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番外編:ハーレムなろう主人公との接触

賑やかな酒場の扉が、重く開かれた。


「よぉ、皆の者! 俺様が来たぞぉッ!」


大声が響いた瞬間、空気が変わった。楽器の音が止まり、酔いどれた男たちの笑い声が凍る。


一人の男が、ドカドカと誇示するようにブーツを鳴らしながら入ってきた。金と赤で彩られた装飾過多の鎧に、無駄に光る肩当て。腰には飾りのような剣。背筋は妙に反っていて、目は自信過剰にギラついていた。


「うわ……また来た……」と誰かが小声で呟く。


それを気にも留めず、男──勇者と呼ばれる存在は、自分の“定位置”である酒場中央の特等席に腰掛けた。


「今日も女神の加護で魔物を100体は倒したかなァ? ま、俺にかかれば朝飯前よ!」


その声に反応するように、周囲の女性たち──耳の長いエルフ、猫耳の少女、豪快な女戦士──が次々と取り巻いていく。


「さすが勇者様♡」「今日もカッコよかったですぅ♡」


まるで劇の演出のように、勇者の周囲だけが華やかに盛り上がっていた。


だが――


彼は、その光景のすぐ隣で、ただ無言で食事を続けていた。


白髪を後ろで束ねた青年、無骨な服装のまま、黙々と干し肉を噛み、水を飲む。表情は読めず、目は虚ろに見えて何かを観察しているようだった。


その“無反応”が、逆に勇者の目に止まった。


「ん……? おい、お前。初めて見る顔だな?」


勇者がこちらに声をかける。周囲の視線が一斉に集まり、空気が変わる。


彼は食事を止めず、箸を動かし続けた。返事はない。


「おーい、聞こえてるかぁ? あんまり人を無視すると、俺でもちょっと悲しくなるぞ?」


「……」


勇者の眉がぴくりと動いた。


「いや、別に怒ってないけどね? 俺、結構器デカいから。うん。まぁ知らないよな、俺のこと。だって、普通に生きてたら俺みたいな存在に会えるわけないし?」


「……」


「え、お前さ、もしかして何も知らない? “俺がこの国の守護者”ってことも? 知らないんだ? ま、しょうがねぇよな、下の方の人間なら、知識も限られてるし? ヴェwヴェwヴェw」


周囲の女たちが笑う。「勇者様ってほんと博識〜♡」


その中で、彼はやっと箸を置き、水を一口すすり、言った。


「……どうでもいい」


勇者の目が、一瞬揺れた。


「は? は? ……なにそれ、君、俺に対してその態度って……わかってる?」


「別に。絡まれたくないだけだ。騒がしい」


「うわ……すげぇな、お前。面白いわ。ま、俺、優しいから許してあげるけど? ちなみに俺、昔から“神に選ばれし運命の男”って言われててさぁ──」


長い自慢が続く。彼は一度も目を合わせず、料理の皿をきれいに片づける。


(……つまらない)


彼は心の中で、そう呟いた。



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