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彼は死んでしまうのか?

爆風の中心で、地面が深く抉られていた。


 煙の中、妖夢はよろめきながら立ち上がり、地面に落ちた模擬刀を拾う。


「返してもらいます……大切な、剣」


 彼はというと、全身の装甲が焼けただれ、左手のチェーンソーは完全に壊れ、刃が崩れ落ちていた。


 右腕は切られたまま。模擬刀も失った。


 それでも、彼は起き上がろうとした。


「……生きて、る=) ……とりあえずは、ね」


 妖夢が近寄る。


「言い残すことは、ありますか?」


 その時。


「──支援、開始」


 空間が揺れ、彼のクローンロボがブラスターを構え出現。妖夢に向けて一射。


「甘いです!」


 妖夢が斬り払い、光弾が反射。


「っ、ちょ、待っ──」


 魔理沙の後頭部に直撃。


「……痛ってぇ!? おい何すんだぁ!?!?」


 怒る魔理沙をよそに、クローンロボが彼の身体を担ぎ上げる。


「離脱モード、起動」


 足元からスモークが立ち込める。


「ま、待ちな──!」


 魔理沙の叫びの中、彼とクローンロボは煙の中へと沈み、視界から消えた。


──フェードアウト。


その後

爆発の余韻が、焦げた風と共に森を撫でた。


 煙の向こう、焼け焦げた地面と裂けた樹木が広がっている。その中心に、彼の姿はもうなかった。


「……消えたな」


 魔理沙は肩を落としながら、焼け焦げた帽子を直す。


「ったく、あの反射……反則だろ……」


 ほうきを立てて杖代わりにしながら、ちらりと隣を見る。


 そこには、無言で模擬刀を両手で握り締める妖夢の姿があった。

 銀髪は汚れ、袴には切り裂かれた跡。だが、その目は怒りよりも、どこか悔しげに沈んでいた。


「……あの剣、まさしく私の。だけど……なんだろう、この違和感」


 妖夢が呟く。


「完璧にコピーされたはずなのに、手にした時、何かが“足りない”と感じた。まるで……魂がないような」


 魔理沙は少し驚いたように眉を上げる。


「へぇ、剣にも魂か。……あたしはてっきり、ただの技術屋の仕業かと思ってたけど」


 妖夢は静かに首を振る。


「違います。あれは……ただのコピーじゃない。意思を模して、私たちに近づこうとしていた。

 ……けど、それが誰の意思か、まだ見えない」


 しばし、沈黙が流れる。


 魔理沙が空を仰ぎ、ぼやくように言った。


「……なんで、マスタースパークを真似されたのかも、気になるんだよなあ。

 しかもあの威力……あたしのより少しだけ下かもしれんが、再現度が異常だぜ?」


「やはり……」


 妖夢が息をつくように言う。


「ただの“モノマネ”じゃない。“観察されてる”気がする……」


 風が吹いた。


 二人の間に残ったのは、焼け焦げた地面と、空に溶けるような不穏な気配。


 魔理沙はその場にしゃがみ、焦げ跡に手を当てる。


「……あいつは、次、どこに出てくるかな。今度は“情報を取り返す”番だ」


 妖夢も、剣を収めながら呟く。


「“私の剣”を盗んだ罪は、軽くはありません。……次は、逃がしません」


 言葉の端に、静かな怒りと使命感がにじむ。


 二人は、敵の名も知らぬ“影”の気配を追い始めていた。



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