鋼鉄の救世主
ラボ内、静寂。
真新しい装備が彼の体に馴染む音だけが機械的に響く。彼は無言で立ち上がった。以前よりも明らかに重くなったはずの身体は、むしろ軽い。
カラクリの低く落ち着いた声が通信機から流れる。
「まず、アームだ。今のお前の背中には巨大な武装アームと、大型剣が格納されている。状況に応じて即座に切り替え可能だ」
「左腕は小型チェーンソー。前よりも鋭く、鋼鉄も切断できる」
「右腕は複製剣を合成した刀。エネルギーを注げば、妖夢の模倣どころか上位互換にもなる」
彼は黙って手を動かし、それらの武装を一つずつ確認する。
「ブラスターも搭載している。空間が揺れるほどの爆発を起こす主砲だ。酸弾も撃てる」
「あと、両腕は分離して飛ばせる。敵の装備を奪って使うことも可能。応用次第では……面白い戦法ができるはずだ」
「エネルギー吸収盾はブラスターの展開と連動。必要な時だけ大きくなり、弾幕も弾き返せる」
彼は静かに頷いた。
「……他には?」
「左目。特殊な光を照射できる。浴びせれば精神干渉が起きる。使いどころを間違えるな」
「肩からは鎖が出せる。引き寄せでも拘束でも、好きに使え」
通信が一旦切れ、カラクリの声がもう一度だけ響いた。
「それと、背中のアームや剣は、装備状態で自動的に身体と連携する。つまり、戦場で迷う必要はない」
……静かに彼は拳を握りしめ、通信機にだけ返す。
「了解。じゃあ、始めようか」
その瞬間、彼の姿がフェードアウトし、ラボから消えた。
転送先は、敵に蹂躙されかけていたカラクリの防衛線、あの――戦場だ。
転送の閃光が弾け、戦場に一人の影が現れた。
焼け焦げた金属の臭い。地を這う煙。
カラクリのラボの外周では、量産型クローンロボが3体破壊され、残る1体も今まさに巨大ロボの剣によって胴体を叩き割られようとしていた。
そのとき――
「ッ……ブラスター、発射」
低く、抑えた声が響いた瞬間。
鮮やかな閃光とともに、空間が揺れ、轟音が巻き起こった。
巨大ロボの肩に直撃した衝撃で、そいつはよろめき、クローンロボの破壊は寸前で止まった。
火花と金属片が爆ぜ、その巨体がゆっくりと視線を彼に向ける。
「解析完了、装甲厚度:高。だが、こちらの火力で貫通可能」
彼は静かに一歩を踏み出した。
背中から金属音と共にアームが伸び、数瞬後には剣へと換装される。左手には鋼鉄をも切り裂く新型チェーンソー。右手には複製剣を合成した黒き刀。肩からは鎖がわずかに揺れていた。
「装備、全機能問題なし。戦闘開始」
そして、敵ロボのセンサーが彼を捉えた瞬間。
背中のアームが展開し、剣をぶん回すように振りかざす。
「弾幕――展開」
彼の身体に仕込まれた自動機関銃が両肩から展開し、弾幕が乱れ飛ぶ。
敵の装甲を削るには至らないが、確実に視界と動きを鈍らせる。
その隙に、彼はアームとブラスターを再換装。
左腕のエネルギー吸収盾が展開され、敵の砲撃を受け止め、収束されたエネルギーをブラスターに転送する。
「吸収率72%、反射開始」
炸裂するような閃光が再び敵を襲う。
巨大ロボが吠えるような電子音を発しながら踏み込んでくる。
その刹那、彼は静かに呟く。
「分離開始」
彼の両腕がパージされ、空中で自立制御によって宙を舞う。
それぞれの腕がブラスターを撃ち、剣で斬撃を放ち、巨体の隙を的確に狙っていく。
本体である彼は、一歩も動かないまま淡々と戦況を見つめていた。
やがて、敵ロボの剣が片腕を薙ぎ払い、火花を散らして大破させる。
「……損失許容範囲内」
彼は囁くように言い、肩の装置から伸びる鎖を放った。
敵の片脚に絡まり、バランスを崩した隙に、戻ってきた剣を受け取る。
「さあ――始めようか」
金属が軋む音とともに、彼の戦いが本格的に幕を開けた。
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もう少しで番外編入りたいと思います




