機械判人の狩猟体験
地上はまだ夜の帳に覆われていた。森の奥、踏みならされていない獣道を、彼は音もなく歩いていた。
(にとりの残党……この辺りにカラクリの基地があると聞きつけて、探索しているらしい)
小型ドローンから受信した断片的な情報。真偽は不明だが、放っておけば拠点に辿り着く恐れもある。だからこそ──
「……試運転には、ちょうどいい」
次の瞬間。地を這うような気配が彼の感知領域に入った。
「いたか」
──4人組。見るからに粗暴な妖怪たち。手には盗品、背中には血の匂い。明らかに“狩りの途中”だった。
「っし、今日も大漁だなァ」「にとりが言ってた場所ってこのへんか?」「どうせ機械しかねぇんだ、ぶっ壊して盗んで売り払おうぜ!」
彼は姿を消した。
クローク機能が作動し、気配そのものが薄れていく。直後、一人が後ろから“なにか”に襲われた。
「……っ!?」
返事はなかった。
見れば、首を傾げた仲間が一人、背後からナイフを突き立てられた状態で沈黙していた。喉を正確に裂かれている。
「な、なんだ!? てめぇっ!!」
叫んだ瞬間、複製された妖夢の刀が銀閃を描く。
「──ッ!?」
もう一人が首をはねられた。胴体と頭部が綺麗に分離する。表情の凍りついた頭が、地面に転がった。
「二人……?」
残った二人の強盗妖怪が後退しようとする。
だが──遅い。
重力鎖が背後から撃ち出され、片方の足を地に縫いつける。
「が、あぁっ!? 動けねぇッ!? 何だこれ!? おい離せっ……離せってばァッ!!」
その叫び声が、静かな森に無様に響く。
そして最後の一人には、“見せしめ”が用意されていた。
アームが展開し、身体を拘束。
「お前たちは……何者だ」
「し、知らねぇっ!! ただ金が欲しくて、にとりの連中が隠れ家の情報くれて……俺らは……ッ!」
「……にとりの、残党か。断片でもいい。場所を言え」
「ひッ……南東! 廃工場跡に、物資が! 見張りは3体だけだ! 本当だ! 許してくれッ!!」
「確認は、後で済ませる。……なら、今は」
彼の左腕が静かに変形した。魔力干渉鋼製のチェーンソーが回転を始める。
「ま、待っ──」
刃が回転し、空気を裂く。皮膚に触れただけで、細かい肉片が散る。
彼はあえて急所を外し、時間をかけて、少しずつ切り刻んでいく。
「や……やめッ……たす──ああああああああっ!!」
血が噴き、地面を染めた。森の奥には、風の音しか残されていなかった。
彼は血の滴るチェーンソーを収め、淡々と呟く。
「……にとりの痕跡。回収しよう」
そして、夜の森へと姿を消す。
その背中には、一片のためらいもなかった。
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