宿屋の惨劇、その序章
宿の中、血が染み広がる床の上。
武装した妖怪たちが唸り声を上げる中、彼は静かに前に一歩進み出た。
「へっ、人間風情がよ……その気になったか?」
リーダー格の妖怪が剣を構え、後ろの子分に命じる。
「こいつ、バラせ!!」
──その号令の直前、
ガシュン、と音がして、彼の腰あたりから鎖が伸びた。
その先は──近づいていた妖怪の子分の首筋へ。
「なっ──!」
次の瞬間、鎖が生き物のように巻き付き、彼の手元にズルズルと引き寄せられる。
「うがっ……!? 放せ、放せぇぇ!!」
だが彼は無表情で、右目の義眼を光らせた。
「スキャン開始。対象:下等妖怪、知能レベル低……支配可能。」
鎖が妖怪の背中に突き刺さり、何かが同期されたように見えた。
「制御接続、成功。再生ルーチン、展開……」
次の瞬間、引き寄せられた妖怪が──
反転して仲間へ飛びかかった。
「っ!? おい! 何してやがる!!」
牙を剥いて襲いかかる元の仲間に、他の子分たちが混乱する。
「やめろ、あっち行け、バカかお前ぇ!!」
「く、狂ったのかアイツ!?」
彼は無言のまま、スキャンした情報を解析し、後方の鎖をスッと引いた。
操られた妖怪の動きがさらに俊敏に、敵の剣を掴み、今度は別の仲間に突き立てた。
「仲間割れ……いや、違う。あれは、操られてる……!?」
リーダーの顔が真っ青になる。
「なんなんだこいつ……!」
「さて……」
彼は剣を抜く。
「これで準備完了だ。次はお前だ、“リーダー”」
その声には、まだ笑いも怒りもなかった。
ただ──異質な“静かさ”と、“確実な殺意”があった。
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