というわけで、この物語は完全に「即興」で動いている。 今の自分に、この高いハードルを越えられるのか? 正直、後悔する予感しかない。 だが、一度走り出した以上、止まるつもりはない。 この無謀な挑戦を、皆さんに捧げる。
……ハハハ!
追伸:
なんとか全てを書き終えましたが、今はもう、完全に精根尽き果てています。 正直に言って、この物語に込めた「言葉」「情景」「響き」……その全てのコンセプトを、自分でも深く愛しています。 全く予定にはなかったことですが、よりによって最悪なタイミングで、強烈な創作の嵐に襲われてしまいました。




