鋼鉄の人間とロボ
鋼鉄の巨体が唸りを上げる。
その一瞬、胸部から青白い閃光が生まれた。
「高出力ビーム。気をつけろ、当たれば消し炭だ」
カラクリが冷静に警告するも、彼はすでに動いていた。
──ズドォン!!
眩い光がラボを焼き尽くすように放たれた。床が抉れ、壁が爆ぜ、衝撃波が実験装置を吹き飛ばす。
しかし。
ビームは――彼のアームに吸い込まれていた。
「……あ?」
見れば、彼の右アームが唸りを上げて回転している。渦を巻くように動く複数の補助関節と、装甲の隙間に仕込まれた微細なエネルギー導管。そのすべてが、一点に集約するように、ビームの熱と光を吸収していた。
「……回転圧縮。吸収率は想定以上だな」
カラクリの目が輝く。
「はっ……お前のオモチャ、借りたぞ=)」
瞬間、彼は足元を蹴り、回転アームの中心に溜まった青白い光球を、まるで槍のように前方へ叩き出す!
──ゴオオオッ!!!
凝縮されたエネルギーが逆流し、ロボの胸部センサーへ直撃。
爆発、閃光、そして制御不能の揺れ。だがロボは倒れない。
「……効いたな。でもまだ立ってやがる」
次の瞬間、ロボのアームがうなりを上げて襲いかかる。鋭利なクロー、プレス機構、砲門内蔵の多重関節が、彼を押し潰そうと迫る。
「ふん」
彼は腰を落とし、地を蹴る。強化された機械式の脚部が唸り、床を砕く勢いで跳躍。
重力を無視するような速度で敵の頭上へと飛び、回転しながらナイフを構える。
──ガギィン!!
一閃。
ナイフが軌道を描くたび、ロボの装甲が裂ける。圧縮展開式のエッジが、関節の隙間へと喰い込み、震えるように亀裂を広げていく。
「分かるか、これは“妖夢の剣”を参考にした設計だ。よく盗んできたものだよ、まったく」
「へえ……あの娘の剣を、ナイフに落とし込んだか。洒落てるな=/」
地面に着地するや否や、彼は脚部の補助ピストンを再作動させる。
一瞬でロボの懐に滑り込み、ナイフを逆手に持ち替える。
「とどめだ」
アームの一撃とナイフが同時に交差した瞬間――
──バァン!!
ロボの胸部が爆ぜた。
残った蒸気と火花の中で、彼は静かに立っていた。白髪を束ねた後ろ髪が、煙に揺れている。
「ふう……久々に動いた気がする=)」
「私の改造の成果はどうだった?」
「まあ、及第点。次はもっと壊し甲斐のあるヤツを用意しろよ」
「……ふふ、君は本当に面白いな。次はもっと強いのを用意しよう。君が壊れてしまわない程度にな」
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