6 "ホコリと木彫りと大掃除"
「なぁ、なんでアパートなんだ?昨日俺が寝た部屋が余ってただろう?」
二人は学校を出た後、車で家までの帰路を辿っている最中だった。
「いやぁ、それには深くて深〜い理由があってね…」
恩三郎が言うにはこうだ。
元々近藤家はここら一体の大地主だったらしい、詳しくは知らないらしいが、昔は色々名所にツテのある政治家の家だったそうだ。
そして、恩三郎の父の代で大量にあった土地の一部をアパートなどの住宅にして、荒稼ぎしていたそうだ。
だけど子どものころだったからか、あまり良く覚えていないそうだけど、何かしらのアクシデントがあって父は蒸発、多額の借金を残していったそうだ。
その残ったアパートを使ってちびちび稼いでその金を借金の返済に当てていたらしい。
「なんか壮大だな…」
「はは、まぁ別の事業が成功したし、借金は完済できたから『終わりよければすべてよし』、だよ。」
「でもその話は俺がアパートに住む理由とはかんけいないだろ?」
「そうだよ、ここからが大事なんだ!」
「聞いて驚かないでね…実は…」
「私の趣味でおいてる呪われた骨董品が、涅巴君が寝てた部屋で、血まみれになってたからなんだ!」
「…は?」
「実はあの部屋自体が呪われてるらしいんだけど、他に涅巴君を泊める部屋がなかったからしょうがなく君をあそこに泊めたんだよ、ごめんね?」
「あ、そういえば確かあの部屋に呪殺の人形がおいてあったような…」
「よし、家についたら覚悟しろ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんつー部屋に居させとんじゃぁぁぁ!!!」
「おぶへっっつ」
「おお♡、恩三郎に、オン ザ ブローね♡ 」
恩三郎は家の居間に入った瞬間、涅巴にアッパーカットを決め込まれていた。
「つーかなんなんだよ!最初の近藤家の話全く関係ないじゃねーか!」
「いやぁごめんごめん、つい…それっぽかったから…」
「でもなんでそんな呪われたものがあるんだよ。」
「えぇ、いや、趣味だから…」
「あぁだめだこの兄弟、頭おかしいやつしかいねぇ。」
そんなこんな話をしているうちに、ジュースが口を開いた。
「さぁ、部屋をつくるんでしょ?さっさと行動に移さないと日が暮れちゃうわよ?」
「あぁそうだね、涅巴君、行こうか。」
「さて、これが涅巴君が住む部屋、104号室だよ。」
場所は恩三郎たちの住んでいた家の目の前のアパートだ。
早速、恩三郎からもらった鍵を使って中に入る。
「埃っぽいな…変な骨董品もある…、木彫りの熊?」
「まぁ、かなり長いあいだ倉庫として使っていたからね。呪具もないし、ここにあるものは勝手に使ってもらって大丈夫だよ。」
「あぁ、ありがとう。」
「…なぁ、なんで呪具が発動していたんだ、この町では使えないだろ。」
「さぁ?それが霊障ってものなのだろうさ。」
再度、部屋を見渡す、蜘蛛の巣や埃が多いが、取り除けばレトロな雰囲気になる気がする。
「水道も電気もつながってるし、お風呂もトイレもキッチンもあるけど、食事はこちらで用意するから向こうの家でたべようね。」
「そーそ、食事はみんなで食べたほうが美味しいもの♡それじゃ御暇させていただくわ♡」
「ちょっとまってくれ、このへやを一人で掃除しろと?」
「悪いけど、私には食事の用意があるし、手伝う事はできないんだ。」
「それじゃまたね♡」
バタンッと音をたてて扉が閉まる。
「…まじかー」
涅巴は一人黙々と掃除をするのであった。