8 "勘違い"
「えー今日は皆さんにお知らせがあります。」
「事前にしらせておきましたが…転校生の紹介です。」
段々と騒がしくなってくる生徒たち。
「転校生って、たしか…」
「そうそう、妃蝶さんにおんぶされてた…」
「あれ…妃蝶さんは?」
猿田がパンパンと手をならす。
「はいはい静かに、では、入室してどうぞ。」
戸をあけて、中にはいってくる2名、
「なんで私がまた…」
妃蝶と、おんぶされた涅巴だ。
妃蝶は涅巴をおろし、自分の席にそそくさと戻った。
「えーまず自己紹介をどうぞ。」
涅巴はチョークで黒板に自分の名前を書きゆっくりと自己紹介をはじめた
「えーと、為白 涅巴です。関東の方からきました。」
「趣味はコーヒー飲んだり、音楽とか聞くことです。」
「よろしくお願いします。」
「…はい、ありがとうございました。まぁみての通り、為白くんは体が弱いのでこんな感じになっちゃうみたいですが、まぁ仲良くやってください。」
「とりあえず、席は…倣城の隣でいいか。窓際の一番後ろ、近藤の後ろね。」
自分の席は倣城と呼ばれた金髪の男の隣のようだ。
「では、ホームルーム終わります、号令。」
号令が終わるとすぐにクラスメイトが涅巴の周りに集まってきた。ついでに妃蝶の周りにも。
そして質問として特に多かったのが…
「ねぇ!妃蝶さんとどうゆう関係!?」
「どうもこうも、家族だけど…」
「「「「家族!?」」」」
…なんか凄い誤解が生まれた気がする。
「え?学生の身で?けっここけこ…けこん!?」
「嘘だ…俺のほうが先に好きだったはずなのに…」
「え?なんなの?なにがおきてる?」
「家族って言ってもきょうだ…」
「オイ!どうやってあの高嶺の花を落としたんだ!?教えてくれ!いや!教えてください!!」
「いやだからそうじゃなくて、」
「あぁ神よ…何故こんなやつに妃蝶さんをお与えに?」
「いい加減にして!!」
声を荒げたのは他でもない、妃蝶だった。
おおいいぞ、そのまま弁明してくれ。
「なんで私が…」
「なんで私がこんなやつと結婚しなきゃいけないのよ!!」
……そうゆうのは言わないでいいと思う。
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…やっと昼休みだ!!
四時間目の授業を終えて、大きく息をつく。
さて、ご飯を食べよう。今朝恩三郎の作ってくれた弁当がある。
そしてここが大きな山場だ、一緒に食べる人を見つけて友達第一号とする、ありきたりだがいい作戦だろう。
とりあえず、倣城と呼ばれた隣の男に声をかけることにした。
「ねぇ君、倣城っていうんだよね?よかったら一緒にご飯を食べない?」
なんだか周りからの視線が強くなった気がする。
それと、この学校って髪染めていいんだっけ。
状況を整理しよう。話しかけただけで周りがソワソワとしだした。これはなんだ、こいつもマドンナ的存在なのか?そこまで顔がいいというわけではないようにみえるが…それとなぜこいつは髪を染めているんだ?校則では染めてはならないと記載されていたはずだ、よく見たら制服もスボンしか履いていないし、上は普通のシャツをきているようだ。
よし、なんとなくわかったぞ。
こいつ…不良だな?
失敗した。一番話しかけちゃいけないタイプの人間に話しかけてしまった。
だが、ここで引かないのが俺だ、人を見た目で判断してはいけない、オッサンから学んだのだ。
「そうだ、よかったら下の名前も教えてくれよ、そのほうが、呼びやすいだろ?」
「お、おぉいいぜ。」
よし、と心のなかでガッツポーズをした。
「友親だ、よろしく。」
「ありがとう。俺の名前は…」
てな感じで、俺は友達一号こと、倣城友親と友人になったのであった。
「なぁ、次の授業ってなんだ?」
「魔法学だよ。」
「は?」
なにいってんだこいつ、魔法?使えるわけねぇだろ。頭イカれてんのか?
「魔法っていっても座学だけどな。」
「あぁ、なるほど。」
早とちりをしてしまった、"あの塔"がある場所じゃ座学以外やることはないか。
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五時間目が始まって数分後、涅巴は睡魔に襲われていた。
やはり食事の後は眠くなるな…
眠らないよう目をこすってなんとか耐える。
「約三十年前、世界同士の衝突現象と言われた災害により…」
眠い、
「このようにして、通称魔法と呼ばれる科学的に証明が不可能な…」
眠すぎる、
アホみたいに眠い、なんとか耐えようとするが睡魔には勝てない。
追撃するかのようにして前の席にいる妃蝶の髪のいい匂いが漂ってくる。
あぁもうだめだ。友親も寝だした、俺も寝よう…
…誰かが俺を呼ぶ。呼んでいる気がする。
東の方角、住宅街を越えた森。
森の中にそびえ立つ、廃れた建物が見える。
これは病院だろうか、何年も人に使われていないように見て取れる。
病院に入る、中へとどんどん突き進む。
どんどんと下っていく。
途中から内装がガラリと変わる。
明らかに病院とは言えない雰囲気だ。
ココを進めば最奥へと付く。
ココを進めばもう引き返せない。
ココを進めば…
「為白君!」
先生の虎岡に声をかけられ、飛び起きる。
「転校して初日から居眠りとは…全く、肝が座っているというか、図々しいというか…。」
「あぁ、ありがとうございます。」
「褒めてないんですけどぉ?あんまり苛つかせないでくれます?」
魔法学の虎岡、典型的な規律を大事にする女の先生だ。
「あんま怒るとシワがよっちまうぞぉ?猫岡センセー?」
「虎岡です。倣城君は後で生徒指導室に来なさい。」
なんだか夢を見ていたと思うが、全く思い出せない。
きっとどうでもいいことなんだろうなと考え、再び眠りについた。
やっぱいい匂いするんだなぁ。