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命の神  作者: oto
一章 間章
35/35

1 "simp!"

英語はふざけたので読まないでいいです。

 ──とある寒冷地にて、


 暗い館内を蝋燭が点々と照らしている。荘厳たる教会のような場所にて複数の人間たちが一同に集まり、祭具を持って1つの机に跪いていた。

 教会であれば十字架があるであろう場所に最奥の小部屋へと続く道があった。そして、その道はあるけば数歩ほどの距離しかなく、小部屋には装飾のない無骨な机が置いてある。その机の上に何かがあるというわけでもなく、ただ雰囲気に似合わない机として存在するだけであった。


 祭具を持った長身の男が近づく。もっとも、その祭具は祭りごとに使うにしてはあまりにも重々しいものであった。

 ──鉄製の手錠と二つの短剣。

 男は手錠を自らの腕にかける。

 そして豪勢な服を着た人間が二人の男に連れられ机の前に座らされた。両手の指にはきらびやかに輝く宝石の散りばめられた指輪が、頭には金と銀でできた冠が、だが、その人間は服装に似合わず貧相な体と生に固執していない虚ろで濁った目をしていて、手錠をかけた男を見上げている。

 

 ──そうして、二振りの短剣を握り、

 

 ──座り込んだ男の心臓めがけて刃を振り下ろした。


 死んだ。男は何の抵抗もすることもなく、重力に従い冷たい地面へと倒れた。


 まるでその絵図は、


 王が奴隷に反逆され殺されているように見えた。


 「……片付けておけ、余は暫し眠る。」


 手錠をかけた男は儀式を終え、手錠と短剣を従者に預け大聖堂を後にした。

 

 月に一度の歴史ある儀式、何十年何百年と続けられてきた帝国の王たちの役目、


 魔術による古来から続けられてきた儀式


 この儀式はこの世界と混じり合わない事実を持っていたのだ。たった三十年程しか存在しない筈の魔術を何百年と使ってきた王族。


 彼はとある国の皇帝だ。若くして皇位を継ぎ、いずれ来たるある国との戦争に向けて執政する影の王。

 

 「待っていろ、破壊者ども──余はどれだけの犠牲を払おうとも、貴様らを打倒してみせる……!」


 その皇帝の決意は固く、敵国と、□との対戦に向け拳を強く握るのであった。






 ──米国 とある街の街道にて


 時は日が落ちてから数分後、暗がりの広がる夜道の中のことだ。


 「Hey, girl,There's a cafe I frequent just around the corner, why don't you come and spend a lovely evening with me there?」


 ※ここからは日本語翻訳を兼ねてお送りいたします。


※「ヘェイ!そこの綺麗なおねぇちゃん、すぐそこのホテルで俺とパコパコしない?」


 「Um…sorry、I think your suggestion is wonderful, but right now I’m meeting someone I love, so I can’t respond to your request.」

※「は……?いきなり何?きもいんだけど…」


 スーパーマーケットからの帰り道に女性が黒人の男に言い寄られているのを見つけた。

 男は酒に酔っているのか不自然な足取りだ、嫌がる女性の袖を掴み自分に引き寄せ今にも 抱きつきそうな勢いだ。


 「You really think I’m gonna wait for permission to get closer to you?」

※「いいじゃんいいじゃん、減るもんでもねえだろ?」


 「Geez…! You’re so bold…!」

※「ちょっ…やめてっ、離してっ!」


 「Bold enough to keep going… unless you actually want me to stop.」

※「おいおい大声出さないでくれよ、面倒だな…!」


 助けなければ、と衝動的に体が動こうとする、──だが…、足がもつれたようにそこから動こうとしない、体が震え、視点が定まらない。

 こんな時になっても、僕の体は役に立たないのかと──

 これでいいのかと、結局何もできずに終わって良いのかと、そう刹那の自問自答を重ねる。

 空の拳を握り、まぶたをぎゅっと閉めた。


 ─────ものか…


 終わって良いものか…!!


 僕は震える自分の足を拳で叩いて鼓舞する。

 前に出るのだ、終われない、進まなくてはならない、停滞は許されない、

 変わるのだ、今しかない、力を振り絞り、足に力を入れ──大きく一歩を踏み出すのだ。


 「おい…!」


 「あぁん?なんだぁチビ…?」


 僕は、超えるのだ…!!!


 そして僕は高らかにソレを告げた──


 これは僕と、ブロンドの髪と美しい碧い目をした彼女の出会い、そして別れの物語、その始まりを告げる言葉となった。











 「ヘェイそこのパイオツのデカい可愛い彼女!そんなおっさん放っておいて、俺と夢の場所でランデブーを楽しまなぁい?」


 「……は?」


 …青年は女性を助けるわけでもなく、ただただセクハラを兼ねた淫らな言葉を並べた。

 女は一瞬の期待の後、汚物を見るような目をしつつ青年から顔を背けた。


 千鳥足、焦点の定まらない目、小刻みに震える手足、そして赤く染まった額、息は酒臭く思わず顔を背けてしまうほどだ。


 「そりゃないぜぇちびガキ?このデカケツのマブは俺のもんだ…、てめえの出る幕はねんだよ、分かったらさっさと帰ってその粗末なてめえの息子でもシゴイてやるんだな。」


 「あぁ?しゃしゃるなよ顔面チョコボール、お前はそのハゲた頭と同じような荒れ地でカカオでも育ててろよ。」


 「…アジアクソザルが…、今からてめぇを〇〇で□□□□にして───────してやろうかあぁ!!??」


 「やってみろよ、この××××が!!!」


 黒人の男はアジア系の男に──────すると脅迫するが、アジア系の男も××××××すると言って対抗する。


 その後も女を除け者にしてやれ体の部位の長さについてだの国籍についてだのを取り上げて言い合い続けた。


 「──あのさぁもう帰っていい?」


 耐えかねた女は男二人から踵を返してさっさと帰り道を急ぐことにした。


 「うるせえしゃしゃってんじゃねぇ!!このマブは俺が最初に───ってオイオイまてよ!!」


 女の前に黒人の男が走り出る。

 

 「待ってくれよ話は終わってねぇ──」


 続けて男を押しのけるように青年が躍り出た。


 「俺はこう見えても結構な資産家でなぁっ!望むならブランドもののアクセサリーくらいならっ」


 「なわけねえだろてめぇみてーな未成年のクソガキがそんなっ」


 結局または喚き始めた男二人を見て女は大きくため息をつく、そして──


 「あのさぁ、いい加減にしてくれないかな…、私みたいな人間があなた達みたいな幼稚なガキになびくわけないでしょ?」


 いきなり毒を吐かれ二人は呆然とする。


 「私が唯一なびくような人はそう、私と同じブロンドの髪と青い瞳を持つ、そうっ、あの『ROMEO+JULIET』主演のレ〇〇〇ド デ〇〇プリ〇様しかいないわ!あの細身の引き締まった筋肉、183cmの長身、何よりあの甘いマスクから放たれる"笑顔"──っ!!」

「もうたまらないわ……、──ソレに比べて……、あなたたちは何なの?虻とか蚊辺りの羽虫にしか見えないのだけど。特にEライン、全然ダメね、ドブ川に続く長年放置された側溝のほうが美しく感じるのだけど?」


 彼女はもう止まらない、溢れ出る不満をぶつけ続ける、時に○オナル○ ○ィカ〇〇オと比べ、ブ○ッド ピットやキア○ リー○スと比べて、まさに白人天国を開始した。


 「──まぁてなわけで、あなたになんて微塵も魅力なんて感じないの、最低限骨延長手術でもするなり泥だらけで汚れたその顔を洗ってくるなりしてからくれば?」


 彼女は言うだけ言ってスタスタと歩いて行った、二人はただその背中を見つめることしかできなかった。






 ──とある路地にて、米国の街並みに似合わない風景がそこにあった。

 赤い日本語の文字のある提灯、グツグツと煮える野菜や串物の類、トラックの後ろには屋台が牽引されている。

 ──そう、おでんである。なぜか米国で一年中毎朝毎晩開かれているおでん屋である。経営者は串尾伝吉(くしおでんきち)八十二才、三十二歳で起業した串尾工務店が五十八歳の時に経営不振により倒産、それから四年後、これからは自分の好きな調理で食っていこうと一念発起し日本より渡米、外国に日本食のおいしさを広めようと、移動おでん屋『OdenNu』を開業、それから二十年もの間おでん一筋で衣食住を満たしてきた。好物はパスタである。


 彼は定期的に涙を流しながらやけ酒に来る男たちに寄り添い、時にアドバイスを与えて送り出す、そんな地元の人たちに愛される人であった。

 今日もまた、二人の男が来店した。女に振られ、あまつさえ心無い言葉を吐かれ二人泣きながらここへ寄ったのだという。


 「あっのクソ女ぁ……!!何も片目だけ奥二重のことは言わなくていいじゃねえかよぉぉ……」


 「鼻毛出てたなんて…、もう、お外出られない……」


 彼は思ってたよりもメンタルの弱い男たちなんだなぁと、大根を一つずつオマケしてあげた。


 「酒が入ってなけりゃ、もうちょっとうまく口説けたさ…!」


 一見未成年にしか見えない日本人の男性は、酒で面がまるで炎のように真っ赤に染った、とっくりに口をつけて一気に飲み干し、次を要求してくる。飲み過ぎだと酒を出さずにいると隣の黒人の男から酒を奪い取り一息に飲み干した。

 対する黒人の男はあまり酒は飲まずにいる、だがしっかりと額は赤く染まっており、目尻も赤く染まっている。彼とは違って泣き上戸と言ったところか、相方が酒に溺れ不満を叫んでいる間、己を卑下し聞き取れない言葉で嗚咽を漏らしていた。


 「──まあまあ、女なんぞ蟻の数だけいると言いますから、また良い縁は巡ってきますよ。」


 「ぅますた〜………、俺…ただ☆♨〜、」


 男の声はまるで水中で話しているかのようなうめき声だった。


 顔を腕の中に(うず)める男をチラリと見た日本人の男は口をへの字に曲げていい放つ。


 「ケッ、下手くそなナンパ野郎がいなかったら俺がいい感じに誘い込めたのになぁ…?」


 その言葉に反応し黒人の男が涙を止めて顔 を勢いよく上げた。


 「その言葉ァ、そっくりそのままお返しするぜ。邪魔者が横槍さしてきたせいで、いい厶ードが壊れちまった、猿みたいな顔のチッセェバナナひっさげたガキがな…」


 その挑発にダンと机を支えに立ち上がった男は目を大きく見開いて言う。


 「いい度胸してんなァ!!タピオカ頭ァ!!表出ろ!!!!」


 「もう出てるぞ猿頭ぁ!!!」


 「オヤジお勘定!!!釣りはいらねぇ!!!」


 「出てくのはいいですが、サービスの大根、どうしようもないんで食ってってくださいね。」


 二人は器にのった大根を見下ろし、スッと座って大根を頬張った。


 そして冷ましもされなかったよく煮えた大根を勢いよく頬張ってしまった二人は叫ぶのだ。


 「「──あっつぁ!!!??」」








 ──近くの児童公園にて……


 唇の赤く腫れた二人、すっかり夜も深まって子供のいない広場、そこに身長差の大きい男たちが仁王立ちで向き合っている。

 身長190以上はある長身の黒人と、180より下程度の日本人、どちらも当該の人種の中では高身長に位置する人間であるが、10cmの差やはり大きい、それに加え黒人の男はかなり 筋肉質な体型で、ジャケットから筋肉が浮き出ている。

 対する日本人の男は、筋肉量もそこそこで脂肪があるわけでもない、このまま殴り合いの喧嘩にでもなれば勝敗は目に見えているだろう。

 ただ──彼にはその表情があった、この上ない自信から来る表情、気力に溢れて相手を見据える迷いない瞳──それには何か理由があるのか、

 

 「日本でもよく言うだろ、決闘の前には名乗りをあげるってな、さあ、名乗れチンパンジー。」

 

 「断る!!名前言うならてめえからだ、俺は自分より下の存在の言うことを聞いてやらね タチなんでな!!」


 「──チッ、めんどくせーこだわりだな?その上下関係の認識は今からひっくり返ることになるぜ?」


 男は全身の関節で音を鳴らし、よく目立つ 白い歯を見せてにやりと笑う。


 「俺の名はSeth(セス) Vautrin(ヴォートラン)、仏国産まれの流れ者さ、」


 セス・ヴォートラン、復讐者とある小説の悪漢の名を重ね持つ不吉な名前、


 「さぁて…てめぇの名を教えろ、」


 青年に指をさし、お前の番だと言う。

 青年は両の目でセス ヴォートランをしっかりと見据え、やがて口を開いた。


 「一度しか言わねえから耳かっぽじってよく聞け───」


 冷たい風が頬をかすめ、渦を巻くように体中を(まと)わりつく、不快感などない、"いつものことだ"、


 「東の果てから来た理論の異端者(はぐれもの)!秩序を乱す悪魔の子!!しかしてその正体は……!!」


 「あま──!!」


 「君、こんなところで一体何をやっているんだい?」


 名乗りを邪魔され不機嫌に後ろを見ると腕を組んだ男がいた。


 「おっふ…ポリスメーン……」


 「こんな時間に公園のど真ん中で騒がれちゃ 近所迷惑なんだよ、酒でも飲んでるのかい?それとも──」


 警官は何らかの検査キッドをちらつかせる、薬物か何かを取り締まるためのものだろう。


 「や、違うんだよオッチャン、俺はただ変な奴に絡まれててさぁ!ほらそこの野蛮な男に……」


 先ほどまでセスのいた方向を振り返る、だがそこには誰もおらず、ただ明かりのない暗闇が広がっているのみ。


 「……Ou Shit,」


 「──で、その野蛮な男は幻覚だったと…、──Central, this is ───. I have a male subject, possibly under the influence . Requesting one additional unit for backup. Over.」


 薬物の使用を疑われて応援を呼ばれた、かなり面倒なことになってきた、だがこの男はそんな面倒なことにいちいち付き合うほど お人よしではないのである。


 「──さて、じゃあちょっとこの容器に唾をはいて……あ?」


 青年はもういなかった、代わりに置き手紙を残して。


 『Bye,Simp!(じゃあねマヌケ)


 メモ帳に書かれたメッセージを見て、警官 はぐちゃぐちゃに破り捨てるのだった。

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