カラクリとの通信
「……ラボに戻る」
旧都の薄暗い空気の中で、彼は低く呟いた。
壊れた存在隠蔽装置の代わりに、まだ稼働している透明化技術を起動。
その体が、ゆっくりと空気に溶けていく。だが、彼の思考は常に冷静だった。
(この機能も完全ではない。長くは持たない)
そう判断しつつ、地下の通路を抜けて、荒野へ出る。
──ピピッ、電子音が耳に届く。
《……聞こえるか。そろそろこちらの警備が手薄になるタイミングだ。戻って来い》
通信越しの声は、ラボの主・カラクリ。
どこか愉快そうな、しかし底知れぬ冷たさを含んだ声音だった。
《新たな装備もいくつか完成した。君に渡したいものがある》
「了解。すぐに向かう」
《ただし、気をつけろ。この周囲ににとりの兵が巡回しているようだ。透明化が見破られる可能性もある》
「……承知した」
通信を切るや否や、彼の目が一瞬細まる。
──木々の向こう。霧の中に、規則的な足音と、エネルギー反応。
(……来たか)
にとりの兵。自律型戦闘人形。その装甲は重く、センサーがこちらを捉えている。
「透明化を見破ったな」
次の瞬間、銃撃音が森の静寂を破った。
彼は跳躍し、木を蹴って高度を取り、弾丸を回避する。
空中で一瞬、背中のアームが露出する。
──ギィィン、と金属が唸り、振動と共に鎖が飛び出す。
一体の兵を絡め取り、引き寄せ、地面に叩きつける。
アームを回転させ、兵の放った熱線を吸収──球状に圧縮し、反撃の一撃として撃ち返す。
爆発。
破片が飛び散り、煙の中に彼の姿が見え隠れする。
「効率は悪くない。だが──」
装備されたナイフを投擲し、もう一体の兵の頭部に命中。
だが即座に別方向からの援護射撃。
「……やるな」
彼は木陰に着地し、スキャン機能を起動。敵の動きを先読みする。
──そして、背後から回り込んできた兵の攻撃を、剣で受け止めた。
妖夢から盗んだ剣の複製。静かに構え、次の一手を狙う。
戦いは短いが濃密だった。数分後──彼の足元に、残骸が横たわる。
「……無駄な時間を食った」
再び透明化し、ラボへの帰還ルートへと足を運ぶ。
通信機がわずかにノイズを走らせたあと、カラクリの声が届いた。
《……やはり君は面白い。そのデータ、すぐに使わせてもらうぞ》
「構わない。次の装備を急げ。少しばかり──燃えてきた=)」
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