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苦手な方はご注意ください。

シラユキと幻燈ハロウィン

作者:つゆ子
この世界では百年に一度、人々は平和をもたらす精霊族へ花嫁を捧げる。
その花嫁を、人々は「白雪」と呼んだ。

「さあ、お食べ、白雪姫」

婚約者との顔合わせの前夜。
薄暗い森の奥で、黒いローブの女が甘く囁く。血管の浮いた手に握られた真紅の林檎が、淡い光を反射していた。

「いただきます」

小さな唇がそれをかじる。
途端、少女の体に蛇のような影がまとわりつき、床へと崩れ落ちた唇から小さな呻きがこぼれた。

───これは、呪いだ。

「さあ白雪、お眠りなさい。次に目を覚ます時、貴女は絶望するだろう」
「キスで目は覚めてしまうんでしょう? ならせめて、人のいない島で眠らせて」
「アッハッハ。いいだろう。最後の願い、聞いてやる」

その花嫁に課せられた呪いはひとつ。
恋をすれば愛した者を滅ぼし、恋をしなければ、永遠の眠りにつく。

彼女の名はカラン。
七人の婚約者を持ちながら、今日も静かに余生を楽しんでいる。

紅葉が始まる頃、無人島の小さな城では淡い橙の灯が揺れていた。

地下の書庫。蝋燭の光が紙の上を滑る。カランは静かに本を閉じ、吐息をこぼした。

「……また、何の収穫もなかったな」

腕を枕にし瞼を閉じる。誰も訪れない地下の書庫は酷く寂しい。長い眠りにつくようにカランは小さく呼吸を繰り返す。

秒針を刻む音が響く中で、扉を叩く音が聞こえた。

「あれ、まさか先客がいたなんて」

黒いローブを羽織り、闇夜に光る真紅の目を持つ少年は婚約者のひとり───メア。

カランの隣に座る彼は、手に持っていたチラシを机の上に置いた。顔が彫られたカボチャのイラストは、蝋燭の灯りに照らされ妖しく揺れる。その笑みすらも深まり歪んでいるようだ。

──それは、ハロウィンの夜にだけ咲く“幻の物語”の幕開けだった。
第四話:勧誘
2025/10/21 22:29
第五話:祭
2025/10/21 22:29
エピローグ
2025/10/21 22:29
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