旧都で
旧都の路地裏。
煤けた石畳の道を、彼は無言で歩いていた。
上からは鉄くずの吊り下がった天井、横には半壊した店の看板。
通り過ぎる者たちは誰も彼に声をかけず、ただ一瞥し、無言で通り過ぎる。
──ただし、ひとりを除いて。
「……おい」
低く唸るような声。
道を塞ぐように立っていたのは、異様に背の高い男。
全身を金属と革で覆い、両手には鉤爪のような武器をぶら下げている。
「さっき、里から逃げてきたやつがいるって話だが……もしかして、お前か?」
彼は立ち止まった。
無言でその男を見つめる。
「沈黙ってのはな、だいたい肯定って意味だ」
男の後ろに、二人、三人と仲間らしき者が姿を現す。
誰もが同じように武装しており、眼光だけが異様に鋭い。
「──まぁ、いい。里にちょっかい出して逃げてきた奴が、ここで静かにしてるってんなら見逃してやる。……だがな」
男は一歩、距離を詰めた。
「何かを隠してるようなら、話は別だ」
「……」
彼は静かに立っていたが、次の瞬間、小さく息を吐いた。
「お前たちの探知は、甘い=/」
「……ああ?」
その瞬間、足元に小さな“カチッ”という音。
次の刹那──彼の足元から鎖が走り、一本の鉄パイプを弾丸のように吹き飛ばした。
それはまっすぐ、男の足元へと打ち込まれ、地面を砕いた。
「ッ、やりやがったなッ!!」
怒号とともに一斉に襲いかかる男たち。
だが彼は、一歩も動かなかった。
背中からナイフを一本抜く。
回転と共に投擲。先頭の男の肩口に突き刺さる。
「うぐッ……!」
「距離、誘導、風圧……全て計算済み。お前らの“火力”は想定の範囲だ」
彼の瞳は淡々と動きを追い、無駄のない動作で身を翻す。
再び鎖が走り、二人目の男の脚を絡め取る。
動きを止められたその男の背に──彼はゆっくりと近づいた。
「や、やめろ……! 俺たちはただの──」
「知っている=)」
軽く、肩を叩く。
次の瞬間、男は気絶して地に伏した。
残りの一人はすでに逃げ出していた。
狭い旧都の通路を走り去っていくその背中を見ながら、彼は小さくつぶやく。
「……敵意を持たない者には、手は出さない。それが最低限のルール=)」
彼は再び歩き出す。
旧都の更に奥へ、誰もが立ち入らない“捨てられた工房”へと向かっていた。
そこで待っているのは──カラクリとの通信、そしてさらなる“強化”の予兆。
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